風のささやき

ギターは飴目当てでね。Shimbo氏、音楽一家への道遠し

 上の双子の子供たちが3歳になるときに、ボーナスで二人に子供用のギターを買ったと言うShimbo氏。三歳になったら、ギターを教えるのだと、子供が生まれた時から決めていたのだという。三歳までに習わせなければ、子供には絶対音感がつけられないと考えていたのだという。
 
 思えば、子供たちへの英才教育は、0歳の頃から始まっていた。子供達には小さいうちから、バッハを聴かせて音楽の才能を開花させるのだと、CDレコーダーを買い、バッハをかける。するとハイハイでCDレコーダーに群がって来る子供たち。もちろん、音楽に興味があるわけではなく、CDの機械そのものが面白いので、それを弄くりに来るのだった。そうして、何度もボタンを押され、床にたたきつけられ、壊されたCDレコーダーの数々。ベタベタの手で汚された、バッハのCD。もちろん、ついぞ、子供たちがバッハに興味を持つことは無く、いつの間にかCDレコーダーもShimbo家からは無くなっていた。
 
 そうして、ギターもまた然りだった。子供たちはギターに全く興味を持つことは無く、春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎた。そうしてShimbo氏の血筋か。ヒーロー物のテレビに夢中になり、ヒーローになり切って、Shimbo氏に蹴りやパンチを浴びせかけるのであった。
 
 そんな子供たちであったが、4歳を過ぎ、少し状況が変わって来た。ここのところ、週に1、2度、ギターを手にするようになったのだ。けれど、それはもちろんギターが楽しいからではなく、ギターが終わった後に貰える、飴を目当てのこと。例えばこうだ。
 少し小腹が空き、飴を食べたくなったShimbo次兄。ギターを手に、アピールに来る。
 
  「ねえ、ギター弾こうよ」
  もちろん、飴狙いとわかりつつも、それに喜ぶ親ばかのShimbo氏。
  「いいよ、じゃあ練習しようか」
   椅子に座り、ギターを手に向かい合う二人。しかし、Shimbo次兄の目は、既にテレビに向いている。
  「じゃあ、最初の、ミの音から、こうね」と教え始めるShimbo氏。もちろん、Shimbo次兄の目はテレビにくぎ付けで、上手く弾ける訳も無い。
  「そうじゃなくて、こうやるの」 と子供の指を持ってギターを弾かせるShimbo氏。
  「そう、上手、上手。じゃあ、次は、ファの音ね。ここを押さえて」 とギターを弾いてみせるShimbo氏。もちろんShimbo次男はそれを見ておらず、またShimbo氏に指を動かされる。
  「そう、上手、上手。次は、ソの音ね。難しいよ」
 その頃には、もうギターに飽きているShimbo次兄。
   「もう疲れた。もういい?」
 そうして、ギターを手放し、飴を要求するのであった。Shimbo氏の親ばか心理を利用した、ちょっとした詐欺だ。

「いやあ、少しずつ上手くなっているよ。指が長いし、何か様になっている」
  そうShimbo嫁に話すというShimbo氏。傍目に見ていると、ちっとも進歩はしていないのだが。
「我が家ももう少しで、音楽一家になって、世界を演奏旅行で回ることになるね」とハーブたちに夢を語るShimbo氏。主に世界の街角で子供たちにギターを弾かせて回るのだという。もちろんShimbo氏は、マネージャー兼コーチ役だとのこと。
「親の欲目もここまで進むと手に負えないね」と、至って冷静なハーブたち。「子供たちをモーツアルトの再来と自慢しているらしいよ」と唖然としているのだという。
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