まだ残る乾いた葉がカサカサと鳴って
一日の終わりを告げた
抱かれた子供は柿の実を指さした
その実も夕日のように熟れていた
指先の向こうには一番星がいた
その上には薄っぺらな月が
うす紫の空に笑みを浮かべる
楽しそうに話すことをやめない子供
言いたいことが心に溢れて
きっと言葉が追いつかない
それだけ不思議な世界 新鮮な景色
その口元にも夕暮れが訪れて
少しだけ考え込んだ子供
夕暮れが薫る 燻されたように
知らないところで惜しげなく
落ち葉を焚火にくべている
夕暮れは おばあちゃんの梅干しのように
懐かしいすっぱさが 口に広がる
誰もいなくなった空き地に
独り見ていた 夕焼けの心細さ
もう戻らない日々が 胸に迫る
夕暮れの香りがして
手を引っ張られた気がする
もう帰ろうよ あの日へと
難しい顔には不思議そうな視線
すぐにでもあの笑顔に戻れば良いと
それは僕の童心
戻れるものならば帰りたいけれど
夕暮れの寂しい香りを覚えてしまったから
それが今ではとても難しい
夕闇に建物も輪郭をなくす
自分もなくしてしまいそうな不安に
誰かの手を取る 人につなぎとめられる
僕は饒舌な子供を胸に
その重さの今を
しっかりと受け止めようと
ぎゅっと抱き直す
子供の香りを嗅いでいた