57 USPQ2d 1653
Litton Systems Inc.社 対 Honeywell Inc.社
アメリカ連邦巡回控訴裁判所
No.00-1241
2001年2月5日
特許
侵害−抗弁−審査経過禁反言(§120.1105)
原告のイオンビーム使用による光学フィルムの製造方法への補正は審査経過禁反言を生じさせる。その理由は、特許に必要な法的要件に基づきなされた減縮の補正は、審査経過禁反言を生じさせ、原告は、発明と看倣されるクレームにあらずとして拒絶されたのに対応して「イオンビーム光源」から「カウフマン・タイプのイオンビーム光源」に変更しており、また「彼の発明と看倣す云々」の拒絶は、明らかに米特許法112条の特許の法的要件に関係するからである。
侵害−均等の原則−一般(§120.0701)
侵害−抗弁−審査経過禁反言(§120.1105)
裁 判 手 続 など
手続−事前の裁定(予審)−一般(§410.1501)
審査経過禁反言が、係争のクレーム要素に対して適用されるとの判定は、侵害を主張する原告に対して、その限定についての如何なる均等の範囲をも認めないことになる。これは、先行技術を克服するための補正は、従前の訴訟において、その時点で公知の代替物全てを自動的には放棄しないとの“弾力的な”方法が採られた場合においても、然りである。それは、判例法には自由裁量が許され、該当問題に、それに反する裁決をすべきだと判断したとき、過去の判例法を適用する要はなく、現在の司法の権威<最高裁判所>は、審査経過禁反言の判定は、均等の原則の適用を完全に阻止するからである。
[3]手続−新規の審理;JMOL(§410.30)
連邦地方裁判所の裁決、即ち、契約関係への故意の干渉とそれに伴う経済的利得.を認めるJMOL判決の容認は取消されねばならない。その理由は、地方裁判所が、原告の特許クレームへの非侵害であるとのJMOL判決を下し、それ故原告は不法行為訴訟成立のための不法手段があったことの立証をクレーム侵害に依ることが出来ず、また本来、法廷は不法手段の事実関係判断のために不法行為訴訟を陪審員に提示すべきであったし、更にその不法行為訴訟に関するJMOL判決が実体的な事実の係争問題を裁決したこと自体が容認できないことであることである。
当該の特許−化学−光学フィルム
32,849(4,142,958の)に関して、Wei and Louderback(ウェイ・ラウダーバック)
の多重層の光学フィルム製造方法は、非侵害との裁決を確認する。
アメリカ地方裁判所からカリフォルニア中央裁判所、Pfaelzer, S.J.への控訴
Litton Systems Inc.社のHoneywell Inc.社に対する特許侵害と、更に経済的利得を予期しての契約への故意の干渉の訴訟。当時者双方が、原告の判決に続き被告の申請を一部認めた判断に対して、互いに控訴し、損害についての新規の審理が申請された。アメリカ連邦巡回控訴裁判所が、法的な判決を取消し、損害(39 USPQ2d 1321)の新規の審理を認めた。アメリカ最高裁判所が移送命令を認可し、判決を破棄し、Warner Jenkinson 社対Hilton Davis Chemical社の判決(41 USPQ2d 1865)に鑑み、再審のために差し戻した。再審では、地方裁判所の判決が一部容認され、一部取消され、差し戻された。(46 USPQ2d 1321)差し戻し後、地方裁判所は、略式判決でもJMOL判決でも、係争の特許については非侵害とし、被告に州法上の訴えにつきJMOLを認めた。原告が控訴。一部支持、一部取消し、一部破棄して、差し戻し。;
Bryson J.判事は、一部支持、一部反対で、反対については、個別の意見を述べた。
ワシントンDCのHogan & Hartson事務所のJohn G. Roberts Jr.氏とCatherine E Stetson氏、カリフォルニア・ロサンジェルスのBright & Lorig事務所のFrederick A. Lorig氏とSidford L. Brown 氏、NY州NYのPennie & Edmonds 事務所のRory J. Radding氏、ワシントンDCのPennie & Edmonds 事務所のStanton T. Lawrence V氏とCarl P. Bretscher氏が原告側控訴人。
ワシントンのFarr & Taranto事務所のRichard G. Taranto氏、ロサンジェルスの Sheppard Mullin, Richter & Hampton 事務所のGregory A. Long 氏とKent R. Raygor 氏、ニュージャージーMorristown所在ハニーウェル社(Honneywell International Inc. )のJohn Donofrio氏、ワシントンのFoley & Lardner事務所のGeorge E. Quillin氏が被告側被控訴人。
Mayer 裁判長に、Rader氏とBryson氏が巡回判事として。
Mayer, C.J.(判事・裁判長)
Litton社は、カリフォルニア州管轄アメリカ地方裁判所の判決、即ちHoneywell社がLitton社の再発行アメリカ特許No.32,849(849の再発行)、「多重層の光学フィルム製造方法」に関して非侵害であるとの略式判決及びJMOL判決、並びにHoneywell社からLitton社への州法上の不法行為訴訟、即ち契約関係への故意の干渉と、経済的利得を予期しての故意の干渉という訴訟の判決につき、控訴した。参照 Litton Sys., Inc.社 対 Honeywell, Inc.,社 No. CV 90-0093 MRP (C.D. Cal. 2000年1月31日) フェスト社 対 燒結金属工業 234 F.3d 558, 56 USPQ2d 1865 (Fed. Cir. 2000年)の最近の判決に鑑み、JMOLとしては均等の原則に基づく侵害はなく、地方裁判所は、本来州法上の訴訟として陪審による審決がなされるべきところを不適切にも、重要な問題に判定を下したものであり、ここに、一部支持し、一部取消し、一部破棄し、差し戻す。
背景
本訴訟の事実的な背景は、Litton Sys., Inc.社 対 Honeywell, Inc. 87 F.3d 1559, 39 USPQ2d 1321 (Fed. Cir. 1996年) (Litton I)に詳述されている。従って、ここでは当控訴に必要な程度に論ずる。1979年に、Litton社は、アメリカ特許No. 4,142,958 ('958 特許)を取得したが、そのクレームは、特定の光源に限定せずに、イオンビームを用い光学フィルムの多重層をスパタリング方式で貼り付けることであった。1985年再発行を求めた時に、先の'958 特許は自明性の故に無効になったので、多重層が異なる屈折指数を持つものとして提示する補正を行った。審査官は、'958 特許にて開示されたものを含めた先行技術から自明であるとして、2度拒絶した。Litton社は、次ぎの3点を特に強調した。
Kaufmanタイプのイオン光源を用いていること。
Kaufmanタイプのイオン光源を用いて、ビームを出すと予期せぬ結果が得られた。
クレームはKaufmanタイプのイオン・ビームに限定され、他のビームガンを使用するものは含まないこと。
審査官は、Kaufmanタイプのイオンビームに限定するとの条件をつけて、‘849再発行特許が、補正後に認められた。
1981年、上記の事象が起こる前に、‘958特許の共同発明者の1人Anthony Louderback氏が、自分自身の光学コーティング会社Ojai Research, Inc. (以下Ojai)を創設するために、Litton社を退社していた。しかしLouderback氏はLitton社と、ライセンス下の工程に基づく如何なる発明や、その改良、さらには発見は、Litton社の所有に帰すると共に、彼が特許技術を漏らすことを禁じる排他的なコンサルティング契約を結び、Litton社の為に働き続けた。また、彼はLitton社と、‘958特許の実地使用が許されるが、Litton社以外の他社には、特許技術を用いたミラーの製造を禁じるとの契約を結んでいた。1983年のコンサルティング契約の満了後、1984年から1990年までの間、Litton社の競争相手であるHoneywell社に、Louderback氏はこの特許方法を使ったミラーを供給した。
1990年に、Litton社は、Honeywell社とLouderback氏とOjai社を、‘849再発行特許の
侵害だとして告訴した。Litton社は、Louderback氏が‘849再発行特許を侵害し、ライセンス契約とコンサルティング契約に違反したと主張した。Litton社はその後、Honeywell社への訴えを、経済的利得を予期しての契約関係への故意の干渉という訴訟に変更した。最終的には、Honeywell社とLitton社が裁判にかかることになった。特別の審決様式にて、陪審員は、次ぎのように断じた。
Honeywell社は、主張されたどのクレームも無効になっていると立証出来なかった。
Litton社は、主張されたクレームの侵害を立証出来た。
Litton社は、州法上の訴訟の立証責任を果たした。
本訴訟は、今回で3度目となるが、私達に戻ってきた。私達の最初の判決LittonTは、
Warner-Jenkinson社 対 Hilton Davis社 520 U.S. 17, 41 USPQ2d 1865 (1997年)及び
Honeywell社 対 Litton Sys.社 520 U.S.1111 (1997年) (GVR=支持・破棄・差戻しの命令)に鑑み、最高裁判所により、破棄され差戻された。次ぎに、LittonUにおいて、「Kaufmanタイプのイオンビーム光源」は、記述された構成物[熱線の陰極、陽極、グリッド、磁石]を含む如何なるビームガンをも含むと理解する。Litton Sys.社 対 Honeywell社 140 F.3d 1449, 1455, 46 USPQ2d 1321, 1324 (Fed. Cir. 1998年) この解釈に基づき、Honeywell社の空洞状陰極と無線周波数(RF)は、原文の意味からして‘849再発行特許に対し非侵害と認める。私達は破棄し、妥当なクレーム構成に基づき均等の原則による侵害があるか否かを審理すべく差戻す。同上 陪審員が、州法の不法行為を成立させる不法手段を用いたことにより侵害としたかも知れないので、私達はJMOLを取消し、陪審員の審決を破棄し、州法に従い更なる裁判手続をすべく差戻す。同上の1465, 46 USPQ2d 1333
LittonU からの差戻しで、地方裁判所は、‘849再発行特許の侵害はないとの略式判決とJMOL判決を与えた。審査経過禁反言が、Honeywell社の空洞状陰極ビーム光源からの均等の原則による侵害を阻止し、オール・エレメント・ルール(all element rule)が、Honeywell社の空洞状陰極とRF<異なる無線周波数>イオンビーム光源からの均等の原則による侵害を阻止すると看倣した。法廷は又、Litton社が必要な要素の証明が出来なかったので、 Honeywell社に州法上の不法行為のJMOL判決を認めた。
討議
「私達は、過去の略式判決への地方裁判所の支持をレビューする。Vanmoor社 対 Wal- Mart Stores, Inc.社、201 F.3d 1363, 1365, 53 USPQ2d 1377, 1378 (Fed. Cir. 2000年) (そこでは、Petrolite 社 対 Baker Hughes Inc.社, 96 F.3d 1423, 1425, 40 USPQ2d 1201, 1203 (Fed. Cir.1996年)を引用) 「略式判決は、重要な事実に関して真性の問題がない場合で、申立て側がJMOL裁決を受ける権利がある場合に適用するのが妥当なものである。」同上 略式判決は、「申立てをしていない側にも判決を下すのが適当と思えるような証拠がある場合には」妥当ではない。Anderson社 対 Liberty Lobby, Inc.社, 477 U.S. 242, 248 (1986年) 略式判決への申立てに対する裁決時には、非申立て側の全ての証拠が受容され、正当化できる限りにおいて非申立て側に有利な形の推定をなすべきである。同上 255
「私達は、陪審員による審決に続くJMOL裁決への申立てに対する裁判法廷の決定をレビューする。」 Tec Ai, Inc.社 対 Denso Mfg. Mich., inc.社 192 F.3d 1353, 1357, 52 USPQ2d 1294, 1296 (Fed. Cir. 1999年)
[1]「特許の法的要件に関連しての如何なる理由でも、減縮補正は、補正されたクレーム要素についての審査経過禁反言を生じさせる。」Festo, 234 F.3d の566, 56 USPQ2d の1870 「イオンビーム光源」限定のクレームの特許性維持のために、Litton社は当初、“イオンビーム光源”の用語は、他のイオンビームガンを指さず、Kaufmanガンのみを指すと解すべきだと主張した。Litton U, 140 F.3d の1453, 46 USPQ2d の1323 しかし、その後Litton社は、クレームを減縮し、“イオンビーム光源”を“Kaufmanタイプのイオンビーム光源”と読み替えた。同社は、米特許法112条2項の規定により審査官が発明とは看倣されないものをクレームしたとの理由からの拒絶に対する直接の対応として、減縮された。同上の1461, 46 USPQ2d の1330 「発明と看倣す云々」との拒絶は、112条2項の法的要件に明らかに関連しており、それ故Litton社の減縮補正は審査経過禁反言を生じさせる。
[2]「クレーム補正が、クレーム要素について審査経過禁反言を生じさせる時、補正されたクレーム要素には、均等の原則に基づく範囲が全くない。クレーム要素への均等の原則の適用は、完全に禁じられる。」(完全なる禁止)Festo, 234 F.3d の569, 56 USPQ2d の 1872 Litton Uにおいて柔軟禁止のアプローチを採ったのに対して、<同上の 574, 56 USPQ2d の1877> Festo判決では、そのアプローチを明確に退けた。同上の
569, 56 USPQ2d の1872 判例法は、自由裁量を許容する司法原則であり、早い時期に裁決されたケースの再考を、例外的な状況がない限り、妨げるものである。そのような状況のとは、支配的な法権威<最高裁判所>が、後刻ケースに正反対の判決が適用されるべきだとする時、または、過去の判決が明らかに間違っていて、その適用が実質的な不公正をもたらす時などである。Mendenhall and CMI社 対 Barber-Greene社, 26 F.3d 1573, 1581, 31 USPQ2d 1001, 1007 (Fed. Cir. 1994年) 私達が、補正されたクレームについての審査経過禁反言の範囲に関して、正反対のルールの適用を採ったので、均等の原則の法理は、完全禁止の適用を妨げない。同上、Festoについての全員法廷を参照。
Hughes Aircraft 社 対 アメリカ合衆国 86 F.3d 1566, 39 USPQ2d 1065 (Fed. Cir. 1996年) (Hughes VIII) また Hughes Aircraft社 対 アメリカ合衆国 140 F.3d 1470, 46 USPQ2d 1285 (Fed. Cir. 1998年) (Hughes XV) に関する私達の意見では違った結果にならない。Hughes VIIIは、Hughes Aircraft社 対 アメリカ合衆国 717 F.2d 1351, 219 USPQ 472 (Fed. Cir. 1983年) (Hughes VII)が、Pennwalt社 対 Durand-Wayland社 833 F.2d 931, 4 USPQ2d 1737 (Fed. Cir. 1987年)と完全に合致していると判断している。Hughes XVでは、Warner-Jenkinsonは、 all element ruleを適切に適用している故にHughes VIIでの判決を少しも変える根拠がないとしている。140 F.3d の1475, 46 USPQ2d の1289 その間に、そのどちらの訴訟でも、関連の事案に正反対の判決を下してはいない。支配的な法権威の有意義な変更に直面して判例法の適用如何を決定できる立場にないことを、私達は理解している。Festoの完全禁止ルールの下に、Litton社は、係争の‘849再発行特許のクレームにつき「Kaufmanタイプのイオンビームガン」の均等を求めることに対して禁反言が働く。Festo, 234 F.3dの 569, 56 USPQ2d の1872 告訴された装置のどちらも、文字通りのKaufmanタイプのイオンビームガンは、有しておらず、Litton社は、告訴された装置が「Kaufmanタイプのイオンビームガン」限定を充たすのは、法律上完全に阻まれるのである。地方裁判所は均等の原則による‘849再発行特許の侵害はないと認めたのは正当である。
[3]非侵害のJMOL判決に従い、Litton社は、州法上の不法行為訴訟のための不法手段としての特許クレーム侵害に拠ることが出来ない。もし、その判決に納得の行く根拠があれば、控訴裁判所は陪審員のJMOLに反する判決を支持しなくてはならないが、もし陪審員が、容認できない基準に頼って判決に至っているなら、控訴裁判所は陪審員の判決を破棄し、新規の審理へ差戻さねばならない。Litton II, 140 F.3dの 1465, 46 USPQ2d の1333 (引用は省略) 均等の原則による侵害はなしとのJMOL判決になったこと故、地方裁判所は、陪審員に不法手段の事実関係を解決するために不法行為訴訟を提示しておくべきであった。不法行為訴訟のJMOL判決が、重要な事実の訴訟を容認できない形で判定したので、私達は裁判法廷の判決を破棄し、州法に基づく更なる審理ができるように差戻す。
判決
拠って、カリフォルニア中央地区管轄アメリカ地方裁判所は、一部支持、一部取消、一部破棄の上、差戻す。
訴訟費用
各当事者が、それぞれの費用を負担する。即ち、
一部支持、 一部取消、 一部破棄の上、 差戻。
Bryson J.判事、一部支持、一部反対
私は、均等の原則が本件には適用されないとの当法廷の判決を支持する。従って、‘849再発行特許に対する非侵害との地方裁判所の判決を支持するとの当法廷の裁決に同意する。しかしながら、州法上の二つの不法行為訴訟に関しての地方裁判所の判決を取消すとの当法廷の裁決には、本件が最初に法廷にかけられた時に、[Litton Sys.社 対 Honeywell社 87 F.3d 1559, 1581-84, 39 USPQ2d 1321, 1337-39 (Bryson, J.判事は反対した)]私の反対意見の冒頭で述べたのと全く同じ理由で、地方裁判所の判決を全面的に支持する。
Litton社の、契約関係への故意の干渉だとの訴訟は、Litton社とAnthony Louderback氏所有の Ojai Research社との間の契約に基づいている。同氏は、Litton社の元社員で、‘958特許の発明者の一人である。1981年に、Ojai社とLitton社は、両社の関係を律し、Louderback 氏が‘958特許を使用できるように、二つの契約を結んだ。最初の契約が、「コンサルティング・サービス契約」で、1981年から1983年まで有効であった。他方の契約は、「技術支援・ライセンス契約」(以下、ライセンス契約)であり、15年間の有効期間であったが、それはリング・レーザー・ジャイロスコープ・ミラー製造のための特許工程の使用をLitton社以外の者には禁じていた。コンサルティング・サービス契約が、Honeywell社がLouderback 氏よりミラーを仕入れる契約より1年以上前にあたる1983年2月に終了したので、本件に関する契約としては、唯一ライセンス契約のみがあった。ライセンス契約には、別契約としてコンサルティング・サービス契約があることを述べていたが、コンサルティング・サービス契約を1983年2月以降にも更新すると規定していなかった。Litton社がライセンス契約の違反したと主張したLouderback 氏の唯一の行為は、同氏の再発行特許の侵害して、Honeywell社向けのミラー製造にスライディング・ターゲット機構を1985年に用いたことであると、地方裁判所は認定した。地方裁判所が非侵害と判決したのは妥当であり、ライセンス契約の違反があるとすれば、Louderback 氏のスライディング・ターゲット機構の使用のみであろう。
スライディング・ターゲット機構の使用は、ライセンス契約の違反にならない。これは、
Litton社の所有物として確認すべく契約の附属明細書B「技術情報」に列挙された事項に入っていないし、それはまた、契約上の「修正と改良」に相当する秘密情報に表示された設計でもない。ライセンス契約は、それが完全に新しく異なる設計にはならないことを、明らかにしている。
また、コンサルティング・サービス契約に従えば、スライディング・ターゲット機構がLitton社の所有物になったとの証拠もない。コンサルティング・サービス契約は、「コンサルタントが、Litton社のために働いている間に工夫したり創った全ての発明、開発、発見は(それが特許か否かを問わず)…Litton社がその全ての権利を持つ」と規定している。しかし、Litton社とLouderback 氏の両者とも、この2年間のコンサルティング期間においても、当コンサルティング・サービス契約は、Louderback 氏が独自の仕事をすること、並びに独自の仕事の間になした開発には及ばないことを、認めている。Litton社は、スライディング・ターゲット機構が、Litton社向けの仕事の最中に開発されたとの立証が出来なかった。Louderback 氏は、スライディング・ターゲット機構は、彼自身の所有物であり、Litton社とのライセンス契約下に彼が作動しているLitton工程とは別個に維持していると、証言した。その上、この機構は1977年特許で開示され、公知となっている。
Litton社はまた、Louderback 氏がミラー製造工程での一部の改良を開示しなかったので契約義務違反だとして争った。しかし、記録では、問題の情報をLitton社に教えないようにと、Honeywell社がLouderback 氏を唆したとの証拠がない。寧ろ、記録からは、Louderback 氏が、それが自分自身の企業秘密だからその情報を教えなかったと、推定できる。
Litton社の第二の不法行為訴訟、つまり利得を予期しての干渉は、不法行為の要件である不法手段をHoneywell社が使ったとの実体的な証拠がないので、認められない。地方裁判所と当裁判所の両方が、第一回の控訴で、主張の不法手段は、侵害行為であるか、或いはLouderback 氏に対する契約義務違反への使嗾がなければ成立しない。参照87 F.3d の1575, 39 USPQ2d の 1332 私達はここにおいて、侵害は起こらなかったこと、また上述のように、記録によれば、違反への使嗾がなかったことと判断する。それ故、「干渉」の訴えは、証拠からは支持出来ない。
不法手段は別として、干渉不法行為成立には、Honeywell社が、Litton社とLouderback 氏とのビジネス関係を混乱させる故意の行動をとったことが示されねばならない。本件についての最初の訴訟で当法廷は、侵害とLouderback 氏とLitton社の契約関係への故意の干渉のみを認めた。参照87 F.3d の 1575, 39 USPQ2d の 1331 これらの行為の何れも証明できなかったので、干渉不法行為は、その基準からは成立しない。
拠って、地方裁判所が二つの不法行為訴訟に対してJMOL判決を下したのは正当である。;従って、当法廷の判決の内、地方裁判所の判決の取消すとの部分に反対する。