雪の美しいのを見るにつけ、月の美しいのを見るにつけ、 つまり四季折々の美に、自分が触れ目覚めるとき、 美にめぐりあう幸ひを得た時には、親しい友が切に思われ、 このよろこびを共にしたいと願ふ、つまり、 美の感動が人なつかしい思いやりを強く誘い出すのです。 この「友」は、広く、「人間」ともとれませう。 また、「雪、月、花」という四季の移りの折々の美を現はす言葉は、 日本においては山川草木、森羅万象、自然のすべて、 そして人間感情をも含めての、美を現はす言葉とするのが伝統なのであります。 そして、日本の茶道も、「雪月花の時、最も友をおもふ」のが、 その根本の心で、茶会は、その「感会」、よい時に、よい友だちが集ふ よい会なのであります。 ノーベル文学賞受賞時の記念講演「美しい日本の私・その序説」 |