34c(2004年3月1日)

防災と法 第6回

関東学院大学講師・都市防災研究会理事 三浦 一郎

特定非営利活動促進法

ボランティア活動の果たす役割の重要性
 1月17日は「防災とボランティアの日」で、1月15日〜21日は「防災とボランティア週間」です。
 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災での各種のボランティア活動や住民の自発的な防災活動の重要性が広く認識され、同年12月15日の閣議了解により創設されたものです。
 平成7年7月には防災基本計画に、「防災ボランティア活動の環境整備」及び「ボランティアの受入れ」に関する項目が設けられました。
 平成7年3月28日に設置された防災問題懇談会による提言においても

「ボランティアは被災者の援助に大きく貢献するものであるが、それをさらに活かすため、自主活動を損なわない形で側面的にボランティアに対する支援を充実させることが望ましい。
 行政においては、技能等を有するボランティアやリーダーの登録制度を始め、ボランティア団体に対する法人格の付与、経済的基盤の確立のための支援策等について検討すると共に、リーダーの育成を図る。また、災害時には特に行政面で手薄になっている分野をボランティアに周知して、行政がボランティアと協力して被災者への効果的な援助に当たれるよう努めるべきである」

と防災ボランティアの重要性やそのための普及啓発活動の必要性が盛られました。さらに、平成9年2月の閣議決定で、国内において災害時の社会奉仕活動に従事している者が不慮の死を遂げた場合に、一定の条件を満たすときは内閣総理大臣が弔意を表すことも決まりました。
 そして、平成10年12月にボランティア団体等が法人格(特定非営利活動法人)を取得して活動がしやすくなるように「特定非営利活動促進法」が施行されることになり、都市防災研究会も内閣府からNPO法人設立の認証を受けることができたのです。

防災とNPO
 防災に関連してNPOの役割は法的にどのように定められているのでしょうか。災害対策基本法等で国や地方公共団体の責任は定められているのですが、NPOについて、何ら具体的責任は規定されていません。
 特定非営利活動促進法は、社会的貢献をする一定要件を満たしている団体が簡易な手続きで法人格を取得する道を開くための法人格付与制度である。NPOが具体的にどのような活動をするかは、NPO自身に任されていて、国が強制することは本来の趣旨に反してしまうからです。法律で具体的な役割を決めてしまっては、自由な活動が出来ないことになってしまうので、自主性は確保されているが、団体の活動について、国から「お墨付き」が与えられたわけでもなく、認証されたこと自体で会の活動が昇華されたことにもならないのです。
 このことは、NPOが単独で防災に当たれば良いということではない。自主性を保ちながら、国や地方公共団体、さらには企業などとも協働していくことが重要であります。国等でフォローしきれないような独自のアイデアを発信・実践していくかが鍵になります。NPOは国や企業の下請けになってはその輝きは失せてしまうのです。
 NPOの発展は、公的機関との連携も大切ですが、自らに関する情報をできるだけ公開することによって、市民の信頼を得、市民によって育てられていくべきであります。
 そのためには、今後市民に信頼されるような活動を地道に続け、評価されることが何よりも大切です。



防災活動 公助から自助、自助から共助へ
大災害時『一人ではできない火事とお葬式』 第2回

防災アドバイザー・都市防災研究会員 佐藤 栄一

 前号では『死んではいけない、死なせてはいけない』確実に助けること。これが市民防災の原点である。そのためには火災を出さないことと記した。
 最近、地震防災に関してようやく行政依存が薄れて『自分の命は自分で守る、自分の地域は自分たちが守る』という公助依存意識から自助意識に変わってきたことが感じられるようになった。しかし、無関心、投げやりな個人が目立つようになってきたことが懸念される。せっかく、地域が自立して災害を迎え撃つ姿勢ができてきたのに一部の人たちの意識の欠如により火災が発生したり、救助活動や葬儀に時間を喪失していく。
 「そのときはお迎えが来たとあきらめております」と言う人に、「一人暮らしのあなたをお見送りするのは自治会や地域の皆さんですよ」と言うと、それから積極的に防災活動などに参加されるようになった。 
 『最初に死者ありき』一般のマニュアルにはこの視点が欠けている。また行政のPRや訓練などでも取り上げられることは少ない。備えといえば米や水を3日分蓄え、訓練といえば避難してきた人たちへの炊き出し、人数を確認し握り飯の数を決めるのが通例である。形式的な救助訓練では、棺の数は想定外であろう。遺体を検死、安置し、葬儀をして埋葬許可を受け荼毘に附す。悲嘆にくれる家族がこれらの処理が出来ないのは明白である。夏等には、この問題は時間的急を要し、死臭や伝染病など地域の衛生問題となる。 
 〔自主防災組織はできている〕〔マニュアルもできている〕〔定期的に訓練も実施している〕という模範的地域でも、公助でなく、自助でなく共助でなければでき得ないこと、皆で助け合うということはどのようなことなのか、『一人ではできないお葬式』を原点に考え見つめなおしてはどうか!「死んではいけない、死なせてはいけない、死ぬことに投げやりになってはいけない」この考えが定着してこそ災害後の復旧が円滑で迅速に進められることは、人的被害があった大災害からの大きな教訓である。何よりも救われた人の幸福感や救助した人たちの達成感は筆舌に尽し難い。家族を失われた人たちでも、地域の人たちに、人間らしく丁重に扱われれば、心の傷は軽く小さくすんでいる。

今回のまとめ

 『想定外想定』をしよう。まさかの出来事・起きてはならない事が起きた。想像を絶する、空前絶後の、そんな出来事をシミュレートすることを言う。さて、皆さんにとっての想定外想定とは・・・?



カナダからの便り

編集部委員 江森 瑛子

川崎ラボラトリーに関連して

 只今カナダに帰省しております。今、目にしたニュースレターに、川崎・ラボラトリーに関連する記事を見つけましたので、ちょっと面白いニュースかなと思いお知らせ致します。
 3月31日にアメリカのDefense Advanced Research Projects Agency (DARPA)(国防先端プロジェクト研究所とでも訳すのでしょうか) が、通常の兵器製造業社によるロボット開発の成績が上がらないのに業を煮やして、一般から募集をしたロボットによる障害物競走をカリホル二アのモハヴェ砂漠で催したそうです。
 結果は書いてありませんでしたが、1番になったチームには100万ドルの賞金を出すと言って募集したそうです。もっとも予想では、予定時間内にゴールまでたどり着けるロボットはないだろうと書いてありました。
 これらは、人が一切介入をしないで、リモートコントロールもなしのロボットの動作なので、目的は川崎のロボットの研究と非常によく似ています。
 全米から106のチームが名乗りを上げ、其の中の86チームが詳細な企画書を提出し、最終には19チームの参加になるそうで、中には高校生のチームも多かったようです。(もっとも親たちは航空産業の関係者だそうですが)。
 3大学が勝ちそうだと言われておりますが?

《日本でもこの様な催しが、TV番組として放映されていたのを見たことがありますが、この様な事がきっかけになり、より素晴らしい開発に結びついていくのでしょうね。実用化の出来る日が早く来ると良いですね。 編集部》



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