「NPOとは」を題材に書いてほしいと要請されましたが、本原稿を記載中にも都市防災研究会は内閣府に認証申請中であります。今年の総会では激しいやりとりがあったことに会員の皆さんは記憶に新しいでしょう。「収益業務をやるのかやらないのか明記すべきだ」「将来、収益業務がある場合を想定して定款に記載したい」「では、どのような業務を想定するのか」「現段階で確定する収益業務はない」・・・。
社会を良くしていこうとする思いを、社会的な力に変える仕組みが「NPO法人」です。
社会貢献活動というと「ボランティア活動」と答えが返ってきます。だが、残念なことに日本の場合、ボランティア活動の組織体では車も買えないし、銀行からお金も借りられないし、電話一台取り付けることもできません。
日本では阪神・淡路大震災の救援活動を契機に、ボランティア団体に法人格をもたせ社会的活動に責任を得られる体制を作るべきだ、との機運が高まりました。
さてNPOとはなんでしょうか。「Non-Profit Organization」の英語の頭文字をとったもので、直訳すると「非営利団体」と訳します。NPOは欧米の「市民団体の法人制度」からきたもので、欧米の大学卒業生の3割はNPOに就職すると言われています。米国で有名なリンカーンセンターやハーバード大学もNPO法人です。欧米では、営利なら「企業」非営利なら「NPO」とした社会基盤が作られています。
さて、高まった声を議員さんたちが取り上げました。国会でもめずらしい「議員立法」としてこの法律が制定されました。しかし、残念ながら欧米で言う「市民が作る法人」ではなく、環境や福祉など業種を限定し、12分野の活動に特定した「非営利活動」の法人を認めることとなってしまったのです。そのため、日本では「特定非営利活動法人」(Specified Non-Profit Corporation)と呼ぶこととなりました。
法律は1998年3月19日に可決成立、同25日公布、12月1日に施行されました。ところが当初、7万件のNPO法人が作られるだろうと想定しましたが、いまでも非常に少ないのが現状です。その理由等について記載しますと、
第一に、法人の手続きにかなりの労力が要ることと、法律にはどう解釈したら良いのかわからない部分が多くあることです。
たとえば法人取得の方法には2つありますが、当初、
- ひとつのエリアだけを対象とした事業は当該の都道府県に認可を得ること
- 都道府県がまたがる場合は中央の内閣府に認可を得ること
となっていましたが、法務局からクレームがつきました。法人登記は法務局の仕事であり、「都道府県や内閣府が認可するのは問題だ」として認可か承認かわからない「認証を得る」となりました。はたして「認証とは何でしょうか」。
それだけに、NPO「特定非営利活動法人」はなんともあやしい団体になってしまいました。であっても、法人であります。そのため内閣府(都道府県)に約4ヶ月、法務省へ法人登記、税務署(国税・県・市町村)への届け出が必要です。法人を登記する行為ひとつをとっても、行政の認証が優先なのか法務局の登記が優先なのかはっきりしなくなってしまいました。
第二は、法人となった後に事業報告書や収支計算書を作成し提出しなければならない義務を負い、これに負担を感じる団体が多いことです。
しかし、法人格を持つのですから当たり前なのですが・・・。では、法人格のもつメリットを考えてみましょう。
- 契約の主体になれることです(法人名で銀行口座がもてる、法人名で資金の調達・借入ができる、法人名で事務所の賃貸契約ができる、職員と雇用契約ができる、不動産登記ができる等々)。
- 受託事業や補助金を受けやすくする(企業や自治体の補助金が受託できる、公的機関の指定事業者として資格が得られる、助成金が受けやすくなる等々)。
- 公的な施設を利用しやすい。
- 社会的な信用が生まれる(団体と個人の資産が区別できる、組織基盤が強固になる等々)。
第三は、税制上のメリットがあまり無いことです。欧米では寄付金の税制控除が認められているため、「税を支払うより寄付金にした方が社会のため」という人が多くいます。近年ではウィンドウズで有名なマイクロソフト社の会長ビル・ゲイツが50億円からの寄付をNPOにしたことは耳新しい話題です。日本では長い間、「官は公益、民は営利」という2つの分類で基盤をなしていた国家制度を作ってきました。NPOは、「民も公益を受け持つ」体制に変えることですから、徐々に変える必要があります。昨年の国会で一部、寄付金の控除制度が確立されました。多くのNPOが出現することで体制を変えていく必要があります。
第四は、法人格が無くても当面活動を続けるのに支障がないと判断する団体が多いことです。
NPOと言うと無償のボランティア団体のようなイメージをもっている人がいますが、これは間違いです。報酬を受け取ってサービスを行っても構いません。非営利とは、儲けないという意味ではなく、剰余利益を分配してはいけないということです。すなわち、「株主配当の無い会社」というように考えて良いでしょう。法人格を持てば、「社会的に正式に認知された団体」として活動の幅も広がります。法人格を取得すれば、自分たちの組織をきちんと対外的に説明できますし、国際的にも信用がつくことになります。
まだまだ多くの課題がありますが、紙面の都合上絞って提起しました。
都市防災研究会は、今春には認証されると思います。作った以上簡単には団体を解散することはできません。そのため、会員の皆さん一人一人が、閉塞感の漂う日本に活力ある新しい社会基盤を作るためにも、NPO法人を取得し飛躍しようではありませんか。