しげぼうの言いたい放題

 


・インフレ待望論を斬る(2001年09月06日)

ここへきて、デフレ不況を食い止めるための「インフレターゲット策」などという言葉が 新聞紙上を賑わしている。年率何%の物価上昇が達成されるまで、日銀にお金を刷らせ続ける というアホな政策で、自民党の一部から出てきている。外国の一部でもインフレターゲット策 をやっているが、どこもインフレを抑える目的で行なっている。デフレ下でこれを行なえば、 ハイパーインフレにつながりかねない世界的にも例を見ない危険な政策である。

そもそもインフレとはどういうものなのか。勿論物価が上昇することであるのだが、その要因 は、3つある。1つは、消費者の所得が多く購買意欲が高く、物が良く売れる場合である。 戦後の高度経済成長期などがそうである。2つめとして、物を作る原材料がなく(あるいは 高騰し)、物不足になる場合である。戦後の混乱期や石油ショックのときが良い例である。 3つめは、通貨紙幣が極度に増やされた人為的なインフレ即ち調整インフレである。 勿論「インフレターゲット策」とは3つめのインフレに相当する。

では何故このようなインフレを行なうことになるのか。人からお金を借りて返さないばかりか、 もっと借りまくるバカがいる。(このバカは人とは限らず会社組織、国家の場合もある。) どうしてもお金が返せなくて、偽札を勝手に沢山作る。その偽札が誰にも気付かれずにそのまま 流通に回ってしまう。その結果、物価が上昇し、貯えを持ったその他一般の人達の実質金融資産 が目減りする。 調整インフレとは、いわば、法に触れずに偽札を作ることと言って過言ではない。 他の言い方をすれば、貯蓄の平等を目指した全体主義とも言える。(共産主義と一見似て いるが、共産主義は所得の平等を目指している点が異なる) そもそも、物価を決定するのは我々一般庶民なのだ。企業が作ったモノを買うかどうかは 消費者が判断することだ。くだらないモノを作って売れなくて、経営に行き詰まればそれはそうい うモノを作った側の責任になるというのが資本主義の原則だ。ましてや、バブルに躍らさ れて財テクに失敗したり、担保もロクに取らずお金を貸し付けて回収できなくなったり、過剰設備 投資をして赤字を累積させた企業などは、どんどん潰して経営責任者を刑務所にぶちこむのが 筋だ。つまり物価というものは、作る側が消費者のニーズに合うものを作れば上がるし、 そうでなければ下がるもので、日銀などが目標値を決めてどうこうする問題ではないのだ。

日本では、バブル崩壊後の10年あまりの間、経営の行き詰まった銀行やゼネコンに多額の税金を投入 したり、採算の取れない公共事業にお金を注ぎ込むといったことで多額の財政赤字を作ってしまった。 それを補うためのインフレを起こそうとしているのである。 それを認めるということは、自らの先見性の無さにより経営に失敗した一部企業が、堅実に働き 貯蓄を持っている一般庶民から勝手に金をネコババするのと結果として等しくなる。 しかも、失業者が5%と過去最高に達したときに、その対策も立てないままインフレが起こっては どんなことになるのかバカでもわかるはずだ。 こんなことになったのも全ては、自民党政治の失政からきていることなのである。

こうした政策の失敗をまるで反省しない自民党の傲慢ぶりにはホトホト呆れ返る。反省しないどこ ろか中には、日銀がこうした金融緩和に踏み切らなければ日銀総裁のクビを切れ、なんて強行意見 を言うものもいる。今年の参議院選挙比例区で高得票で初当選し、ある雑誌で「日銀総裁はサル 以下だ」なんてほざいた国際政治学者だ。私は言いたい。「あんたこそブタ以下じゃない のかね。」と。 その他、「おれは小泉政権への提言勢力だ」とかで、30兆円の補正予算を組めなんて言って いるオッサンもいた。しかも、その中身は、田舎にもっと道路や新幹線を作れなどと相も変わらず 公共事業の一点張り。自分達を支持してくれる土建業社の利益のためには、採算性など二の次で 不要なものを次々作りだそうとする。まったく、これでは「医者が儲からないから病気を撒き散 らせ」と言っているようなものだ。

救われるのは、小泉首相がインフレ政策に慎重な姿勢を示し、国債の発行は30兆円以下にすると 言っていることだ。「自民党内に、自分の改革に逆らう者がいたら自民党を潰す」と先の参議院選 で明言した。今こそそれを実行に移してもらいたいものだ。小泉首相が本気で日本を変える気が あるなら、自ら自民党を飛び出して「この指止まれ」をやって、解散総選挙で民意を問う事だ。 これからが、日本の運命を決める正念場と言えよう。

最後に、これを読んでいる皆さん。インフレだけは絶対に許してはいけません。 インフレはファシズムだ。


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