THE ROOTS OF GAMELAN

アフリカ音楽のサイトの中にこうしたページを設けるのもおかしな話かも知れないが、バリ島の音楽、ガムランのCDを紹介したいと思う。実は私は、アフリカに限らず、世界中の熱帯地域や秘境に強い興味を持っている。インドネシアもそのひとつで、この国にはバリ島を中心に8度に渡って訪れている。実は、インターネットを始めた当初は、アフリカではなくインドネシアの話題を中心にサイトを構成することも考えていた。それほどバリに惹かれる理由は、イカット、ガムラン(特にジェゴグのコレクションはかなり充実しています)、スクーバ、そして「森の音」、等々あるが、こうした話題は別の機会に。

近年の復刻盤が面白いというのは常日頃の持論であるが、これは何もアフリカ音楽に限ったことではない。このところ、キューバ、ブラジル、アラブ、マグレブ、インド、ジャズ、などにも聞きたい復刻盤が多すぎて、ユッスーの新作「JOKO」ですら満足に聞く時間がない毎日が続いているほど。このような状況下、ガムランの復刻盤CDにとんでもないものを発見した。私が紹介しているヒュー・トレイシーのCD同様、大変に貴重な録音でありながら、このCDを聞いた日本人は、まずいないのではないだろうか?

という訳で、「DISC REVIEW」の特別編です。


THE ROOTS OF GAMELAN : THE FIRST RECORDINGS ・BALI, 1928・NEW YORK, 1941


バリ島のガムランの世界初録音が遂にCD化された。カナダ人の音楽家コリン・マクフィーがガムランのSPを偶然耳にしたことがきっかけでバリへと旅立ち、その生涯をかけてガムランの研究に没頭したことはよく知られていることだが、そのSPを初復刻したのがこのCD。1928年の録音というから、ケチャすらまだ存在しない時代である。さまざまなスタイルのガムラン演奏が収録されており、現在に通じる様式が多い一方で、今では聞くことの不可能なものもある。SP録音のためにどの演奏も3分程度に要約されている点を除くと、個々の演奏について現在のスタイルとの違いを語ることはなかなか難しいが、(16)の「Janger」などは極めて貴重な録音だ。男女のコーラスが交錯するこのスタイルは、ケチャの原型だとも、消滅したスタイルだとも言われるが、確かにこんなガムランは初めて耳にした。

一時は半年間隔でバリの地を踏んでいたが、バリ社会とガムランの背景を知るほど、安易な気持ちでガムランに接することが出来なくなった。また最近もガムランのCDがいろいろとリリースされているが、一部の作品の録音の良さを絶賛する文章に関心する一方で、実際にそのCDを聞いてみるとピークが歪んでいる「欠陥商品」であることに失望したりしたこともあって、しばらくガムラン音楽からは離れていた。しかし、久しぶりにこのCDでガムランに接して、素直な気持ちでその音楽を楽しむことが出来た。70年以上昔の録音なため確かに音は良くないが、その背景に存在するものや、このSPを聞いたコリン・マクフィーの気持ちなど、あれこれ想像させられたこともあり、このところすっかり最近の愛聴盤となっている。

これほどの「歴史的録音」、クラシックのレーベルからリリースされたためか、残念なことに日本には輸入盤すら入ってきていないようだ。国内配給を熱望する。


 (2000/02/15 Ver.1.0 : 準備稿)

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