風のささやき

いつからか虫に聴き入る人となり

その日は友人とお酒を飲み
電車に乗りました

電車は途中までしか行かない物だったので
乗り換えのために少し風の冷たい
ホームで待っていました

電車の通らない静かなホームには
虫の声が聞こえてきました

やることも無く
その声にしばらく聴き入っていた自分

虫の声がこんな風に
胸に沁みるようになったのは
一体いつからだろうと
答えの出ない記憶を辿っていました

やがてホームに滑りこんできた電車の音で
虫の声はあっという間にかき消されました