風のささやき

春立ちぬ爪先に見る紅の月

昼間の暖かさがそのままに残り
その夜は春めいた雰囲気が漂っていました

普段はしっかりと閉めるコートのボタンも
閉め忘れるほどでした

僕は友人と歩いていたのですが
彼が明るい空に気がついて指差すと
その爪先には丸みを帯びた月が
ほのかに紅色に明るんでいました

その暖かげな輝きに心までも
春の気配に染められていくようでした