第31号b(2003年)

第3回世界水フォーラムの参加から学んだこと

川辺 浩司

水タンク 3月16日〜23日にかけ、京都・大阪・滋賀において「第3回世界水フォーラム」が開催されました。この会議では、国連教育科学文化機関(UNESCO)や世界保健機関(WHO)などいろいろな機関がこのフォーラムに参加し、生命の源である水についていろいろな角度から討議する場となり、先進国だけでなく発展途上国など、世界各国から2万人以上の参加者が訪れました。又今回のフォーラムでは、NGOや市民などの多様な立場の方々の参加が可能になり、「官民の連携」という視点からも非常に意義のあるフォーラムになったようです。

 フォーラムの中でいろいろな分科会の話を聞いてきましたが、どの分科会でも参加者全員が真剣に水問題に取り組んでいこうとする気持ちが感じられました。私は特に水と教育について関心がありその分科会を見学しましたが、そこでは水問題を考えていく上で、発展途上国の人々にどのような教育が保証されなければならないのかなど、非常に興味深い議論が展開されていました。私は水と教育を中心に見学しましたが、この他にも300を超える分科会が8日間の中で行われました。それは水問題が世界共通の問題であり、又世界各国がお互い協力し合いながら取り組まなければ真の解決策を導き出すことにはならず、そして真の行動へと移すことにはならない問題だからだと思います。

 私は、Youth Water Japan(以下YWJと記す)という団体に昨年の11月ごろから入っています。このYWJは、次世代を担う若い世代が、水問題解決に向け議論し実践していこうとする、主に札幌・東京・名古屋・京都・福岡の学生が中心になって活動している団体です(社会人の方も協力して頂いています)。今回のフォーラムでも、プレセッションとして14日から多くの学生や社会人が集まり、水問題について話し合いました。このプレセッションでは「水と開発」「水と文化」などに分かれ、各分野でいろいろな視点から水問題について考えました。

 私が参加した「水と文化」では、水のまち貴船を歩くツアーが開催され、貴船口から貴船神社まで歩いている時に耳に入ってくる川の音、そして貴船神社の宮司の方のお話をお聞きし、参加者の一人一人が日本文化と水のつながりを強く感じ、そしてきれいな水をこれからも残していかなければいけないことを再確認する貴重な時間になりました。そして貴船を歩いた後には、具体的に私達一人一人が水問題解決に向けて何ができるかについて話し合い、参加者は水について常に考える姿勢を再確認しました。

 又フォーラムでは、18日に「Youth World Water Forum」という分科会を開催し、私はこの分科会には別の発表で参加することはできませんでしたが、世界各国から約400名が集まり、水問題について議論し、参加者は非常に貴重な時間を持つことができたようです。この様な世界各国の若者が、水問題解決という共通の目標を持ち、お互いいろいろな考え方や意見を交わすことは、水問題解決という問題だけでなく、いろいろな可能性を含んだ大きな行動になると思います。

蛇口 今日本において、私達は蛇口をひねれば水が出てくるという生活を送っています。ですから水問題という言葉を見てもあまり実感はないかも知れません。しかし、いざ蛇口をひねっても水が出てこない、水が簡単に手に入らないという事態を考えてみると、水問題についてこのまま無関心ではいけないと思います。そしてそれは防災についても同様のことが言えるのではないでしょうか。大地震等の色々な災害について、実際に体験していない方達は防災という言葉に無関心になりがちです。しかし、いざ災害に遭遇したとき、無関心であったことが、消火の水や、避難生活における飲み水や生活用水の確保など色々な困難な状況につながることになるかも知れません。その様な事態を招く方達が一人でも少なくなるように、都市防災研究会の活動がより多くの方達に理解される必要性を感じます。

 今回第3回世界水フォーラムという国際会議に参加する機会を持つことができ、非常に良い経験になりました。そしてこのフォーラムで最も強く感じた点は、「多くの人々が、一つの目標に向かい協力する力の大きさ」です。私はこの「力」が色々な可能性を生み、そして世界各国の多くの人々を救うことになると思います。21世紀は「水の世紀」と言われていますが、水問題について世界各国で取り組んでいく姿勢をこのまま継続していけば、必ずそれが水問題解決に向けて大きな「力」になると思います。又防災を考えていく上でも、行政やその他色々な市民が協力し合うことで大きな「力」になり、防災に強いまちづくりへと発展していくと思います。このフォーラムで学んだことを、今後自分自身の色々な活動に活かしていきたいと考えています。


防災と福祉について地域の対応

港南区防災拠点運営委員会協議会 会長 早速 晋

 平成7年1月17日未明に発生した阪神・淡路大地震は、近代都市の脆弱性をまざまざと見せつけるとともに、高度に発展した近代社会における国や地方公共団体の危機管理体制のあり方や市民一人一人の防災意識や防災に対応する諸活動など、数多くの問題や教訓を提起しました。
横浜市では、この前後から従来の防災計画を抜本的に見直し「安心・安全・安定」都市の実現を目指し、「地域防災力の強化」「行政の即応力の強化」及び「都市防災基盤の整備」を三本の柱として、数々の震災対策を打ち出されました。
この中で、地域の住民に密着する問題として、「地域防災力の強化」の面では『災害に強い人と地域づくり』をスローガンに掲げ、市民の一人一人が「自らの身は自ら守る・皆の町は皆で守る」との認識を持って、地震時に落ち着いて対応できる習慣を身につけることが重要であるとの見地にたって、 [1]地域防災拠点の整備、[2]広域避難場所の整備、[3]備蓄計画、[4]防災ハンドブック・パンフレット・防災フェア等による啓発、[5]防災訓練の実施等の重点対策が示され、住民と行政とがパートナーシップの関係を構築して防災と福祉の問題に取り組んでいるところであります。

[1]地域防災拠点の整備

震災時における避難方法
震災が発生した場合、先ず身の安全を守るよう行動すること。
    1. 近くの学校や公園・空き地など広く安全な場所に避難する。
    2. 家屋の倒壊などにより自宅に戻れない場合は指定された小・中学校に避難する。
    3. 地震により火災が多発し炎上拡大するような場合は、輻射熱から生命・身体を守るため一時的に避難する。
震災時避難場所の事前指定
震災時避難場所として、市民一人一人に身近な小・中学校を防災拠点として指定し全世帯に避難所マップが配布されている。

地域防災拠点の整備
防災拠点に指定された小・中学校には校庭や空き教室を利用し、防災備蓄庫が設置され人命救助のための防災機材(エンジンカッター・発電機・担架・移動式炊飯器)、水、食料等が備蓄されており、家屋の倒壊などにより自宅に戻れない市民のために一時的な避難生活が出来るよう設置されている。

地域防災拠点運営委員会の設置
防災資機材を活用して救助・救出など地域住民が相互協力により防災活動の促進、安全かつ秩序ある避難生活が出来るよう各小・中学校に防災拠点運営委員会が設置されている。

地域医療救護体制の整備
大規模地震等の災害時に限り、初期対応として必要な期間(原則として発災から3日間)被災負傷者等の応急医療を行なう救護所として、中学校区に一箇所整備する。

[2]広域避難場所の整備

横浜市では地震による大火災が多発し炎上拡大した場合、その輻射熱や煙から市民の生命・身体を守るために避難する場所として、広域避難場所を指定していますが、昭和47年の指定開始以降数回にわたり見直しを行い、平成11年度末現在で119箇所が指定されている。

[3]備蓄計画

横浜市では食料・水・救急用資材などについては、市内449箇所の地域防災拠点及び方面別備蓄庫(6箇所)、区役所(18箇所)、消防出張所(33箇所)に分散して備蓄されている。
    1. 備蓄食料の内、保存性の良い乾パンには食べやすいように割れ目を入れ水飴をつけるように工夫されており、「あったかおかゆ」「あったかミルク」など、お年寄りや乳児が食べやすいような食料が備蓄されている。
    2. 水の確保については、配水池、循環式地下貯水槽で、発災から3日目までは1人当り1日3リットル、4日〜7日までは1人10リットルの飲料水が確保されるよう整備されているとともに水缶詰が備蓄されている。そのほか地震に強い配水幹線から耐震管路を布設し、その先端に緊急給水栓を取り付けて給水するよう用意している。
    3. 簡易水質検査やポンプなど設置の助成を行なって災害応急用井戸の指定を行なっている。

[4]防災ハンドブック・パンフレット・防災フェアなどによる啓発

 防災ハンドブック『災害!我が家の危機管理マニュアル』を全戸配布されると共に、各種パンフレット等により地震に対する日頃からの備えや市民の心得を啓発している。また、毎年開催されている『防災フェア』では、パネル展示や資機材取扱い実習、防災用品の展示、消防局のはしご車・起震車・煙体験施設等により体験訓練を行なっている。
 各防災拠点運営委員会により、その地域の避難経路をくまなく歩いて、道路の幅員、坂道の勾配、塀の倒壊のおそれ、階段の位置・状態、消火栓の位置等を詳細にわたり調査し『地域防災マップ』を作成し、運営委員会・区役所・消防出張所にて保管し有事の時役立つよう準備している。

[5]防災訓練の実施

 横浜市では1年を通して定期的に防災訓練を実施し、災害対応力の向上と各機関との連携体制の強化を図ると共に、地域防災拠点運営委員会、町の防災組織、事業所の防災組織などの育成と自主防災活動の向上を図っている。
  1. 防災とボランティアの日 防災訓練
    1月17日の「防災とボランティアの日」を中心として期間内に、ボランティア関連行事、地域防災訓練、職員訓練を実施し、市民の防災意識の高揚と自主防災活動の向上を図っている。
  2. 鶴見川関連水害対策訓練
    台風・集中豪雨などの風水害期を控え、5月〜6月にかけて河川の氾濫、低地での浸水、崖崩れなどの発生に対処するため防災関係機関及び住民と連携した訓練を実施している。
  3. 横浜市総合防災訓練
    9月1日「防災の日」に横浜市防災計画と七都県市合同防災訓練大綱に基づいて、関係都県市、防災機関、住民が一体となって総合的な防災訓練を実施し市民の防災意識の高揚、災害対応能力の向上及び防災関係機関の連携強化を図っている。
  4. 各防災拠点運営委員会の防災訓練
     9月の期間内に各防災拠点毎に地域住民に幅広く呼び掛け、避難所本部の設置、避難誘導、避難者名簿の作成、避難者の被害状況の把握、備蓄庫に保管してある防災資機材の取扱い、移動式炊飯器による炊き込み、食料・水などの配給、消火器取扱いなどの各種訓練を実施し住民の災害対応力の向上を図っている。
  5. 都市防災研究会が中核となり「防災と福祉」の問題に取り組み、関係機関・関連業者・地域住民が一体となって『防災と福祉のつどい』或いは『親子防災デイキャンプ』などの催しを企画開催し、防災と福祉の問題を啓蒙するよう活動している。 
以上、防災と福祉について地域の対応のあり方、活動の概要を申し述べましたが、災害時に対応できるようにするためには、住民の一人一人が防災訓練或いは防災と福祉の催しに参加し、普段から防災意識の高揚と体験を積み重ねておくことが大切です。


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