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GGサロンコンサート

ムジカフィクタ第3回コンサート〜ギター協奏曲の夕べ

 
2003.3. 1(土曜日)18:00 開演  




プログラム
       

ある貴神の為の幻想曲
ギターソロ 服部文厚
チェンバロ 高梨範子

ロドリーゴ作曲

3台のギターの為の協奏曲(日本初演)
新井伴典、坪川真理子、金 庸太 
チェンバロ 高梨範子

サントルソラ作曲

アランフェイス協奏曲
ギターソロ 河野智美 
ピアノ 高梨範子


ロドリーゴ作曲

イベリア協奏曲(日本初演)
新井伴典、金 庸太、坪川真理子、山村 剛

トローバ作曲


アンコール

版画より  トローバ



もう3月になるというのにまだ今年初のコンサートとは・・先月僕自身が大倉山で演奏する機会があったものの今年のコンサート巡りは予想外?に低調な展開になっている。あいにくの雨模様の天気で、客足が心配されたが開演後も入場者が途絶えず盛況だった。

ギターとチェンバロによるアンサンブルは今回楽しみにしていたプログラムの目玉の一つ。
オープニングを務めた服部君は緊張からかやや固さの見える演奏だったがチェンバロの立体感溢れる響きにギターの音が溶け合って最初はギターにエコーが掛かっているのかと錯覚を起こす程奥行きが感じられた。
続く第二楽章、6弦、5弦で奏でられるあの哀愁漂う美しい旋律にいやが応でも期待が高まる。が意外にも低音が聴き手まで届かない。
ギターの鳴りが今一つに聴こえてしまったのは、おそらくメゾピアノ気味のタッチで弾かれた抑制された表現のせいかもしれない。
GGサロン初のチェンバロとのことだったが、ビアニストがチェンバロを弾く難しさってどんな感じなのだろう。クラシックギターとサイレントギターぐらいのギャップか、あるいはそれ以上の違いがあるのだろうか。
ビアノとギターのアンサンブルではピアニストは常に音量を抑えて弾かなければならない為、欲求不満に陥り易いがチェンバロにはその点弾き手のストレスが溜まらない気がする。ギターの音もよく聴こえるだろうから伴奏者の精神衛生上にも良いかもしれない。ただ意外に気になったのがチェンバロで弾かれる不協和音の異質な響きで特に不協和音がアルペジオ風に弾かれた場合、ピアノで弾かれた場合に比べてかなり違和感を感じた。チェンバロの調律にもやや甘さがあったこともその原因かもしれない。

サントルソラのコンチェルトは予想外にシンプルな構成の作品でやや物足りなさが残った。余り日本初演にこだわらず折角金さんに新井君そして坪川さんという実力派ぞろい、レベルの高いギタリストが揃っているのだからもっと3人に相応しい選曲があってもよかったのではないか。
河野智美さんのアランフェスはチェンバロではなくビアノ伴奏で演奏された 。彼女の音はスリムな体型同様やや線が細いという印象を持っていたが、当夜の演奏では第一楽章での早いスケールも imのアポヤンドでしっかりとした音で弾ききっていた。3楽章の終盤のフィゲタで弾かれた細かく早いフレーズでもしっかりした音で軽くならず見事。ただ第二楽章の出だしの親指のプルガールの和音はもう少し豊かな響きが欲しい。もう少し弦に右手のウェートをかければよくなるかも。カデンツアの最後のラスゲアードで右手の人差し指をうまく使って一弦のメロディラインをくっきり出していたのが参考になった。
華のあるステージで演奏者の気迫も演奏に良く現れており全楽章を通じ常にピアノをリードする余裕も感じられる好演。

フィナーレのトロバのコンチェルトでは今回のメンバーの中では最も若い山村君が加わりアンサンブルに一段と厚みが増した。
トロバのようなスペインの香り高い作品は、ギターアンサンブルにとても向いていると思う。ギター4本であればピアニストもそれほど弱音で弾くことに神経質にならずに済むしピアノの音もさほどやかましくは聴こえない。ピアニストにとっても弱音で弾くというのは案外弾きにくいもの。アランフェスでは弱めのタッチで弾くことにかなり神経を注いでいたのが感じられたが、高梨さんの伴奏もこの日一番の内容だった。
新井君の1stは相変わらず美しい芯のある音で早いパッセージも鮮やかに終始余裕を持って弾ききっていたし、金さんの2ndも控えめながら随所で素晴らしいテクニックと美音を披露していた。新井君のタッチを動とするなら、金さんのタッチは静、どちらも美しく力のある音だが、そのアプローチ、追求方法が対照的な点が興味深い。
また前半のサントルソラで見せた金さんの人差し指の上下運動だけで弾くトレモロのテクニックには驚かされた。右手の形やポジションが全く変わらずトレモロを弾いている指以外微動だにしない。
終演後、新井君に金さんのそのテクニックの話をしたら、金さんは緊張して手が震えるからああいう弾き方になっちゃうんだよっていうジョークを飛ばしたので大笑い。
また大先輩3人に囲まれて表情は固かったものの(多分4thの)地味なパートをしっかりとしたテクニックで演奏し、アンサンブルを支えていた山村君。アンサンブル紅一点の坪川さんは、美音のみならず、お笑い系ギタリスト集団に凛とした美しさと気品を添えていた。ただ今回のプログラムでは坪川さんの役回りはやや地味な存在になってしまった。もしかして今年GGサロン年4回シリーズで出番の多い彼女が遠慮した?なんてこともあったんだろうか・・。
いずれにせよ、このムジカフィクタメンバーによるコンサートは彼らの実力のみならずメンバーのユニークなキャラクターがとても魅力的で楽しい。新井君と金さんのステージ上でのやり取りも、演奏以上?に楽しめる。彼らのコンサートがもっと多くの人に聴いて貰えるようになることを願ってやまない。また次のプロジェクトを期待したい。

終演後、金さんから金属性なのに紙やすりがいらないくらいきれいに磨けるという爪磨きを頂いた。某化粧品メーカー製の優れものだそうでガラス製の奴みたいに割れやすくないのもグッド。ギター用として販売したら案外売れるかもしれない。