風のささやき

繰り返し

子供が石鹸をつけて手を洗っていた
保育園で教えられたのか
指の間も洗い
手の裏にも石鹸をつけた

それから僕に蛇口を捻るように命じると
出てきた水で手を流す
冷たいのか時々は手を引っ込めて
「もういい?」
「もういい?」
と聞いてくる

まだまだ石鹸はついたままだ
僕は自分の手に子供の手を治めて
水で石鹸を洗い流した

子供は綺麗になった手を拭いて
満足そうに戻っていった
また大好きなテレビ番組を眺めるために

石鹸が落ちているのかどうか
まだそれを確証するだけの
経験を持ち合わせていないから
それができないことはきっと不思議ではない

大人には当の昔にできてしまったこと
出来ないことが不思議
いつにそれを覚えたのかさえ記憶に無いほどに
けれどそれが学んできことだと
子供を見ていると分かる

こんな風に指の間を洗うことも
手の裏を洗うことも少し前までは出来ないでいた
親の知らないところでも色々と学んでいるんだ
楽しいだけに見える
君たちにもきっと色々な苦労があるね

毎日の繰り返しの中で
身に着けて行くことが沢山ある
同じように見えている毎日の繰り返しは豊かだ

毎日の出来事を
一つ一つの行いを大切にしようと
その富に浴するために
生きている限り
学び始めることは尽きないから