アーム・フォッサ・テストにおける
三つの刺激に関する神経学

Marc Pick D.C.のセミナーノートより
翻訳・編集:前田滋
2026.8.6

1.聴覚刺激
 腕に対応する運動神経細胞
  ↑
 運動皮質→小脳のフィードバック・ループ
  ↑
 前運動皮質
  ↑       下行性信号
 ウェルニッケ連合野  ↑
  ↑→→→→→→→→→↑
 同側の側頭葉聴覚皮質 ヘッシュル回(音声認識)
  ↑
 同側の内側膝状核-視床の下方部
  ↑
 下丘核細胞-中脳の中脳蓋
  ↑
 橋の外側毛帯
  ↑
 対側の上オリーブ核(台形体背側核)
  ↑橋被蓋の下部で腹外側部に位置し、
  ↑台形体のすぐ背方にある。
  ↑同側および対側の蝸牛神経核から
  ↑神経線維を受け、
  ↑両側の外側(聴覚)毛帯へ線維を送る。
  ↑音の空間的認知機能に関係する。
  台形体:橋核の深部を横に走る線維群
  ↑
  内耳神経・上蝸牛神経核細胞
  ↑
  蝸牛の双極細胞
  ↑
 「止めよ」という指示


2.鼠径靱帯への接触刺激:後索・内側毛帯系

 中心前回・中心後回の感覚運動野:四次・五次ニューロン
  ↑
 対側視床の後外側腹側核(VPL):三次ニューロン
  ↑
 内側毛帯(延髄:毛帯交叉)
  ↑
  ↑内弓状線維:薄束核と楔状束核から発する
 薄束(頸延髄結合部)下肢・体幹下部の知覚神経支配
  ↑二次ニューロン
 T12・L1の脊髄後角:一次ニューロン
  ↑
 パチニ小体、ルフィニ小体
  ↑
 鼠径靱帯:恥骨結節に付着
 接触刺激:仙腸関節(S1・S2)との同規的関連性。
 内腹斜筋・外腹斜筋:鼠径部と仙腸部に共通する。
 骨間靱帯と恥骨結合の受容器の統合性。
 例:鼠径ヘルニア-同側の仙腸部が痛むことあり。
 仙腸関節の離開-同側の鼠径部が過敏になる。

*同規的関連性=類似した形や構造が、手足の指のように
 系列的に並列して配置されていること。

*腕は頚椎の腕神経叢を通して神経信号を受容し、放射する。
 それゆえ、CatⅡ病変が存在する時には広背筋の関連性緊張と、
 その頸椎神経支配によって肩の筋紡錘を弱める。
 この筋紡錘は、腕神経叢を経て同側の小脳と
 対側大脳の感覚運動皮質に至る機械刺激受容器の
 求心刺激を増強している。

肩の機械刺激受容器が適応して最終的に軽度傷害が
形成されると、小脳と皮質細胞への求心刺激は遂に減衰し、
細胞は経ニューロン性萎縮(神経原性筋萎縮)の状態になる。
この変性過程が起きたとしても、変性の程度は外傷や
感染による機能損失に比べると比較的穏やかである。

そしてまた次のことを理解しておかねばならない。
すなわち皮質減速率の程度は、仙腸部の損傷よりも
中枢神経の統合度の状態によって決定される。

しかしながら、次の事実も忘れてはならない。
皮質細胞がその変性過程によって脱分極を起こし、
総和増強状態に近くなった時には、
変性度と増強感度表示の程度とは非常に個人差が
大きいと考えられる。

正常な中枢系の統合状態下では、腕の応答に対する
聴覚刺激は同期的流れの中で発生するが、
前運動性および一次運動皮質細胞の、
先在性順行性変性と減衰した新陳代謝量によって、
細胞は刺激に対して過敏となり、鼠径部への接触刺激や
腕への牽引力などの求心刺激の殺到と、
歯状核-赤核-視床-皮質路の過分極の
フィードバック状態とが重複すると、
音声信号の反応が歪められるかもしれない。


3.腕の配置刺激
所定の配置を維持する
  
より高レベルでの出力状態に
活性化されている状態

<パチニ小体、ルフィニ小体の応答>
  後索・内側毛帯系
 体性感覚運動皮質-皮質促通
  ↑
 放線冠:内包線維の大脳皮質への放射で、
  ↑広く扇形に広がっている
  ↑
 対側の後外側腹側核(視床)VPL
  ↑
 内側毛帯:ここで交叉
  ↑
 内弓状線維:薄束核と楔状束核から発する
 楔状束核(頸・延髄結合部)
 同側の腕・手の知覚神経を受ける
  ↑
 後柱(索)の楔状束:上部胸髄、頸髄からの後根線維
  ↑
 吻側脊髄神経節
  ↑
 パチニ小体、ルフィニ小体の活性化
  ↑
 手根周囲・肘・肩への圧

<筋と筋紡錘の応答>:脊髄小脳路
 虫部、中間皮質のプルキンエ抑制細胞を活性化
     ↑
   同側小脳:苔状線維
     ↑
  →→→ ←←←←←←←
  ↑         ↑
 上下小脳脚      ↑
  ↑         ↑
 吻側脊髄小脳路  楔状束小脳路
  ↑         ↑
 Ⅵ層の中心基底核細胞 副楔状束
  ↑        同側の楔状束
  ↑   分岐    ↑
  ←←-← →→→→→→
      ↑
    脊髄神経後根
      ↑
    脊髄神経節
      ↑
 肩甲帯、腕、手の筋紡錘が活性化される

脊髄小脳路:意識されない固有受容器の情報は、
次の4対の経路によって伝達される。

 前後の脊髄小脳路:下半身の情報
 楔状束小脳路、吻側脊髄小脳路:上半身の情報

1.後脊髄小脳路
  同側の前葉と第9小葉(lobule IX)に分布する。
  この線維は信号は脊髄後根から入り、中心膠様質内を
  上下してクラーク柱(灰白質内の核群)の後角でシナプスを形成する。
  この経路の二次ニューロンは側索の後外側面を通る。
2.前脊髄小脳路
  この経路は両側の前葉と第9小葉(lobule IX)に分布する
  神経根に入る線維からなる。
  これは灰白質内でシナプスを形成し、
  交叉して反対側の脊髄で側索の前外側を上行する。
  これらの線維は中脳に至って再び交叉し、
  上小脳脚から小脳に入る。

3.楔状束小脳路:cuneocerebellar tract
  この経路の軸索は神経根を経由して後索の外腹側を
  通っている楔状束内を経て脊髄を上行し、
  副楔状束核でシナプスを形成する。

4.吻側脊髄小脳路(rostral spinocerebellar tracts)
  脊髄の同側を上行し、一部は下小脳脚を通り、
  残りは脳幹を横断して前脊髄小脳路に合流し、
  上小脳脚から小脳に入る。

*後脊髄小脳路と楔状束小脳路は類似性が高い。
 共に太い径の知覚線維で身体の同側を上行して
 下小脳脚を経由し、小脳前葉に終わる。

*前脊髄小脳路と吻側脊髄小脳路は類似性が高い。
 共に細い径の知覚線維である。

<腕の運動刺激>
  小脳大脳
   ↑
  吻側脊髄小脳路
   ↑
  楔状束
   ↑
 肩関節の受容器と筋紡錘が活性化される
 検査前の腕の配置により、
 すでに促通されている

<意識下での皮質運動反射と
 皮質-橋-大脳小脳の前駆神経路>

  大脳の感覚運動皮質
   ↓
  橋核
   ↓
  中小脳脚
   ↓
  対側小脳
   ↓
 同側大脳小脳半球
   ↓ーーーーここまでは苔状線維
   ↓
  顆粒細胞
   ↓
  平行線維
   ↓
  ゴルジ細胞、籠細胞、星状細胞を活性化
   ↓
  大脳小脳の縦軸索内の
  抑制性プルキンエ細胞を活性化

細胞、星状細胞の軸索は平行線維に沿って
矢状方向に延び、その傍にあるプルキンエ細胞を
抑制する。

アーム・フォッサ・テストにおける腕に関しては、
腕の検査前配置と手を握りしめた形が
その局部の筋紡錘の求心性を高め、
その結果皮質-橋-大脳小脳神経路を
前もって活性化し、そして皮質-橋小脳投射からの
信号が、活性なプルキンエ細胞群間の境界を
鋭敏にしている平行線維の複雑な仕組みを構築している。

それゆえ、今の腕の配置は被験者の肩、腕、手に
対応している小脳細胞に焦点を定めている。

<大脳小脳-歯状核-オリーブ核-大脳小脳の
 フィードバック・ループ>

 小脳外側皮質からの軸索-歯状核からの出力信号を修正
    ↑
 プルキンエ抑制細胞からの信号

      登上線維
 大脳小脳←←←(下小脳脚)←←←同側の
      ↓        下オリーブ核
      ↓プルキンエ抑制細胞を↑
      ↓を活性化      ↑
      ↓          ↑
     歯状核→→→→→→→→赤核(対側)
                 ↓
                視床
                 ↓
                皮質

歯状核の不活性化が運動開始遅延の原因
(Gordon Holmes , Jean Babinski)

腕と握りこぶしの最初の配置が皮質-橋-小脳路を
促通するので、大脳小脳-歯状核-赤核-オリーブ核
-大脳小脳のフィードバック・ループも
同様に結局は促通されることになる。

皮質-橋-大脳小脳-歯状核路からの歯状核の
強い先在抑圧と結合して、大脳小脳-歯状核-赤核
-オリーブ核-大脳小脳のフィードバック・ループは、
その登上線維の強力な励起結合によって別個の強い
プルキンエ細胞の活性要素を追加することにより、
歯状核の過分極に寄与している。

橋の苔状線維は励起性の顆粒細胞とシナプス結合し、
これは次に平行線維として分岐して軸索を上行させている。
これらの線維は、小脳葉の縦列軸索全体の分子層に
それ自身を埋め込むことによって外側皮質と
中間皮質領域とを連結している。

*注:オリーブ核の軸索は励起性の登上線維となって上行し、
小脳皮質全体のプルキンエ細胞を強力に促通する。

苔状線維と登上線維、両方の神経路からの連結信号が、
介在核に対するプルキンエ細胞の抑制強化に寄与している。
またこの介在核が最終的に肩の抵抗運動における
反応時間の調整を支配していることがわかる。



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