美女のち美男、ときどき美少女。
〜Beauty, Handsome and Pretty girl〜
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 第17章 デニム、国王に
 
   − 新生ヴァレリア王国 首都ハイム/城の広間 −
 
 カチュア行方不明……
 
 「おお、やっぱり、かなりショック受けたみてぇだな。ガッハッハ!」
 ザパンは他人事のように、豪快に笑い飛ばした。
 「ショック受けすぎってことじゃねぇか。行方不明なんだぞ!」
 ガンプは自分以上に野卑な、この男の笑いがどうにも好きになれなかった。
 「ん? まあ、ショックってことじゃあ、当たりだろ? 細かいことは気にすんなって、
  ハゲるぞ!」
 「おい、デニムっ! こんなヤツにまで、オレの愛情を注げっていうのかっ!?」
 ガンプの叫び声が空しく響いた。
 それはそうだろう、デニムはそれどころではない。
 
 「……スイマセン、僕がついていながら…」
 デニムは、ションボリしていた。
 てっきり、教会の外ぐらいで泣いているのだろうと、高をくくっていたのに、
 どこをどう探しても、カチュアの姿を見つけることができなかったのだ。
 
 モルーバは叱責するわけでもなく、お供をしていた男に質問をした。
 「影よ、お前がついていながら、見失ったというのか?」
 「はっ、それが追いかけようとしたところ、妙な雲が現れたかと思った途端に
  金縛りにあったかのように、動けなくなりまして…」
 「む…?」
 
 「居なくなったと言えば、アイツはどうした? デネブはよぉ?」
 カノープスが、もう一人の同伴者の名をあげた。
 「それが… あのあと、デネブさんもどこかへ消えてしまったみたいなんです。」
 
 「まさか、あの女、カチュアを誘拐したんじゃ…!?」
 セリエが恐い目をして、叫んだ。
 「姉さんじゃあるまいし。」
 すかさず、システィーナが返す。
 
 「ま、気まぐれな女だからな… また、ひょっこり顔を出すだろう。」
 カノープスが、さほど気にしてないように返したので、他の者もデネブのことは
 とりあえず忘れることにした。
 大事なのは、カチュアの方だ。
 
 「……カチュアはやはり、あの時死んでおったことにしよう。」
 モルーバが、ボソリとつぶやいた。
 「えっ、どういうことですか?」
 デニムはあわてて聞き返した。
 
 「行方不明ではどうにもなるまい。記憶喪失以上にな。」
 「で、でも、姉さんは……」
 「もはや、死んだも同然だ。……早く、気持ちを切り替えるのだ、デニム。
  …王はお前だ。」
 「そうよ! デニム、あなたが今やらなければ、この国は、この国はどうなるのっ!?」
 オリビアもすかさず、言い放った。
 
 ゴゴゴゴゴ………………!!
 何やらこの親子から、異様な圧迫感が放射されていた。
 (む……、この僕がプレッシャーをかけられるとはッ! ……言い訳は立つか。)
 デニムは自分に言い訳をしながら、ついに国王になることを決意した。
 (……姉さん、ゴメンよ。)
 
 
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