風のささやき

溢れる悲鳴

声にならない悲鳴で街は溢れている
誰もが込み上げる悲鳴に堪えている
一方的に頭に入り込み鳴り止まない
頭痛のように疼く誰かの悲鳴を抱え
騒音に身をさらしている

満員の人に軋む電車のレールの音
せかす車の繰り返すクラクション
踏まれたブレーキの路面に食い込む音
交差点を歩く足音は透明な軍隊
ビルを切る風は鈍い拳の風圧の音
空騒ぎの笑いは虚ろな響き
止まない話し声は慰めの無い喧騒
好き勝手なことを伝える歌が空を占拠して

塞ぎようもない音を耳に抱えて
もういたたまれなくなって
街は暴力的な叫びに溢れる
口々に意味の取れない叫びを発する
そこに取り交わされる会話はなくて

人に囲まれ突然の叫びに怯えながら
通りすがる人々の顔色を窺っている
耳障りな叫びがいつまた耳に届くのか
心構えをしたつもりでも驚いてしまう
心はパンパンに膨らんで
破裂しそうになっている
いつしか自分が裂かれて行く
悲鳴と重なって空へと上るとき

その悲鳴の中で血の気を失わない
心の強い有様に驚嘆をする
僕はそうは成れないそうは成らないと
声にならない叫びをあげる