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デビュー20周年記念
福田進一
ギターリサイタル

 
2003.12. 26(金曜日)19:00 開演  
上野文化会館小ホール




プログラム

組曲ト長調BWV1010
(原曲:無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調)

J.S.Bach作曲

組曲イ短調BWV1011
(原曲:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調/リュート組曲ト短調)

J.S.Bach作曲
休憩

薔薇の迷宮(委嘱作品・世界初演)

藤井敬吾作曲
組曲ニ長調BWV1012
(原曲:無伴奏チェロ組曲第6番ニ長調)

J.S.Bach作曲

アンコール

3月の歌
つばさ
粉屋の踊り
筑紫哲也のTV番組エンディングテーマ・・?
良く聞き取れなかったのと記憶違いだったらごめんなさい



この日は朝まで九州に出張していて昼過ぎに東京に戻り一旦出社。御用納め&掃除&挨拶、打ち上げでビールを一杯引っ掛け、赤い顔で会社を飛び出した。前夜も九州で送別会&忘年会。風邪をおして出張していたこともあって薬を飲んではいたが熱っぽく、おまけに喉がつぶれて声が出ないという最悪のコンディション。9連休前の開放感と福田さんのデビュー20周年記念のタイトルに、つい心が揺れて上野文化会館に足を運ぶことになってしまった。会社を出た時、開演まで大分時間があったので、東京ミレナリオを見物しようと会社のある八重洲口側から丸の内口に行ったのだが、ミレナリオ見物の人が多過ぎて見物を断念し、早めに上野に着いた。チケット売り場のおばさんから当日券3000円でCDプレゼントもありますよと言われ、おー来てよかったと内心ほくそえんだのもつかのま,ゲットしたCDがなんと現代ギター1月号の付録と同じとは・・・ちょっとがっくり(ーー;) すぐに気を取り直し、福田さんの新譜ファンタジアセビリアーナ(H15年文化庁芸術祭賞優秀賞受賞CD)を買った。
実はサインを欲しかったこともあって買ったのだが、コンサート終了時、お腹が空いてたまらなかったので早々にホールを後にしてしまった。休憩時のロビーでは懐かしい顔に沢山出会えたし、製作家の黒澤さんとお話出来たのは幸運だった。それから村治佳織ちゃんや大萩君も来てた。それにしても佳織ちゃんのお母様の若くて綺麗なのには本当にびっくりされられた。やはりあの親にしてこの子あり・・の例えをしみじみ実感。

さて肝心の演奏だが、前半を19世紀ギター(ラコート)で、後半を桜井さんの新作で演奏された。黒澤さんから伺った話では桜井さんの作品は12フレット付近の指板に傾斜がついていてハイポジションが押さえやすくなっている楽器だそうな。個人的にはバッハに関してはラコートの方が合っているように感じた。藤井さんの作品は完全にモダンギターの世界。桜井さんのギターはまるでPAを使用しているのではないかと思えるほど大きな音量でよく鳴っていた。ただメタリックな音質が僕の好みとは違う。それにラコートの方が音色の色彩感を強く感じたのは気のせいだろうか。

当夜の演奏で圧巻だったのは前半のバッハBWV1011。リュート組曲3番として良くギターでも弾かれるが、福田さんの演奏は始めから最後までドラマチックでため息しか出ない。特にプレリュードからアルマンドで魅せたセクシーなほどの音色変化と流れるような美しい装飾音に絶妙のフレージング、福田さんの気のこもった演奏にはしびれた。アルマンド一曲の中であれほど何度もはっとさせられる演奏を聴いたのは初めての経験。以前鎌田先生から福田さんの3番は本当に素晴らしいよという話をレッスンの時にお聞きしたことがあったが、その話を裏付ける素晴らしい内容だった。
12月だけでリサイタルが10回というハードスケジュールをこなしているだけあって流石に後半演奏にも疲れが見えたがアンコールのMCと自編のアンコールに一段とホールは大きな拍手に包まれた。

私事だが今年は会社の合併初年度ということもあって例年に無く仕事が忙しく思うようにコンサートには行けなかった。来年こそはもう少しコンサートに足を運べたらと思う。それとGGサマールスクールにも参加して一流プロのレッスンを受けてみたいものである。
蛇足だが、今回のプレゼントで2枚に増えた現代ギター社特製のCD。これは福田ファンでなくとも是非お奨めしたい記念CDで、本当に素晴らしい仕上がりになっている。福田さん自身の語りも魅力的だが、貴重な音源が数多く収録されていてすごく得をした気にさせられる。現代ギター社には今後も他のアーティストで同種の企画をして頂けたら嬉しいのだが、いかがだろうか。付録になどしなくてもこれだけで立派に商品として売れると思う。
クラシックギター界の良さは、他のクラシック音楽の世界と違ってトッププロとファン・アマチュアの垣根が低いことにある。ギタリストにもよるが、高尚で一種近づきがたいような雰囲気のアーティストより、庶民的で親しみやすいキャラクターのギタリストは多い。クラシックギターの世界はミクロコスモスではあるが、決して窮屈ではない。福田さんがギターを始められた頃のようにお年玉でギターを買う人が楽器屋さんの前で行列を作るような光景を目にすることはないかもしれないが、もっと生のステージを聴きに行きたいと思うファンを増やすことは出来るはずだ。この種のアルバムがもっとリリースされてギタリストを身近に感じられるようになれば、自然に生の演奏を聴きに行きたいと思うファンも増えると思うのだ。GGさん、頑張って!