FEMI KUTI LIVE IN TOKYO 2000/04/14


フェラ・クティの最高傑作「ロフォロフォ・ファイト」。大音量で流れるそのサウンドに引き寄せられるように、新宿リキッド・ルームのダンス・フロアに若者達が溢れていく。ステージ下では、いくつもの肩と腰、それにオシャレに飾られたヘアーが心地良さそうに揺れる。そしてひとりひとりの表情には、次第に高まる期待が色濃く伺える。アフリカが生んだ最もアグレッシブな音楽であり、世界で最も強烈なダンス・ミュージックであるアフロ・ビートが、いよいよ東京初見参の瞬間を迎える。

19時50分、ほぼ定刻通りに11名のポジティブ・フォーセズの面々がステージに現れ、軽くインストを一曲。続いて女性ダンサー3名、そして「The New King of Afro Beat」とMCからの紹介を受けた、ナイジェリアのニュースター、フェミ・クティが登場。今回の来日メンバーは、フェミ(Vo, Alto)、コーラス(x3)、ホーンズ(Tp, Tb, Tenor, Baritone)、ドラムス(Drum-kit, Timbales)、パーカッション(Conga, Big Conga)、ベース、ギター、キーボードの総勢15名。これはCDにクレジットされたメンバーとほぼ一致し、昨年セネガルのダカールで見たメンバーそのままでもあるようだ。

1曲目はサード・アルバム収録の「Plenty Nonsense」。昨年夏のフジ・ロック・フェスティバルのときと同様に、彼の最高作を冒頭に持ってきた。しかし、まだ全体的に堅い印象で、ややがっかり。サウンドが幾分しっくりいかない感じは3曲目の「Truth Don Die」あたりまで続いた。それでもフェミは、常にマイクまたはアルト・サックスを手にして跳び回り、じっとしていることがない。メンバーがソロを聞かせる間でさえも踊り続け、サービス精神満点のパフォーマンスを見せた。

4曲目の「Scatta Head」の頃には演奏も安定しだし、観客とのコミュニケイションも盛り上がる。そしてお待たせ、「Beng Beng Beng」。CDではあっという間にお終いになってしまう曲の短さが不満だったが、今晩はたっぷり楽しませてくれた。フェミのしぐさもセックス・アピールが頂点に達し、観客の受け良く、後半はフェミのアクトと豪快な演奏に煽られて会場はジャンプ合戦に。

フェミのボーカルはCDでは乾いた感じがしたが、ライブでは肉感に富んだ力強いものだったし、フェミのノン・ブレスによるサックスには呪術的な面白みも感じられた。またホーンズの切れ味鋭いアンサンブルには、60年代にアフロビートがハイライフから受け継いだ遺産が、今に伝えられているという感想さえ抱いてしまう。

そして「Look Around」、「Sorry Sorry」、「Blackman Know Yourself」と続くうちに、最高のフィナーレ。アンコールに応えて「Blackman Know Yourself」を再演し、いつの間にか2時間のステージが終了。周りを見回すと誰もが満足した様子だった。

、、、と、一応こうは書いたものの、何故かしら物足りない気持ちを引きずっている。メンバー構成、レパートリー、ポジティブな姿勢、など多くの点が昨年5月にダカールで見たステージと一致しており、父フェラの曲をやらなかった分だけ『SHOKI SHOKI』収録曲それぞれに与える時間が長くなったことや、観客との十分なやりとりが成立していたという前進面もあるものの、ダカールでの興奮が蘇るまでには至らないのだ。これは、一年前からの変化が小さいことや、楽しみにしていた「Plenty Nonsense」の出来が、今ひとつだったことのためではない。

ステージ上のフェミは、美しい肉体と相まってますます魅力的で華のある奴だし、全く手抜きなしの全力投球のライブ・アクトを見せてくれた点は感動的ではある。今回も随所に、フェミ・クティのもつ優れたエンターテイナー振りを再確認できた。しかしその一方で、フェミの張り切りようが幾分空回りしているように私の目には映り、フェミの音楽がCDと同様にライブでも、ただ突っ走るばかりの単調な面もあると感じられるのだ。

帰宅後、興奮を冷ますかのように、L.T.J. ブケムの『JOURNEY INWARDS』を繰り返し聞いているのだが、同じアフリカの血が流れる2人の作り出す音楽は実に対照的だ(L.T.J. ブケムの両親はウガンダ人らしい)。個人的にはフェミの音楽もアフリカというよりも、クラブ・ミュージックの文脈の中で捉えるべきではないかと考えているのだが、L.T.J. ブケムのクールさを前にしては、フェミの音楽が全体として感じさせる余裕のなさが際だってくる。そこにフェミの限界点があると見ることは、贅沢な感想だろうか。


フェミ・クティ(FEMI KUTI)

1962年ナイジェリア生まれ、現在37才。父フェラ・クティはアフロビートの創始者としてあまりにも有名。父のバンドで音楽活動を開始し、その後自身のバンド、ポジティブ・フォーセス(POSITIVE FORCES)を率いた活動に移行。98年リリースの『SHOKI SHOKI』は彼の4作目(国内盤は99年のリリース)。近年、クラブDJからの支持が厚く、リミックス盤が12種ほど出ている。

References

GO TO "THE DISCOGRAPHY OF FEMI KUTI"

GO TO "FEMI KUTI LIVE IN DAKAR 1999/05/08"


(2000/04/19)

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