椎骨の変位

1996.06.24 ~ 1996.11.03


一般に、椎骨の変位している方向を表現するには、その直下の椎骨を  基準とします。第2頸椎から第5腰椎までの椎骨では、

1.回旋変位(Rotation)
後方より観察したときの、
棘突起の左右へのシフト 

2.傾き変位(Tilt)
後方より観察したときの、 
左右の横突起の高さの違い 

3.後方変位(Posterior)
側面より観察したときの、 直下部の椎骨に対する後方への変位

上記三種類の変位を起こすことがわかっています。 
これら三つの変位方向を表現する上での記号と約束事が  決められていますが、ここでは、必要ないと思いますので、  その説明は省略します。 



1.回旋変位(Rotation)

椎骨の回旋変位



2.傾き変位(Tilt)

直下部の椎骨を基準とする
椎骨の傾き変位


3.後方変位(Posterior)

直下部の椎骨を基準とする
ジョージ・ライン(George's Line)
レントゲンの単純撮影側面像で、脊柱の椎体後縁を 結んだ線のこと。正確には、自然立位での側面撮影像 において判定するが、横臥位での撮影像でも、 そのステップしている状態を認めることができる。

正常なジョージ・ライン
滑らかな曲線を描く(下図左側)

後方変位
直下部の椎骨後縁のラインに対して、直上部の椎骨後縁の ラインが後方へステップしている(下図の右)。 脊椎の関節面の構造によって、一般的には椎骨は 後方へ変位しやすい。

前方変位
直下部の椎骨後縁のラインに対して、直上部の椎骨後縁の ラインが前方へステップしている。後方変位に比べて 出現頻度は少ない(下図の下)。整形外科では脊椎分離辷り症 または偽性辷り症という病名がつけられている。
椎骨の後方変位


「椎骨の後方変位」は、西洋医学、特にレントゲン診断学の 分野では、「脊椎後方辷り症」という名称で呼ばれている。 英名では、次のような用語が付けられている。

 RETROSPONDYLOLISTHESIS
 RETROLISTHESIS
 REVERSE SPONDYLOLISTHESIS
 VERTEBRAL RETROPOSITION
 SPONDYLOLISTHESIS POSTERIOR
 RETRODISPLACEMENT
 POSTERIOR DISPLACEMENT


このことは、次の成書に述べられている。

*ANATOMICO-ROENTGENOGRAPHIC STUDIES OF THE SPINE Lee A. Hadley, M.D. Cherles C Thomas Publisher Springfield, 1964 ISBN 0-398-02818-4 pp390-395

* THE RADIOLOGY OF VERTEBRAL TRAUMA GEHWEILER・OSBORNE・BECKER W.B.Saunders Company Philadelphia, 1980 ISBN 0-7216-4065-6 pp445-452

この現象が最初に報告されたのは1929年で、 Brailsford, Hibbs, Swiftらによって報告されている (前出の文献)。

従って、この現象(後方変位)を最初に 発見した栄誉は、彼らに帰されるべきである。 しかし、それを手によるアジャストで矯正できると 主張したのは Dr.GONSTEADである。

日本語のテキストにおける記述を探してみたところ、 かろうじて次のテキストに記述がある。

*「骨・関節のX線診断」江原茂 著
  金原出版(株)p259

*「図説整形外科診断治療講座 腰痛」
 メジカルビュー社 p161
 後方辷りの測定法(MORGAN法)

*「神中整形外科学」改訂21版 南山堂 P276
急性腰痛症の中の ”FACET SYNDROME”に関する 記述の中で、「腰椎は後方へ移動することがある」 と記されている。

*「整形外科学書」 綾仁富彌著 金芳堂|
変形性脊椎症を説明しているレ線像の中で、  「上位椎体の後方辷り」と一言だけ記述あり<

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