冬のカムチャッカ(その7)
  1999.12.23--12.30

12月29日(水)
 朝7時に起き、書き残してあった旅行ノートをまとめて書き始める。9時過
ぎにカフェに行くと、男性4人がいて朝食をとっていた。更に私の後からも女
性が1人やってきて食べていた。お客はいるんだと改めて思った。今日のメニ
ューは黒パン、魚のてんぷらにご飯、グリンピースとうもろこし添え、紅茶。
ご飯が主食の日本人には何とも奇妙なおかずだ。ラーメンライスみたいなもの
か。ようやく旅行ノートを書き終え、スヴェータに聞かなければならないこと
をメモした。チョコレートと本はリュックに入れたにもかかわらずスーツケー
スに詰めた荷物は20キロを超えているかもしれない。20キロを超えるとか
なり高額な超過料金を取られることになる。

 11時45分に、下に降りていきビザにホテルの滞在証明をしてもらいスヴ
ェータの来るのを待っていた。今日はアリョーシャもアンドレイも仕事なので
バスで来たと言っていた。アリョーシャが12時に来るから来るからというこ
とで、少し待っていた。12時にアリョーシャが車でやってきてもう一度太平
洋を見に行こうと言う。昨日アンドレイと行ってダメだったからと言っても、
車が違うから大丈夫だと言ってでかけたが、やはり同じ所で前へ進めなくなり
引き返した。やはりジープタイプの車でなければダメだ。町に戻り、メシェン
ナヤソープカ(ソープカ=丘)に登った。今まで2回来たけれど、夜だったの
で昼間見てみようと、上まで車で登った。風もなく頂上からの眺めは最高だっ
た。前に二つの大きな雪をかぶった山が見え、下にはペトロパーブロフスク・
カムチャツキーの町が一望できた。晴れていると山がもっときれいに見えたの
に。

 少し車で回ってアヴァチャ湾が見えるところにいった。天気がよいと海も
青い色できれいだし、湾の向こうには別の山も見えると言っていた。下の方に
は新しく作られた教会の金色の屋根が輝いていた。ペトロパーブロフスク・カ
ムチャツキーには二つ教会があり、一つはこの新しく立てられた教会で、もう
一つは昔の映画館が閉鎖し、教会になっているそうだ。無信仰のスヴェータと
アリョーシャは教会よりも映画館の方が良かったと言っていた。丘の中腹には
昔スキー場だった所があり、リフトの鉄柱だけが残っていた。その後、丘の中
腹にあるスヴェータが3年前まで勤めていた小学校に行ってみた。学校は冬休
みで閉まっていたが、学校の前で写真を撮る。丘の途中にはゴミが捨ててあり、
車まで捨てられていた。スヴェータが歩いて通っていた道を車で降りていった
が、この辺は小さな古い一戸建ての家がたくさん建っていた。生活水準は低い
ということだ。この道を歩いて学校へ通っていたとき、犬に噛まれたことがあ
るので、ここを歩くのは恐いと言っていた。ペトロパーブロフスク・カムチャ
ツキーでは犬を放し飼いにしていて、犬にとっては1日中繋がれている日本よ
りも自由で生き生きとしている。でも人間の生活が苦しくなって飼い犬を捨て
て、それが野良犬になって困っているそうだ。野良犬を捕まえる係りもいるが
追いつかないと言っていた。その後メシェンナヤソープカの向かいにある住宅
街を回って黒パンを買って帰った。アリョーシャはこれから仕事に行くからと
言うので、この6日間、車でいろんな所に連れていってくれたお礼を言って別
れた。昼はスヴェータがライスと魚をピカタ風に焼いたものを作ってくれた。

 3時15分に彼の家を出発した。アンドレイ、スヴェータ、サーシャと私の
4人で出発し、途中でアーニャを拾って空港へ。遅くなったと言ってアンドレ
イはスピードを出していたが4時10分には空港に着いた。外国人用のターミ
ナルビルに行き、受付で切符を見せて荷物を預けた。荷物の重さは20キロを
ほんの少し切るだけ。ばっちり!億客がこんな人少ないのかと思っていたら、
一般客は向こうの古いターミナルビルから乗るので、そちらにはたくさんの人
がいると言っていた。受付の所で手数料105ルーブルをとられた。高い!応
接セットのあるきれいな待合い室で少し待っていると、4時25分に受付をす
るからと放送があり、セキュリティチェックの入り口の所でみんなと別れた。

 セキュリティチェックが終わると、どこに行ったらよいかわからず、どこに
行くのか聞くと、バスが迎えに来るからとのことだった。5時前にバスが迎え
に来て、こちらの客を先に飛行機に乗せてくれた。来るときと同じ自由席だと
思って、好きなところに座っていたら、後から乗ってきた乗客が座席番号を見
ながら座っているではないか。私の座っている所にもやってきて、「ここは私
の席ですが」と言われ、立つことになり、スチュアーデスに聞いたところ搭乗
券に座席番号が書いてなかったので「しばらく待ってください」と言われ、だ
いたいの客が席に着いたところで空いている席に座るように言われた。小さな
女の子を連れた女性の隣の席だ。機内食はパン一切れ、丸パン1個、肝臓のペ
ースト、バター、プチロールケーキ、チーズ、チョコレート菓子が2個、コー
ヒーが出た。コーヒーは砂糖入りで甘い。コーヒーを飲んでもプチロールケー
キの甘さが口の中から消えない。チョコレート菓子は隣の席の女の子にやる。
食事の後にジュースかガス入りのミネラルウォーターが配られた。ガス入りの
ミネラルウォーターはどうしても慣れないのでリンゴジュースをもらう。ウラ
ジオストクに着く30分ほど前、隣の女性が女の子の髪をきれいに編んでやっ
ていたのができあがったところで女の子の写真を撮らせてもらった。それをき
っかけに話し始めるとエレーナというおかあさんも6年前にカムチャッカから
の船のツアーで日本に来たことがあると言っていた。神戸が一番気に入ったと
言っていた。ウラジオストクへは知り合いのところにお客に行くそうだ。彼女
はカムチャッカ生まれだが、一緒にいた女の子(5歳のナターシャ)はウクラ
イナで生まれたそうだ。上に13歳のサーシャという男の子がいるということ
だ。日本の緑茶が好きだなどという話をしているうちにウラジオストク空港に
到着。

 バスに乗せられ、いきなり外に出される。空港の門を出ると、たくさんの迎
えの人がいて、私の名前を書いた紙を持っている人を探すが見あたらない。す
ると「田口さん!」と呼ぶ大きな声が聞こえたので、そちらの方に行くと23
日に空港からホテルまで送ってくれた運転手がいた。今日は彼一人で迎えに来
ていた。私が少しロシア語ができるのでガイドは省略したらしい。預けた荷物
が出てくるまで時間がかかるので、寒いから車の中で待ちましょうと大きな9
人乗りのワゴン車の中で待っていた。荷物の受け取り方はカムチャッカと同じ
で、荷物が出てくるまで外で待たされ、ベルトコンベアが動き始めてからやっ
と小屋の中に入れてもらえる。日本だと5分も待たずに荷物が出てくるが、ロ
シアでは20分くらいは待たされる。車の中で待っている間に、運転手はロシ
アの女を試してみたかとか、いい女が通っていくとか話しかけてくる。なかな
か好色なようだ。

 空港からホテルへ行く途中で夕食はどうするか、良いカフェを知っているが
寄っていかないかというので、彼の誘いに応じて、夕食を食べていくことにす
る。大きなビルの1階で、2階は映画館だと言っていた。店に入ると、ビリヤ
ードの台が5台くらい置いてあり、ロシア人がやっていた。その右手奥に入っ
ていくと、日本のキャバレーみたいになっていて、今日は貸し切りのようだ。
その部屋を横切り、奥の事務所みたいなところに行き、お客さんを連れてきた
けどどこか空いていないかとみたいなことを尋ねていた。そして、最初に入っ
た部屋の左奥の部屋に案内された。ビリヤードの台が1台置いてあり、応接セ
ットにテーブル、テレビにカラオケのある大きな部屋で、食事をとることにな
った。ここのオーナーも支配人も運転手の知り合いだと言っていた。私一人だ
と店の人には言っていたが、彼を待たせて一人で食べるわけにもいかず、一緒
に食べようと誘う。メニューを見て、今回の旅行で食べられると思って食べら
れなかった蟹を食べようと思い、蟹のマヨネーズ添えを頼んだが、別の蟹や海
老が入って美味しいものをウエイトレスに勧められ、それに変更した。スープ
はボルシチ、そしてメインは魚とキャベツの千切りをオーブンで焼いたもの、
そして最後に紅茶を頼んだ。ところがボルシチはない、他のスープもないとい
うことで、結局最初に頼もうとした蟹を注文した。運転手は家に夕食をとって
くるからと家に電話をかけに行った。私だけビールを一杯注文して飲んだ。も
う一杯飲みたかったが、一人だけ飲むのも悪いような気がしてやめておいた。
全部食べると苦しいくらいになった。食事代は蟹が高かったので(1人前11
8ルーブル)、全部で620ルーブル(3100円)した。ルーブルが残って
いたし、日本人にとってはたいした金額ではないが、ロシア人にとっては、給
料の三分の一くらいを1回の食事で使うなんて考えられない贅沢だ。カフェを
出た後、車の中で運転手は、「また女の人と食事をしてきたんでしょう」と妻
に責められそうだと言っていた。彼の今までの話からすると、相当女好きで妻
の信用はないようだ。年は60くらいに見えたが。

 ホテルに着いて、チェックインして彼と別れる。部屋は6階の6033。き
れいで大きな部屋だ。ベッド、机、椅子が二つ、冷蔵庫、テレビがあるが、風
呂がなくシャワーだけだ。1階の売店でミネラルウォーターを買う。モスクワ
のは1.5リットルで10ルーブル(50円)、カムチャッカのは15ルーブル(
75円)で売っていた。今回はモスクワのを買う。10時半頃に寝るが、眠り
が浅いのかよく夢を見て4時、6時半に目が覚め、7時半に起きた。

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