KITA KAN / KANDIA KOUYATE


 
  KATA KAN / KANDIA KOUYATE
   (STERN'S AFRICA STCD 1088,UK,1999)
(1) DONINKE                        7'13"
(2) MANDENKALOU                    8'22"
(3) KANDALI                        6'49"
(4) DOUWAWOU                       7'07"
(5) FOLILALOU                      7'01"
(6) WOULALE                        7'05"
(7) SAMBAYAYA                      6'33"
(8) AYAMAFELE                      5'59"
(9) HOMMAGE                        8'33"

このところのマリ音楽の面白さは、ミュージック・マガジンや私の書いた「アンボス・ムンドス」の紹介記事、あるいは欧米各誌で取り上げられている通りなのだが、ここでは国内ではまだ紹介されていない一枚を取り上げたい。

カンジャ・クヤテという名前は、ギネア音楽史上の重要人物(超絶した美声をもっていた男性歌手、昨年復刻CDが3種出た)と同名だが、こちらはマリの女性歌手。アフリカのCDにしては珍しくジャケットにポートレイトを用いていないが、写真で見る限り彼女なかなかキュートな美人だ。マリ西部キタの出身で1959年の生まれというから、既にベテランの域だろう。そして、結論から言うと、現在のアフリカでは、同じマリのアミ・コイタと並んで、実力ナンバー・ワンの女性歌手と感じた。

この「キタ・カン」は彼女のファーストCDで、セクーバ・バンビーノ(ギネアを代表する実力派歌手)、モリバ・コイテ(ンゴニ奏者)、ウスマン・クヤテ(ご存じサリフ・ケイタ・バンドの元ギタリスト、3曲目でのソロが心地よい)、それにストリングス(46本のバイオリン)など、豪華な共演者を従えた、朗々とした彼女の歌を堪能できる。いずれの曲の演奏も簡潔で、特にストリングスは単調過ぎるようにも感じられるが、その分彼女のグリオ歌唱をじっくり聞かせる作りになっている。レゲエ・スタイルの曲(8)やアフリカン・ズーク的な曲(3)もあるが、それらすら彼女の優れた資質を伝える仕上がりだ。

これまでにCDリリースがなかったことが不思議なくらい、マリのグリオの中でも卓越した実力が認められる。今の日本では、話題になりにくいタイプの音楽かも知れないが、マリ音楽のファンにはお勧めの一枚。


◆◆ 経歴 ◆◆
1959年(58年とする記述もあり)に首都バマコから西に位置するキタに生まれる。メインの活動はパトロンを讃えて歌うという、グリオ本来の役目。それだけでも、非常に高い名声と莫大な富を獲得している(実際、自家用ジェット機を所有するほどらしい)。"Amary Dou Presente K.Kouyate" (1985年)、"Project Dabia" (1988年)、"Sa Kunu Sa" (1994年)など、これまでに4〜5本のカセットをリリース。そして最新カセットが左に紹介した "Kita Kan" で、CDと同タイトルだが、両者で重複する曲は3曲のみ。単独ではないものの、海外公演は何度か経験していて、ロンドンなど欧州が多いが、米国、オーストラリア、それに香港でもライブを行っている。


『アンボス・ムンドス』第5号に、私が執筆した彼女のこのCDのリビューが掲載される予定です。


(2000/02/28 Ver.1.0)
(2000/04/10 Ver.1.1)

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