風のささやき

止まり木に

心はいつも乱れて止まないね
 荒れ狂う波に投げ出されて
  息つく暇を失くしてしまうようだ

その狂濤が終わらないうちに
 容赦なく次の波が押し寄せて
  塩辛い水に口を塞がれる
   新たな煩いが額に押し当てられる

乾かぬ涙の上に
 重ねる涙の道筋が
  あなたの心を強くして
   いつしか確かな道となって
    あなたの歩く轍となればいい

その遥かなる道は
 幸いの小道へと連なるように
  初夏の朝の陽ざし
   木漏れ日の道
    カモミールが咲き
     さりげなく

その日に連なるために
 あなたが心を休める日もある
   僕は荒れた海の
    止まり木になろうと思う

どこであなたが迷ったとして
 疲れた羽を休ませる止まり木に
   あなたの行く先々に
    海原に姿を見失わない

あなたの重みを受け止める
 沈まない浮力
  折れないしなやかさ
   つかまる足を傷つけないよう
    滑らかな手触りで

あなたがいつしか
 荒れた海の顔にさえ
  穏やかさを感じる
   心の強さ持った時には

僕はもう役割を終えて
 止まられることもない
  海の木くずとして漂うだけで

あなたの飛び立った
 空に雲を眺める
  時々はあなたの顔をそこに描き
   暖かな太陽にお願いをする
    あなたの頬に陽ざしの唇が
     いつでも当たっていることを

僕は止まり木
 あなたの喜びも
  一時はそこに止まり
   一緒に心を震わせることが出来ればと