風のささやき

仏にも初夏の風にも千手あり

初夏の風が頬に触りました
まるで柔らかないくつもの手が
優しく撫でて行くようでした

そのときには確かに
風の中にたくさんの手が
見える気がしていました

まるで千手観音に
たくさんの手があるように

風の中の手は僕に触れては
何か言葉を授けていき

けれど僕の耳はそれを聞き取るには
あまりにも無力

ただ柔らかく撫でつけられながら
風の中を歩いて行くだけでした