法政大学社会学部メディア社会学科 津田研究室




大衆社会論

『孤独な群集』 『パワー・エリート』 『ホワイト・カラー』

ミルズ・ライト、杉政孝訳(1951=1957)『ホワイト・カラー』 東京創元社
 20世紀においてアメリカ社会の中核をなすようになったホワイト・カラー。大衆社会論の代表的著作の一つである本書において、ミルズはホワイト・カラーの歴史的性格や心理などを様々な観点から分析し、アメリカ社会における中間層の疎外や弱体化を警告しています。本書が執筆された50年代は戦後アメリカの黄金期でもあり、この時代にあえて(だからこそ?)こういう議論を展開するところに、ミルズのラディカルさを窺い知ることが出来るような気がします。(1999年)

ミルズ・ライト、鵜飼信成ほか訳(1956=1958)『パワー・エリート(上)(下)』東京大学出版会
 アメリカ社会学を代表する業績の一つとしてあげられる本書は、アメリカ社会が多元社会であるという議論を真っ向から否定し、政治・経済・軍事のエリートがそれぞれ結びついた結果として生まれたパワー・エリートがアメリカを動かしているという議論を展開しています。具体的な事例が多く、非常に読みやすい文体で書かれています。大衆社会論やマス・コミュニケーション論の観点からも興味深い著作だと言えるでしょう。無論、こうしたミルズの議論には批判が集中することになりました。そうした批判としてリースマンの『孤独な群集』やベルの『イデオロギーの終焉』なんかをあげることが出来るので、それらとあわせてお読みになることをオススメします。 (1999年)


リースマン・デヴィッド、加藤秀俊訳(1961=1964)『孤独な群集』 みすず書房

 伝統志向型、内部志向型、他人志向型という人間の志向性の分類をし、現代社会を他人志向型が支配的になりつつある社会として論じた社会学の名著です。これが執筆されたのは1940年代の後半だそうですが、消費社会化や政治への無関心など現在においても重要なトピックスを扱っています。また、政治学的にも重要な文献であり、アメリカ社会を権力エリートが支配する社会とみなすミルズなどの見解とは異なり、多元化が進行した結果、強大な権力センターが存在しえない社会としてアメリカ社会を捉えていることも重要でしょう。それにしても、非常に読むのに時間のかかる本です。内容的にはそう難しくないと思うのですが、訳自体が混乱している個所がいくつかあり、わかりにくいところがあるのが残念です。 (1997年)