風のささやき

心通わせるときに

たくさんの言葉を感じた
何も語りかけられていないのに
春の風の止むことのない
おしゃべりのように

すっかりとその表情がわかった
うつむいたままでいたのに
透き通った湖が
見逃さずすべて写し取るように

すべてが自明の理
こんなにも分かりやすいものが
この世の中にあることが
不思議な位に

黙ったままでも
心が通じることの楽しさは
どれだけ僕の心
強く奮い立たせることだろう

いつでも背中には
暖かな太陽のような手のひらを感じて
喉元を通り過ぎる言葉には
新緑の芽吹く勢いが宿って

幾千もの説明の言葉も
幾万もの試みの行いも
必要とはしない
たった一つの目配せ以外には

それぞれの思いの森に
深く歩み疲れて戻ってくるだけ
わずかばかりでも
分かち合う木の実を携えて

心通わせるときに流れ出す
小鳥の羽の落ちる音さえ
やかましくも思える
優しく静かな音色

僕はその音に聞き入り
豊かさを増すだけ
あなたの胸から流れ出して
終わりを告げることのない