風のささやき

その後の午後に

紅茶を飲んでいる
あなたの口元を眺め
漂う香りに胸を満たされる

秋の静かな午後
何を見るでもなく
窓の外を眺めるあなた
その横顔を眺める僕がいる

夜遅い駅で電車を待った
その顔を思い出しながら
また新しい横顔を
秋の筆致で心に描き直す

顔を会わせられない夜にも
糸電話のように心は繋がっている
傍らに息遣い
距離を感じない程に

かわるがわるあなたと
水をあげる鉢植えは
こんなにも大きくなった

二人の間にも 日々
育って行くものが
確かにある

毎日の会話に育まれ
明日に見る夢のかけら
すれ違いの焦り
他愛ないことも
全てを養分として
ゆっくりと伸びるものだから
焦らずに

いつしか寄り添うことが
似つかわしい二人となって
物思うときには肩を寄せ合う
支えとして
何も思わないときにも
そばにいることで温もりを感じる

まるで僕の心の読み人だ
あなたは目を合わせ微笑む
偽る必要はない
無理はしない
急ブレーキの揺れも
レールの軋みもない

いつしかあなたの紅茶の好みも覚え
その好きな香りをしみ込ませた僕は
それからまた一つ
あなたの好きなことを覚える
心を重ねる
明日を楽しみにする