予防から復興まで
- 5月29日に開かれた政府の中央防災会議(会長・小泉首相)において東海地震への総合的な取り組みを初めて示した「東海地震対策大綱」が発表されました。その内容は、住宅の耐震化促進などの予防策から被害発生直後の応急対策、復興支援までを網羅しています。つまり、地震発生を事前に予知出来なかった場合であっても対応できる体制の整備を促しているのです。
地震が予想された場合の対応は「大規模地震対策特別措置法」に規定されていることは前回お話しました。しかし、大震法は地震の予知の現実性、首相の警戒宣言発動までのプロセスのタイムロス、警戒宣言の社会生活への多大な影響等の問題が指摘されています。この点、今回の大綱は、例えば、警戒宣言後に営業停止になる鉄道について震度6弱以上の地域以外は、事業者の安全判断に基づき運転が継続されるなど帰宅困難者問題が考慮されています。また、病院や小売店舗についても耐震性の確保を条件に今までの原則閉鎖も見直しています。さらに、これまで一段階だった観測情報を、異常データの程度により二段階に細分化し、学校における児童の警戒宣言前の帰宅等も検討しています。観測情報が程度によって細分化されることは、警戒行動の細分化につながると思われますが、児童の帰宅と交通機関の営業停止などは、むしろ、同時でないほうが現実的であるといえるでしょう。
建築物の耐震化促進の有効性
- 大綱の予防策では、学校、病院などの公共建築物を中心に耐震判断リストの作成と発表を予定しています。この点、先の5月26日、東北地方で震度6弱を観測した三陸南地震において被害が最小限で抑えられた要因として、1978年6月12日の宮城県金華山沖を震源とするマグニチュードM=7.4の仙台市を中心に死者27人、住家全壊1,183戸、半壊5,574戸の被害を発生させた宮城県沖地震の教訓による建物の耐震化促進の成果が挙げられているように、建築物の耐震化は確実な地震対策です。
思うに、東海地震を予知しない場合の経済被害が37兆円と中央防災会議において報告(2003年3月 18日)されていますが、東海地震において全ての住宅が昭和56年(1981年)以降の新しい耐震基準になれば建物倒壊の想定死者数が6,700人から1,700人に激減するとの試算値が示すように地震対策は不確定な予知中心から現実的な耐震化などの具体的予防策中心へシフトしていくべきではないでしょうか。
今回の「東海地震大綱」は、予防策や警戒宣言後の対応などに今まで以上に「現実的対応」の視点が含まれているといえるでしょう。
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