地震予知は、
- 長期的(数百年)
- 中期的(数十年〜数年)と
- 短期的(数ヶ月〜数日)予知
に分類できる。地震学や地震地質学、測地学の進歩に伴い、長・中期地震予測に関してはそれなりの進歩が見られるが、短期予測はその社会的重要性に関わらず、まだ道は遠いように見える。
平成8年度から5年間科学技術庁主導による地震フロンティア計画が実施され、理化学研究所、宇宙開発事業団(NASDA)の2機構に対して、地殻変動観測ではない新しい“電磁気手法”を用いた地震の短期予知の可能性を探れとの要請があった。私は後者のフロンティアを担当し、一般向けの啓蒙書も二冊刊行している。
- 早川正士『最新・地震予知学(電磁波異常でわかる、その前兆)』祥伝社、1996
- 早川正士『なぜ電磁気で地震の直前予知ができるか』日本専門図書出版、2003
1は神戸地震の直後に著したもので、フロンティア計画の開始される前に書いたものである。こうすれば地震予知ができるのではないかという内容である。
2はNASDA/電気通信大学グループの平成8年度〜12年度までの成果を紹介しているので、地震電磁気研究の最前線を感じて頂ければ幸いである。
最大の成果は、“地震に伴って電離層までもが影響を受ける”ことを世界的に認めさせたことであろう。地震は地殻内のみならず、大気圏や電離圏までその影響が現れることから、“地圏・大気圏・電離圏結合”という新しい学問分野が登場しつつある。多くの事例から皆様に地震短期予知が不可能ではないということを是非ご理解頂きたい。
近年、地震短期予知の有望な候補として考えられているのが、「地球化学的手法」と「電磁気的手法」である。前者はラドンとか地下水位の変動などを対象としているが、これらも電磁気現象と密接に関係し、すべて地震電磁気現象であると我々は考えている。
理研グループは地震国際フロンティア研究で、ギリシャで成功している地電流測定を日本国内に展開し、現在40点近くの観測網を構築して観測している。
NASDAは地震リモートセンシングフロンティア研究を実施し、2つのグループから構成された。それは人工衛星等の開口合成アンテナ(SAR)による地震 (および火山噴火)に伴う地殻変動モニターを担当するグループと私がリーダーの地震電磁気グループとから構成された。地震電磁気研究は以前から行われていたが、科技庁の実施により著しい変化を遂げたといえる。
日本のフロンティア研究に刺激され、研究活動は目覚しい発展を遂げた。多くの国際共同研究も展開され、6月に仏国の地震電磁気専門衛星“DEMETER”が打ち上げられる。私はこの衛星計画にPI(Principal Investigator)として参加している。衛星と地上との同期観測は我々が名付けた“地上・大気圏・電離圏結合”の解明に著しく貢献すると思われる。
結論として、地震予知は、かなりの可能性が高いことがわかってきた。皆様の御理解と御支援をお願いする次第である。