FEMI KUTI LIVE IN DAKAR [1]

1999.5.8



■フェミ・クティがいよいよ日本にやってきます。8月1日のフジ・ロック・フェスティバルへの出演が今から待ち遠しい人も多いのではないでしょうか?私はひと足先に彼のコンサートをセネガルの首都ダカールで見てきましたので、リポートします。

■フェミのコンサートが行われたのは5月8日。当初は前日の7日の予定でしたが一日ずれて『ショキ・ショキ』の日本盤リリース日とちょうど重なり、何となく良い巡り合わせだと感じました。しかし、会場はダカール市の中心部にあるフランス文化センターの屋外ステージ、と言うよりりも中庭といったところ。客席も500席に満たないピンとこない場所でした。チケットの料金も6000CFAフラン(約1200円)と高くて、これでは若者は入れない。結構地味なライブになるのではと初めは心配でした。それでも折角の機会なのでステージの写真を数枚でも撮らせてもらおうと考え、念のために取材許可をもらうために、一行が滞在するホテルに出向くことに。そこでマネージャーに会いたいと頼んだところが、何とフェミ本人が出てきてしまいました。『こんなにいい男だったっけ?』これが素直な第一印象です。動くフェミの姿といえば、ビデオ『FELA IN CONCERT』(1981年6月30日のパリ・ライブ)で、ほとんど棒立ちでテナー・ソロを演奏する映像しか記憶にありません。物腰もとても落ち着いており、現在は立派なバンド・マスターであることを感じさせられました。失礼ながらフェラの息子とは思えない位にハンサム。目の前で見る本人は写真以上に魅力的な男で、長身・筋肉質な肉体であることもあり、どこかのモデルと対面している印象でした。

■開演時刻の夜9時になっても客席はガラガラ、あまりチケットが売れていないのだろうか?それともかなり遅い時刻にならないと始まらないのだろうか?などと考えているうち、客席が満席になった9時半にコンサートが始まりました。最初にフェミを除くポジティブ・フォースの14人が登場し軽く一曲。メンバー構成は次の通りです。tp、tb、ts、bs、ds、g、b、kbd、perc3人、ダンサー3人。ステージ左隅にあったのはビッグ・コンガ(ベドゥ・ドラム)だと思います。また女性ダンサー3人はパーカッションも兼ねていました。遅れてフェミが登場、というよりも、駆け込んできたと言った方が的確。フェミは最初からエンジン全開でした。ボーカルもアルト・サックスもワイヤレス・マイクを使用していたこともあり、ところ狭しと飛び回る激しいパフォーマンスを見せてくれました。私自身、アフロ・ビート初体験。フェラのライブとはステージングのかなり異なるのに驚かされました。日中フェミと言葉を交わしたときの印象や会場の雰囲気からして、結構淡々としたライブになるかも知れないと考えていたので、これは正直良い方向に裏切られたといえます。前半は一曲終えるごとに軽く肩で息をするほどで、若干醒めている観客達をあおるかのようでした。

 

■あちこちのインタビューでフェミ自身が語っているように、結構ポリティカルな姿勢も感じられました。1曲目では”EDUCATION!EDUCATION!”と連呼した後、しばらくアフリカの現状を憂える演説。そして2曲目では”FREE AFRICA”というフレーズをくり返す。そういえば、ステージ中盤ひとりの白人が真正面からステージに上がりフェミに何かを語りかけて退場する一幕も。一瞬会場の雰囲気が危うくなりましたが、歌の内容と何か関連していたのだろうか?

■コンサートはちょうど2時間でしたが、できればもっと長くやってほしかった。20曲近くを演奏しましたが、いずれもスタジオ録音と同様にコンパクトにまとめられていて、10分を超える曲はなかったようです。『ショキ・ショキ』からは「Beng Beng Beng」「Look Around」「Sorry Sorry」などをやりました。また中盤では「Lady」「Shakara」を続けて歌いました。「Shakara」のときに上着を脱ぎ捨てて歌い出し、やはり親父のことは結構意識しているようです。それにしても、まさかフェラのこの2曲を生で聞く日が来るとは、、、。

バンド全体のコンビネーションもよく、どの曲もライブ活動を重ねてきた分だけ、よくまとまっていました。最高だったのは「Plenty Nonsense」。ほぼアルバム通りのアレンジでしたが、出来が今一つだったモータウン盤に比較して、はるかにスピード感が増し、こちらの気持ちもどんどん高揚してきます(何でみんなジッと座って聞いているんだよ!!)。

ただ正直なところ、もうこれでお終いなのと言いたくなる曲も多く、もっとジワジワ盛り上がる長尺な曲も欲しかったです。今回は会場の時間的な制約もあったと考えられますが、フェミ自身の指向、それに出演者の数から見てもフジ・ロック・フェスティバルでも同様なステージになるのではないでしょうか?

■それにしてもフェミ・クティ、本当にカッコ良かった。ステージでの動きのひとつひとつは実に絵になっていて、しなやかな身のこなし、表情豊かな顔を目で追い掛けていると飽きることがなかった。フェミも次第に乗ってきたのか、顔つきそのものもどんどん変化していく。最後はにっこり笑うと嘘じゃなく父フェラと同じ顔になるのには、一瞬フェラが舞い降りたのかとさえ思えて驚きました。

■ホント心底楽しませてもらった素晴らしいステージでした。確かに親父とはまた別の音楽でありながらも、その音楽はアフロ・ビートの継承者であることをしっかりと宣言していた。これからフェミがアフロ・ビートをどのように発展させていくかということも楽しみになりました。

■ひとつ残念だったのは、会場の設備や聴衆の点では、望ましい条件下でのコンサートではなかったことです(実際、私自身、「フェラって誰ですか?」と尋ねられたりもした)。観客もほとんど座りっぱなしで、フェミが時折「Stand up」「Sit down」と指示していたのはハッキリ言ってしらけた。フジ・ロック・フェスティバルでは大観衆、大音量、スタンディングといった諸条件がそろうはずなので、はるかにすばらしいステージが期待できると思います。


(1999/06/23)


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