SPECIAL FIN D'ANNEE PLUS / YOUSSOU WITH SUPER ETOILE


 
 SPECIAL FIN D'ANNEE PLUS 
   / YOUSSOU N'DOUR WITH SUPER ETOILE        
   (PAPE THIAM no number,SENEGAL?,1999)
(1) DEL TEEW                       6'30"
(2) MEDINA                         5'09"
(3) MISS                           6'18"
(4) BOU LEEN COUPE                 4'39"
(5) MO LEE MEKH (FOOT)             5'49"
(6) BIRIMA                         6'46"
(7) ALALOU MBOOLO                  6'18"
(8) NO MELE                        5'17"

ユッスー・ンドゥールの新しいCDが届いた。

このCD、セネガル盤という話だが、そうだとしたらなぜ自身のレーベル JOLOLI のロゴが入っていないのだろうか?どうも出所のはっきりしないリリースだ。おそらく日本でのリリースもないことだろう。
そして内容は、まず6曲目までが1998年リリースのセネガル版カセット、"SPECIAL FIN D'ANNEE"そのままで、それに2曲追加収録されている。またしても新曲の収録はなく、つまり、純然たる新譜というより従来カセットでリリースされていたもののCD 化と言う方が正しい。

このアルバム、カセットで聞いたときにはどうもピンとこなかった。展開の乏しい単調な曲が多いように感じられ、例えば、"MIYOKO" などの曲に代表されるようなポップなメロディーがある訳でもなかったからだ。
まず、ドラム、リズムギター、パーカッション、キーボードが、ンバラ特有の弾むようなリズムを維持しながら、基本的には同じパターンをくり返す。しかしこのベーシックな部分の演奏のまとまりが、あまりに良すぎて、悪く言えばサンプリングされた音を聞いているかのような印象さえ受ける。そしてその上を自由に泳いでいく、タマの弾むビートとユッスーのボーカルはいつも通りのはずなのだが、全体としてみると、手癖、口癖で演奏し歌っているように聞こえ、曲全体に覇気が感じられない。

ところが今回CDで聞き直してみて、ずいぶんと印象が変わった。
もともと録音が完璧でないものの(SNもミックスバランスもよくない)、CD化でいくぶん音の輪郭がクリアになったからか? それとも、8曲目のアレンジにすっかり参ってしまったせいか、あるいはまた収録曲のほとんどを現地のライブで聞いてきた余韻かとも考えたのだが、どうもそればかりではなさそうだ。今だにそこのところをうまく説明できないのだが、旧譜を聞いてからまたこのCDに戻ってくると、バンドの演奏の進化を感じるのだ。

ユッスーの歌にも、シュペール・エトワールの演奏にも、何か深みのようなものの存在を感じ始めている。最近はこのCDを聞かないと1日過ごせないまでに聞き惚れている。(周囲の人々の感想は、いまだに芳しくないのだが、、、)

ベスト・トラックは(2)と(5)だろう。
(2)は1985年に初録音、1990年の "SET" にも収録されていた。"SET" での物静かなヴァージョンも悪くないのだが、"SINEBAR" で気分が最高に高揚した次という曲順がどうにも苦手で、いつもこの曲はスキップしていた。今回のヴァージョンはイントロ明けからのリズムの弾み方が楽しい。非常に陽気で、全く別の曲に生まれ変わっており、これなら踊れる。
(5)は、リズムの単純な楽しい曲。小気味よいギターのイントロの後で聞こえてくる、キーボードの可愛らしい音色が印象的。それにしてもここでのユッスーのボーカルの説得力は一体何なのだろう。歌詞が知りたい。

(6)は1996年の "LII !" に収録されていた曲。前回のヴァージョンはアコースティック楽器をバックに、ボーカルもやや力を抜いた歌い方だったが、今回は絶叫調、ユッスーの完璧なボイス・コントロールが堪能できる。ちょっともたついたコーラスは、ユッスーの仲間やファンによるものということだ。

追加収録の2曲うち、(7)は "ST-LOUIS" 収録曲のヴァージョン違い。私が見てきた THIOSSANE のステージでは、ラストに演奏されたが、とにかくこれが最高だった。似たようなアレンジだったが、当夜のライブのハイライトだったと思う。それと比較するとこのCDの方はいまひとつの出来で、少し残念。あの夜の興奮がよみがえらない。さらなる再録音かライブ録音のリリースを期待したい。

(8)は "THE GUIDE (WOMMAT)" 収録曲でやはりヴァージョン違い。アルバムの最後に来てようやく、展開のある曲が登場した。オリジナルも大好きだったが、今回はボーカルとリズムとのズレ方が面白い。疾走感ある終わり方で、また1曲目から聞き返したくなってしまう。

ところで実は私も "SET" 以外のインターナショナル盤がたいして好きになれず、現地カセットを好んで聞いているひとり。(私個人は、ユッスーもサリフ同様、インターナショナル盤を作る際のパートナーの選択に問題があるのではないかと考えている。)確かに詰めの甘さをところどころ感じるこのアルバムも、"EYES OPEN"、"THE GUIDE(WOMMAT)" の出来を超えていると思う。

何はともあれ、ユッスーの艶のある声に全く衰えが感じられないことが嬉しい1枚です。


(1999/07/15 改)
(2000/02/24 再改)

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