風のささやき

見悶える日に

人はべっとりと気持ち悪いよ
僕の目の中で蒼や翠に点滅するから

紅い風船のように急に顔を膨らませて
破裂したかと思うと
野太い怒鳴り声を響かせる
そうかと思えば
腐った蜂蜜のような唇を歪ませて笑う
口の中には裏腹な舌を
気分のままに身もだえさせて

僕の心臓はその度ごとに
針を刺されて悲鳴を上げるから
僕はいつでも心臓に手を当てて
その時を警戒している
たとえ夜のすべてが寝静まる闇の中でさえ

何故なら夢にも
人がべっとりと
気持ち悪くへばりついてくるから

狡賢そうな人の目は
左右バラバラに動いて
落ち着きもなく空に飛んでいくよ

汗ばんだ鼻筋からは
当たりかまわず獣の匂いを呼吸しながら
興奮しきった猿のように
跳ね回り続けている

差し伸べられた青白い手を
ホッとしてつかんだら
ただ長い腕が伸びているばかり
その先の顔は暗闇に飲み込まれたままで

痩せこけた顔が
蛍のように明滅しながら
暗いランプの下で読む本は
憎しみや敵意の言葉で一杯だ

僕の唯一の武器は
薄ら笑いと卑屈なお世辞の言葉
格別の緊張の中で僕も死に物狂いなのですが

そんな自分を恥ずかしく思い
僕はいつでも赤い顔をして
屈辱の涙を
誰も見ていないところで拭うのです

べっとりと気持ち悪い人の世を
生き永らえる術にだけは長けて
気持ちよく生きていく術は
未だに見つけられないままで