34b(2004年3月1日)

NPOの社会的責任の自覚と若い世代への継承環境実現

都市防災研究会理事・事務局長 大間知 倫

 数年前の総会でNPOを目指すべきだと発言しました。それが今回実現したのです。一昨年市民活動共同オフィスへの入居がきっかけで、役員会後の懇親会でNPO化が話題となりました。
 6回にわたるNPO研究会の開催、3回に及ぶ内閣府への訪問、横浜法務局への訪問等を経て、11月に内閣府への申請にこぎ付け、2月2日付で認証、登記もほぼ完了しました。NPO化については昨年5月の総会で論議が白熱、7月の臨時総会まで決定を待たなければなりませんでした。
 これらに先立ち、神戸支部を開設し、全国的活動の一歩を踏み出しました。
 今後は単なる任意団体ではなく、社会的にも評価される特定非営利活動法人となったのです。これには当然社会的責任も伴い、全国的活動を展開することが更に求められることでしょう。
 国・地方自治体が後援できる団体として、企画事業の妥当性や、遂行責任が問われてきますので、我々の能力もレベルアップして行く必要があります。
 NPO化したと言う事は会の継続性を保つ環境整備がされたと言う事です。若い世代に継承してもらえる様な内容の充実した魅力的団体としての活動が求められますので、これからも会員相互の研鑽を積み、内外への情報発信や防災・防犯・福祉のまちづくり活動を展開して行きましょう。地道な活動が第8回防災まちづくり大賞にもつながりました。
 初心を忘れずまちづくりをキーワードとして21世紀少子高齢化社会を乗り越えて行きましょう。



川崎ラボラトリー見学会に参加して

横浜国立大学COE研究員・都市防災研究会会員 川崎 昭如

 1月20日、川崎ラボラトリーを会員11名と訪問した。川崎市京浜臨海部にある、もと日本鋼管(現:JFE)の体育館であったこの施設は、文部科学省による研究開発プロジェクト「大都市大震災軽減化特別プロジェクト」の一部を実施するための研究開発拠点として平成14年に開所され、2つの研究施設が入っている。

  1. 独立行政法人防災科学技術研究所
     防災科学技術研究所地震防災フロンティア研究センター川崎ラボラトリー所長の後藤洋三氏より、研究所の概要や我国の地震の歴史、日常の備えの重要性に関する発表をして頂いた。氏は防災における最重要課題として「自助」を挙げていたが、「公助」の一例として当研究所にて取り組む研究開発の一つ、「震災総合シミュレーションシステムの開発」を紹介して頂いた。これはIT(情報通信技術)を活用し高機能で安価、そして日常業務システムと連携した取扱いやすい総合的防災情報システムを目指した先端的な研究開発である。「実際に川崎市や秋田県本庄市、宮城県南郷町等の自治体と連携を行っている。大都市川崎では従来から導入されているシステムとの連携が難しいが、小都市で防災に対する関心が高いところはやり易い」とのことだった。
     今回は概要的な話が中心であったため、研究所内で行われている具体的な研究開発の内容はわからなかったが、巨大地震の発生が切迫している我国においては、当研究所の先端的研究開発の成果が一刻も早く現状の防災対策に生かされることが望まれる。

  2. NPO法人国際レスキューシステム研究機構
     テクニカルスタッフ稲本金也氏から、レスキューロボット開発研究の話を伺った。
     救助活動が大変困難な大規模災害において、混乱の中でも情報を収集・判断し、災害の状況に応じて最適な救助を行うことができるレスキューロボットの開発研究を目的として、システムや要素技術、ロボット自体の開発を行っている。
     ビデオムービーでレスキューロボットの開発研究を見た後、体育館という空間を生かしたテストフィールドで、レスキューロボット2体を操作して頂いた。実際に動いているロボットを見る機会が少ない会員には、ロボットの一挙一動が興味深かったようだ。しかし、「何のためのロボットかわからない」「もっと小さく、動きを滑らかにしないと実用的ではない」等の当会員からの厳しい意見も挙げられた通り、実際の災害現場においてこれらのロボットが活躍するための課題・問題は山積されており、実用化までの道のりは非常に遠いと感じざるを得なかった。
     しかし、ロボット開発を科学技術の追求という面で捉えると、新たな研究成果や付随する新技術、さらには新産業の創出等も期待されるため、当機構の今後の開発研究に期待がかかる。
     以上川崎ラボラトリーの2つの防災研究施設を訪問したが、いずれも我国の中心的防災研究機関の一つである。この見学会を企画して頂いた編集部および両研究機関の関係者に謝意を表します。


「地震予知は不可能か?」

電気通信大学教授 早川 正士

 地震予知は、

  1. 長期的(数百年)
  2. 中期的(数十年〜数年)と
  3. 短期的(数ヶ月〜数日)予知

に分類できる。地震学や地震地質学、測地学の進歩に伴い、長・中期地震予測に関してはそれなりの進歩が見られるが、短期予測はその社会的重要性に関わらず、まだ道は遠いように見える。
 平成8年度から5年間科学技術庁主導による地震フロンティア計画が実施され、理化学研究所、宇宙開発事業団(NASDA)の2機構に対して、地殻変動観測ではない新しい“電磁気手法”を用いた地震の短期予知の可能性を探れとの要請があった。私は後者のフロンティアを担当し、一般向けの啓蒙書も二冊刊行している。

  1. 早川正士『最新・地震予知学(電磁波異常でわかる、その前兆)』祥伝社、1996
  2. 早川正士『なぜ電磁気で地震の直前予知ができるか』日本専門図書出版、2003

 1は神戸地震の直後に著したもので、フロンティア計画の開始される前に書いたものである。こうすれば地震予知ができるのではないかという内容である。
 2NASDA/電気通信大学グループの平成8年度〜12年度までの成果を紹介しているので、地震電磁気研究の最前線を感じて頂ければ幸いである。
 最大の成果は、“地震に伴って電離層までもが影響を受ける”ことを世界的に認めさせたことであろう。地震は地殻内のみならず、大気圏や電離圏までその影響が現れることから、“地圏・大気圏・電離圏結合”という新しい学問分野が登場しつつある。多くの事例から皆様に地震短期予知が不可能ではないということを是非ご理解頂きたい。 
 近年、地震短期予知の有望な候補として考えられているのが、「地球化学的手法」「電磁気的手法」である。前者はラドンとか地下水位の変動などを対象としているが、これらも電磁気現象と密接に関係し、すべて地震電磁気現象であると我々は考えている。
 理研グループは地震国際フロンティア研究で、ギリシャで成功している地電流測定を日本国内に展開し、現在40点近くの観測網を構築して観測している。
 NASDAは地震リモートセンシングフロンティア研究を実施し、2つのグループから構成された。それは人工衛星等の開口合成アンテナ(SAR)による地震 (および火山噴火)に伴う地殻変動モニターを担当するグループと私がリーダーの地震電磁気グループとから構成された。地震電磁気研究は以前から行われていたが、科技庁の実施により著しい変化を遂げたといえる。
 日本のフロンティア研究に刺激され、研究活動は目覚しい発展を遂げた。多くの国際共同研究も展開され、6月に仏国の地震電磁気専門衛星“DEMETER”が打ち上げられる。私はこの衛星計画にPI(Principal Investigator)として参加している。衛星と地上との同期観測は我々が名付けた“地上・大気圏・電離圏結合”の解明に著しく貢献すると思われる。
 結論として、地震予知は、かなりの可能性が高いことがわかってきた。皆様の御理解と御支援をお願いする次第である。




神戸からの便り

都市防災研究会理事・神戸支部長 西脇 顕正

 待望の神戸支部の登記も終わり、看板も掲示、《NPO法人・神戸拠点》が出来ました。この看板の下、会員を増やすことが目下の我々の仕事です。
 大震災後、10年目を迎えた神戸は、毎日の新聞の記事も内容が濃くなり、10周年に向かっての活発な動きが始まっております。
 世間では、風化が心配されておりますが、現地では、根深い重い課題が顕在化しています。その要点をまとめてみましたので、参考にして下さい。

  1. 高齢化が進んだ地域社会:
     支えあえる隣人が分散してしまった不安な社会的弱者、行政の支援も一応終わりという環境が見えてきて、下町コミュニティーは、精神的なパニックとなりつつあります。
  2. 耐震補強は進んでいない。:
     災害時に、避難場所と定められた公共施設の建物の耐震化は、予算の都合でまったく進んでいません。避難所は《まったく危険な所です》と云いたくなる程の実情です。
  3. 活力を失った空き地の目立つ町:
     密集市街地の再生は、区画整理の進行と共に新しい建物になりましたが、建設計画のない空き地が目立ちます。事情は色々ありますが、活力が失われた街は、何時の日に活力を取り戻せるのでしょうか?

 神戸の人々は、都市防災研究会の力を、今、本当に必要としております。《社会的弱者に手を差し伸べてください》そのような声がひときわ大きく聞こえて来るような気が致します。
《皆様の力を待っています》
 これが、震災後10周年を迎えた、世間から見捨てられつつありながらも課題沸騰の現地の声であると思います。



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