KITA KAN / KANDIA KOUYATE 
このところのマリ音楽の面白さは、ミュージック・マガジンや私の書いた「アンボス・ムンドス」の紹介記事、あるいは欧米各誌で取り上げられている通りなのだが、ここでは国内ではまだ紹介されていない一枚を取り上げたい。
カンジャ・クヤテという名前は、ギネア音楽史上の重要人物(超絶した美声をもっていた男性歌手、昨年復刻CDが3種出た)と同名だが、こちらはマリの女性歌手。アフリカのCDにしては珍しくジャケットにポートレイトを用いていないが、写真で見る限り彼女なかなかキュートな美人だ。マリ西部キタの出身で1959年の生まれというから、既にベテランの域だろう。そして、結論から言うと、現在のアフリカでは、同じマリのアミ・コイタと並んで、実力ナンバー・ワンの女性歌手と感じた。
この「キタ・カン」は彼女のファーストCDで、セクーバ・バンビーノ(ギネアを代表する実力派歌手)、モリバ・コイテ(ンゴニ奏者)、ウスマン・クヤテ(ご存じサリフ・ケイタ・バンドの元ギタリスト、3曲目でのソロが心地よい)、それにストリングス(46本のバイオリン)など、豪華な共演者を従えた、朗々とした彼女の歌を堪能できる。いずれの曲の演奏も簡潔で、特にストリングスは単調過ぎるようにも感じられるが、その分彼女のグリオ歌唱をじっくり聞かせる作りになっている。レゲエ・スタイルの曲(8)やアフリカン・ズーク的な曲(3)もあるが、それらすら彼女の優れた資質を伝える仕上がりだ。
これまでにCDリリースがなかったことが不思議なくらい、マリのグリオの中でも卓越した実力が認められる。今の日本では、話題になりにくいタイプの音楽かも知れないが、マリ音楽のファンにはお勧めの一枚。
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| 1959年(58年とする記述もあり)に首都バマコから西に位置するキタに生まれる。メインの活動はパトロンを讃えて歌うという、グリオ本来の役目。それだけでも、非常に高い名声と莫大な富を獲得している(実際、自家用ジェット機を所有するほどらしい)。"Amary Dou Presente K.Kouyate" (1985年)、"Project Dabia" (1988年)、"Sa Kunu Sa" (1994年)など、これまでに4〜5本のカセットをリリース。そして最新カセットが左に紹介した "Kita Kan" で、CDと同タイトルだが、両者で重複する曲は3曲のみ。単独ではないものの、海外公演は何度か経験していて、ロンドンなど欧州が多いが、米国、オーストラリア、それに香港でもライブを行っている。 | 
『アンボス・ムンドス』第5号に、私が執筆した彼女のこのCDのリビューが掲載される予定です。
(2000/02/28 Ver.1.0) (2000/04/10 Ver.1.1)
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