トップページへ


ステファノグロンドーナコンサート


 
2002.4.28(月曜日) 13:00開演  

福岡大名MKホール

レポーターはコージさんです。
>残念ながらチケットを手に入れられなかったさつきさんへ
レポートのサブタイトルには「さつき姫に捧げる」と付けられていました。(^^)
なんだか東京のコンサートより2部はさらに良かったみたいですね。
尚、頂いたメールはそのまま転載されて頂いております。
万一内容に関してご意見等ありましたらお手数ですが、管理人YASUまでメールにてご連絡願います。




*** プログラム ***

     前奏曲第1番、第11番、エンデチャとオレムス、アラビア風奇想曲(ターレガ)

     ベネチナの舟歌(メンデルスゾーン・・・ターレガ編)

     メヌエット(シューベルト・・・ターレガ編)

     マズルカ(ショパン・・・ターレガ編)

     スペイン舞曲第5番、第10番(グラナドス)

              < 休 憩 >

     コルドバ(アルベニス)

     ロマンサ、練習曲、スケルツォ・ワルツ(リョベート)

     二つのカタルーニャの歌:祈り、リメンブランサ(セゴビア)

     歌と踊り(モンポウ)

     朱色の塔(アルベニス)

     セビリア(アルベニス)

             < アンコール >

     メロディ(グリーク)

     エストレリータ(ポンセ)

     不明

     不明

     ゴヤの美女(グラナドス)

 

チケットは早々と売り切れたらしく、その期待のほどがわかろうというもの。会場前に並んだチケットを持たない人に今日はもう、ソウルドアウトなんです、と主催者が謝っていたが、こんなことならアイフルホールにすればいいのに、と思わぬでもない。なんとかグランドーナを一度は聴きたいものだと思い始めて1年、こんなに早く実現するとは思わなかったが、コンサートが決まってからすぐにチケットを手配、早々とゲットできた。交通費を入れれば夫婦で約2万円の出費だが、酒もタバコもやらぬ品行方正の身なので、ま、いいか、と休みの日なら割りと気軽に、どこにでも出かけて行く。

大物のわりにサロンコンサートの形式だったのだが、いやいや実に素晴らしい演奏だった。

開演に先立ち、グランドーナのことが紹介されたが、子供のころからよく指が回る神童として、ヨーロッパに名が知れ渡っていたと聞いて、ちょっと意外な気がした。期待が高まる中登場したグランドーナは、神経質そうな学究肌のインテリ風で、その紹介のイメージとは合わなかった。かなり長い瞑目の後、聴き手の緊張感が一杯になったところで音がはじけた。演奏の姿勢が実に美しく、奏でる音楽が身体の動きと一致して一体となる。予備知識でギターはトーレスだとすぐ分かったが、会場のせいで音はコンサートホールより残響が少なく、おまけに前のほうで聞いたので、ギターの音が直接過ぎ、その分音色が乾いて聞こえた。本来はもっとウェットなのだろうと思う。しかし低音は驚くほど太く大きく聞こえ、音楽を終始支えていたと思う。特筆すべきは左手の押弦だろう。小指は実に良く開き、通常見るより、どの指も指板に対して立っているように思った。右手は柔らかいタッチで、音を紡ぎだす。爪はとても短いようだった。そう言えば、前回の来日の際、現代ギター誌で福田進一氏がインタビューしていたが、爪が独特な形をしていることが話題になり、そのときには、ひたすら美しい音を求めた結果だと言っていた記憶がある。

全般はお馴染みのロマン派の曲が次々に演奏されたが、最近ではめずらしいのではないだろうか。一昔前のプログラムを聴くようだった。ポルタメントが頻繁に出てきて、いかにロマン派の曲とはいえ、弾き方によっては現代人の耳にはいやらしく聞こえるところだが、とても自然に聞こえた。予想通り、演奏中は曲想に乗って唸っていたが、CDと違って気にはならなかった。前半の白眉は、グラナドス。これまであまり好きではない作曲家だったが、このように詩情豊かに弾かれてみて、改めてその良さを見直した。前半の演奏が終わったところで、ギタリストの北口功氏が出て来て、グランドーナが弾く楽器の生い立ちの説明があり、グランドーナと製作者がまとめた大部のギター製作の本が紹介されたが、27本の名器の紹介とその音(演奏はグランドーナ)が記録されているとのこと。15000円の値段とイタリア語と英語で書かれていることを考えると、購入者が何人もいたことは驚きだ。最後にツァーに同行した製作者自身がステージ上で紹介され、演奏者に劣らぬ熱い拍手が送られた。

後半は、アルベニスのコルドバから始まった。通常弾かれる編曲と違っていたようで、鐘の響がやや希薄に感じるが、演奏は見事なものだった。聴衆の反応を感じたようで、この頃から奏者に時折笑顔が出るようになり、演奏を楽しむ風情が見て取れた。後半の白眉は

最後に弾かれたアルベニスの「朱色の塔」と「セビリア」で、これは実に圧巻だった。奏者も自分の演奏に満足だったのか、最後の音を響かせながら、右手で持ったギターのネックを握り締め、力を込めて上下に揺らせるパフォーマンス。聴衆からもブラボーの声。心からの大拍手が続き、ステージに何度も呼び戻されてのアンコール。弾かれた曲は東京の時と同じだったと思うが、知らない曲が2曲あった。順番は違っていて、2曲目にエストレリータが弾かれたときには、これでもう最後かと思ってしまった。それにしてもこのエストレリータは絶品だ。楽譜にある音符には、上向きの音と下向きの音があり、それを見事に弾き分けて行った。音をためて弾くその間合いの美しさ。息を呑むとはまさにこのことだろう。極上の時が流れ、聴き終えて思わずため息。再びブラボーの声。こんな演奏を聴いて、拍手が鳴り止むはずもない。3回目のアンコールでは2曲続けて弾いたのではないかと思う。弾き終えて、胸に手をあて、皆さんの気持ちは十分に受け取りましたと意思表示。それでも鳴り止まない拍手にギターを持たずに登場したので、これで本当に終わりだと思ったが、この日の聴衆の熱い想いに、ついに5曲目のアンコールを弾き出した。ゴヤの美女。いや、実はこれも本当に素晴らしい演奏だったのだが、もう伝える言葉がない。

こうしてトータル2時間20分のコンサートがあっという間に終わり、欲しかったバッハの入ったCDを手にして会場を去った。

つぎは、8月11日に、オスカーギリアをアイフルホールで聴くつもりでいる。