33a(2004年1月1日)

ご挨拶

都市防災研究会名誉代表 三浦 隆

  会員の皆様、新年おめでとうございます。平成9年の3月に「第1回総会」を開いてから7年経ちます。当初、50名に満たない会員数だったのが現在では200名を超え、数社の法人会員や団体加入をかかえ、事務所も横浜だけでなく神戸にも設置されるなど、大きな組織に発展しました。新春早々にはNPO法人化も実現する予定です。

 研究会の設立目的に掲げた「防災に関する諸研究・市民的立場からの提言を行い、都市防災の発展に寄与する」ための各種行事も、行政当局や地域諸団体などの支援を受け順調に進められ、その結果は新聞やテレビなどで再々にわたって報じられています。

 その詳細は、インターネットで「都市防災研究会」と検索すれば判るようになっています。インターネットでは、はじめに、地震予知を象徴する“なまず”の絵と共に、カラーで「都市防災研究会」(事務所の所在、主な活動紹介)の名が表示され、順次、「都市防災研究会の概要」(会員、研究会報など紹介)、「役員及び事務局の構成」、「入会」、「新会員の紹介・会員動向」、「都市防災研究会議事録」(研究会ごとの会員の研究発表の要旨)、「防災基礎編・防災ニュース」(東海地震・浜岡原発・富士山噴火・三宅島・神奈川県西部地震・国際シンポジウムなどの要旨)を掲載しています。

 これらは、阪神・淡路大震災に触発されて設立した本会が、予想される東海地震や首都圏直下型大地震に備えて、災害被害を少しでも減少させたいという願いで行なってきた活動記録の一端です。防災と言えば、よく引用される寺田寅彦の“災害は忘れた頃にやってくる”・“過去の記録は将来の予言である”という言葉も参考に、今年も各種活動を行い、防災に備えたいものです。
本年も、脇口代表、大間知事務局長、以下役員の皆さん、会員の皆さんと力をあわせ防災活動で頑張りましょう。




NPOって何?

都市防災研究会幹事 砥上 康二

 「NPOとは」を題材に書いてほしいと要請されましたが、本原稿を記載中にも都市防災研究会は内閣府に認証申請中であります。今年の総会では激しいやりとりがあったことに会員の皆さんは記憶に新しいでしょう。「収益業務をやるのかやらないのか明記すべきだ」「将来、収益業務がある場合を想定して定款に記載したい」「では、どのような業務を想定するのか」「現段階で確定する収益業務はない」・・・。

 社会を良くしていこうとする思いを、社会的な力に変える仕組みが「NPO法人」です。

ボランティア 社会貢献活動というと「ボランティア活動」と答えが返ってきます。だが、残念なことに日本の場合、ボランティア活動の組織体では車も買えないし、銀行からお金も借りられないし、電話一台取り付けることもできません。
 日本では阪神・淡路大震災の救援活動を契機に、ボランティア団体に法人格をもたせ社会的活動に責任を得られる体制を作るべきだ、との機運が高まりました。

 さてNPOとはなんでしょうか。「Non-Profit Organization」の英語の頭文字をとったもので、直訳すると「非営利団体」と訳します。NPOは欧米の「市民団体の法人制度」からきたもので、欧米の大学卒業生の3割はNPOに就職すると言われています。米国で有名なリンカーンセンターやハーバード大学もNPO法人です。欧米では、営利なら「企業」非営利なら「NPO」とした社会基盤が作られています。

 さて、高まった声を議員さんたちが取り上げました。国会でもめずらしい「議員立法」としてこの法律が制定されました。しかし、残念ながら欧米で言う「市民が作る法人」ではなく、環境や福祉など業種を限定し、12分野の活動に特定した「非営利活動」の法人を認めることとなってしまったのです。そのため、日本では「特定非営利活動法人」(Specified Non-Profit Corporation)と呼ぶこととなりました。

 法律は1998年3月19日に可決成立、同25日公布、12月1日に施行されました。ところが当初、7万件のNPO法人が作られるだろうと想定しましたが、いまでも非常に少ないのが現状です。その理由等について記載しますと、

 第一に、法人の手続きにかなりの労力が要ることと、法律にはどう解釈したら良いのかわからない部分が多くあることです。

 たとえば法人取得の方法には2つありますが、当初、

  1. ひとつのエリアだけを対象とした事業は当該の都道府県に認可を得ること
  2. 都道府県がまたがる場合は中央の内閣府に認可を得ること

となっていましたが、法務局からクレームがつきました。法人登記は法務局の仕事であり、「都道府県や内閣府が認可するのは問題だ」として認可か承認かわからない「認証を得る」となりました。はたして「認証とは何でしょうか」

 それだけに、NPO「特定非営利活動法人」はなんともあやしい団体になってしまいました。であっても、法人であります。そのため内閣府(都道府県)に約4ヶ月、法務省へ法人登記、税務署(国税・県・市町村)への届け出が必要です。法人を登記する行為ひとつをとっても、行政の認証が優先なのか法務局の登記が優先なのかはっきりしなくなってしまいました。

 第二は、法人となった後に事業報告書や収支計算書を作成し提出しなければならない義務を負い、これに負担を感じる団体が多いことです。

 しかし、法人格を持つのですから当たり前なのですが・・・。では、法人格のもつメリットを考えてみましょう。

  1. 契約の主体になれることです(法人名で銀行口座がもてる、法人名で資金の調達・借入ができる、法人名で事務所の賃貸契約ができる、職員と雇用契約ができる、不動産登記ができる等々)。
  2. 受託事業や補助金を受けやすくする(企業や自治体の補助金が受託できる、公的機関の指定事業者として資格が得られる、助成金が受けやすくなる等々)。
  3. 公的な施設を利用しやすい。
  4. 社会的な信用が生まれる(団体と個人の資産が区別できる、組織基盤が強固になる等々)。

 第三は、税制上のメリットがあまり無いことです。欧米では寄付金の税制控除が認められているため、「税を支払うより寄付金にした方が社会のため」という人が多くいます。近年ではウィンドウズで有名なマイクロソフト社の会長ビル・ゲイツが50億円からの寄付をNPOにしたことは耳新しい話題です。日本では長い間、「官は公益、民は営利」という2つの分類で基盤をなしていた国家制度を作ってきました。NPOは、「民も公益を受け持つ」体制に変えることですから、徐々に変える必要があります。昨年の国会で一部、寄付金の控除制度が確立されました。多くのNPOが出現することで体制を変えていく必要があります。

 第四は、法人格が無くても当面活動を続けるのに支障がないと判断する団体が多いことです。

 NPOと言うと無償のボランティア団体のようなイメージをもっている人がいますが、これは間違いです。報酬を受け取ってサービスを行っても構いません。非営利とは、儲けないという意味ではなく、剰余利益を分配してはいけないということです。すなわち、「株主配当の無い会社」というように考えて良いでしょう。法人格を持てば、「社会的に正式に認知された団体」として活動の幅も広がります。法人格を取得すれば、自分たちの組織をきちんと対外的に説明できますし、国際的にも信用がつくことになります。

 まだまだ多くの課題がありますが、紙面の都合上絞って提起しました。

 都市防災研究会は、今春には認証されると思います。作った以上簡単には団体を解散することはできません。そのため、会員の皆さん一人一人が、閉塞感の漂う日本に活力ある新しい社会基盤を作るためにも、NPO法人を取得し飛躍しようではありませんか。



防災と法 第5回

関東学院大学講師・都市防災研究会代表補佐 三浦 一郎

激甚災害法(げきじんさいがいほう)

 国民経済に著しい影響を及ぼす災害に対して「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(以下激甚災害法)は、国民経済に著しい影響を及ぼす災害が発生した場合、地方財政の負担の緩和や被災者に対する特別の助成を行うことが特に必要であると認められる場合に、その災害を「激甚災害」として指定し、国から県・市町村や被災者に対して特別援助を行うことなどを定めた法律です。災害は地震に限らず、台風などに対しても適用されます。
 
 激甚災害を指定する政令の制定に当たっては、あらかじめ中央防災会議の意見を聴くこととされていますが、激甚災害として政令で指定されると、一般の災害復旧事業補助・災害復旧貸付等の支援措置に加えて、激甚災害法に基づく様々な特例措置が適用されることとなります。

 例えば具体的には、災害が発生して中小企業者に被害が発生した場合、元来の災害復旧貸付等の支援措置に激甚災害指定がなされると、さらに、金利値下げ等の災害復旧貸付等の特例措置である激甚災害制度を利用できることになるのです。

 つまり激甚災害法は、災害に対する事後的な国民や地方自治体に対する助成措置という経済的支援を目的としているといえるでしょう。

助成の内容

 激甚災害指定による助成は、次のような幅広い内容について一定基準に基づいてなされます。

  1. 公共土木施設、公立学校、公営住宅、社会福   祉施設等の災害復旧事業等を対象にする公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助
  2. 農地や森林の災害復旧事業に対する補助や共同利用小型漁船の建造費の補助を対象とする農林水産業に関する特別の助成
  3. 中小企業信用保険法による災害関係保証の特例や、中小企業者に対する資金の融通に関する特例を対象とする中小企業に関する特別の助成
  4. 私立学校施設災害復旧事業に対する補助等を対象とするその他の特別の財政援助及び助成

本激と局激

 ところが、激甚災害法激甚災害指定の基準では、ある特定地域に激甚な被害を及ぼした災害であっても、全国レベルで見ればさほどの被害とはならず、激甚災害として指定されないケースが発生しました。

 そこで昭和43年に、町村単位の被害額を基準とする局地激甚災害指定基準が創設され、限られた地域内で多大な被害を被った地域に対して各種の特例措置が適用されることになりました。

 現在では、激甚災害指定基準による指定について、地域を特定せず、災害そのものを指定する場合がいわゆる「本激」で、市町村単位での災害の指定が「局激」ということになります。

最近の激甚災害

 最近の例としては、10月24日に閣議によって「平成15年5月中旬から9月上旬までの間の低温及び日照不足による災害」が激甚災害とされ、北海道や東北各県に対して第8条の「天災による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する暫定措置の特例」による貸付限度額の上乗せ等が決まりました(政令公布10月29日)が、ちょっと私たちがイメージする激甚災害とは違う気がします。



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