風のささやき

ある日

何気ないあなたの言葉は
いらだちがちな僕を
優しくしてくれた

賑わい始めた夜の街
迷路のような顔の上を家路へと
久しぶりに
明るい心持ちで歩いた

あなたの微笑みと
今日の小さなやり取りを
何度も思い出して
取りこぼさないように
胸に大切に抱えた

暗い路地には
一つ二つと街灯がにじみ
暗がりに潜む盗人たちが
かっぽしだすから
心の大切なものを
奪ってしまおうと
疲れうつむく隙を狙って

家に帰りつけば
今日のあなたをまた開けてみる
深み行く夜に
ピアノの音色を探るように
その言葉に耳を傾けながら
やがて穏やかな眠りのなかへ
微笑むあなたの夢を見る

その夢が胸にとけこめば
優しい気分のままに
新しい一日を
目覚めることが
嬉しいから