第31号a(2003年)

NPOを目指すにあたって
若い力の結集が必要

都市防災研究会 代表  脇口 育雄

 当会も設立されて、はや8年を迎えようとしています。この間、様々なセミナーやイベントが実施されました。200余名会員の協力によって、それぞれの「催し」が概ね成功裡におわりました。

 今後はその実績と知名度によって、ますます「催し」「誘い」が増してくることはかなり高い確率になると申せましょう。しかし今の組織と運営にもやがて限度が生じて参りましょう。もう一歩前進するにはNPO化が必要となってきます。NPO化によるメリット、デメリットは機会ある毎に討議討論を重ねて参りました結果、やはりNPO化を目指そう!の意見が多くなりそのための作業が鋭意なされている現在であることは各位ご高承のことと存じます。(三浦一郎委員長他4名、内閣府にて、定款他のご指導を頂きました。)

 NPOが実現されれば自ずから定款及び会則に沿って運営されて行くわけですが、とりわけ行政との接点も多くなったり、自治会、各種団体等からの講演やシンポジウム、セミナー、イベント他の依頼が現今より多くなってくるとの思いは前述のとおりです。私達の会には、その筋に関してはプロフェッショナルの方もいれば、全くのアマチュアの方もいるわけですから、依頼に応じるためには当会の体力を勘案し、きめ細やかな峻別方法(検討)を講じなければならないと思います。

 特に行政との「協働」には細心の準備と注意が肝要です。と申し上げるのも(5月25日)開催のセミナー「地域防災拠点をどう運営するか」において、タイトルと講演内容が大きく変わっていたため受講者の多数から非難の声が上がり、その声が行政にまで持ち込まれた事例がありました。
 主催者、特に代表たる私は深い反省と陳謝の念で一杯であり当日の受講者と当局にお詫びを申し上げる次第です。
※その原因は講演者と事務局、司会者との連絡ミスによるものでした。この件に関して、6月12日私他3名、当局へ陳謝の意を申し上げるべく参上いたしました。そしてご理解を賜りました。

 次にNPOが認定されても、当会はあくまでもボランティアの団体であることには些かの変りもありません。ただNPOになれば収益事業ができ且懐が潤うとの誤った幻想的な思いこみがあるやに風聞いたしておりますが、ゆめゆめお間違いの無きようお願い致しておきます。

 さて、表題にありますとおり、NPOになれば法人という性格上、今以上に会の継続性が肝要となります。必然、ボランティアマインドに富み、柔軟性のある若い活力が必要になって参ります。つまり20〜40歳代の方が入会されれば相当の力強い会になって参ります。それがためには当会が魅力ある団体であることが前提となりましょう。

 しかし理想を追っても座していては空念仏に喫することになりますので現会員が積極的に新会員増強に力を入れて頂くことにもなりましょう。いづれにしてもNPO化には何よりも会員相互の「友愛と信頼」そして「ボランティアマインドの向上」をも目指さなければならないと存じます。

 皆様方のますますのご支援とご協力を願って擱筆いたします。

防災と法  第3回

関東学院大学講師  三浦一郎

予防から復興まで

 5月29日に開かれた政府の中央防災会議(会長・小泉首相)において東海地震への総合的な取り組みを初めて示した「東海地震対策大綱」が発表されました。その内容は、住宅の耐震化促進などの予防策から被害発生直後の応急対策、復興支援までを網羅しています。つまり、地震発生を事前に予知出来なかった場合であっても対応できる体制の整備を促しているのです。

 地震が予想された場合の対応は「大規模地震対策特別措置法」に規定されていることは前回お話しました。しかし、大震法地震の予知の現実性、首相の警戒宣言発動までのプロセスのタイムロス、警戒宣言の社会生活への多大な影響等の問題が指摘されています。この点、今回の大綱は、例えば、警戒宣言後に営業停止になる鉄道について震度6弱以上の地域以外は、事業者の安全判断に基づき運転が継続されるなど帰宅困難者問題が考慮されています。また、病院や小売店舗についても耐震性の確保を条件に今までの原則閉鎖も見直しています。さらに、これまで一段階だった観測情報を、異常データの程度により二段階に細分化し、学校における児童の警戒宣言前の帰宅等も検討しています。観測情報が程度によって細分化されることは、警戒行動の細分化につながると思われますが、児童の帰宅と交通機関の営業停止などは、むしろ、同時でないほうが現実的であるといえるでしょう。

建築物の耐震化促進の有効性

 大綱の予防策では、学校、病院などの公共建築物を中心に耐震判断リストの作成と発表を予定しています。この点、先の5月26日、東北地方で震度6弱を観測した三陸南地震において被害が最小限で抑えられた要因として、1978年6月12日の宮城県金華山沖を震源とするマグニチュードM=7.4の仙台市を中心に死者27人、住家全壊1,183戸、半壊5,574戸の被害を発生させた宮城県沖地震の教訓による建物の耐震化促進の成果が挙げられているように、建築物の耐震化は確実な地震対策です。

 思うに、東海地震を予知しない場合の経済被害が37兆円と中央防災会議において報告(2003年3月 18日)されていますが、東海地震において全ての住宅が昭和56年(1981年)以降の新しい耐震基準になれば建物倒壊の想定死者数が6,700人から1,700人に激減するとの試算値が示すように地震対策は不確定な予知中心から現実的な耐震化などの具体的予防策中心へシフトしていくべきではないでしょうか。

 今回の「東海地震大綱」は、予防策や警戒宣言後の対応などに今まで以上に「現実的対応」の視点が含まれているといえるでしょう。


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