風のささやき

僕は何だろう

僕は人波を歩いている夜の街
賑やかな飲み屋街の騒めきを
皆楽しそうだ話し声が渦を巻く
その渦の中で僕は何だろう空っぽで寂しくて

僕もさっきまでは楽しそうなふりをしていた
人波の波の一つ黒い闇の上に漂う
何の異なることのない少し赤い顔をしている
大声で騒ぐ波波波だった

絞り出していた笑い声の底には
本当は寂しい叫びがあることを
けれども声にして人に伝える術も無くて
それよりも大きな声音でかき消した

ねえ寂しさはどうしていつでも
胸の中にあるの消えないの
どんな友達よりも長く連れ添って
でもちっとも仲良くはなれなくて

一人歩く人波イルミネーションが目に鮮やかに痛い様
そんなにも飾らなくても良い物を
何かを光で隠そうとしているみたい
暗闇をそこだけ塗り込めようとしているみたい

人波もやがては闇に飲まれて姿を消して
地下鉄の入口ビルの中に細い路地裏に
せめて誰かと抱き合い眠れば
落ち着く気分もあるのだろうか

僕は何だろうやがて姿を消すために
人波に蹴られ揉まれ溺れている
僕は何だろう何ができてこれただろう
僕は何だろうここにいる僕は何だろう