鷹の渡りの季節です
Tokio Takano
(2005年 2月 14日変更)
サシバとハチクマ(左下の2羽) 白樺峠 2002.9.21.
平成16年の、同好会OB「タカの渡り観察会」
前年のリベンジで行った「白樺峠・上高地」は
2004年探鳥行
に掲載してあります。
平成15年の、同好会OB「タカの渡り観察会」
上野尚博さんの呼びかけで、9月19日(金)〜21日(日)の日程で行ったものの、
あいにくの台風接近でタカは全く飛ばず、また来年を期すこととする。
9月19日(金)夜に首都圏を出発して、「八蝗山荘」で仮眠
9月20日(土)朝出発、白樺峠に10:00頃到着。しかし昼過ぎから雨。乗鞍高原泊
9月21日(日)朝から雨のため松本に降り、田淵行男記念館などを見学後、帰京
参加者:小高祥宏,上野尚博,割田兼弘,近辻宏帰夫妻,
奥村安隆,高野凱夫,上野晶博,岡山旺香
タカの渡りの季節です(その1) 2002.9.16.
今年も秋のタカの渡りの季節がやってきました。
9月13日(金)の夜出発で昨15日(日)まで、上高地と白樺峠に行って参 りました。
次の週に、ほぼ同じ日程で行う、野鳥の会の神奈川支部探鳥会の下見を兼 ねた、車一台で5人での探鳥行でした。前線が南下してきて、絶えずお天 気を気にしながらの旅でしたが、幸い行動中は雨にも降られず、楽しむこ とができました。
14日の早朝に沢渡に到着し、ここからバスに乗り換えて大正池で下車、 エクリプスから繁殖羽に替わりつつあるオシドリが、アヒルのように足元 まで来るのを写真に撮ったり、森の中では久しぶりに出会ったキバシリや 家族連れ?のサメビタキ、大正池の枯れ木にとまるオオタカなどを観察、 河童橋の少し上まで歩きました。
昼からは乗鞍高原経由で、最近タカの渡りのメッカとなった白樺峠に行き ました。
この日は天気がパッとしないので、サシバやハチクマは1羽も飛ばないと 現地で観察している人に聞き、しばらく待ってオオタカが舞った(地付き の個体?)のを見ただけで麓の奈川村の宿に下りました。
翌15日朝も9時には峠に行ったのですが、朝6時過ぎまで降っていた雨 はやんだものの、峠のあたりは深い霧で、10:30頃まで駐車場のまわりで ぶらぶらして、ようやく霧が晴れてきた11時頃に、タカの観察広場に登り ました。
するとまさにタカが飛び始めたところで、上空をハチクマ、サシバ、ハイ タカ、ツミ、そしてチゴハヤブサまでが、それぞれ1〜2羽ずつ舞ってい て、ハリオアマツバメやアサギマダラも上空高く飛んでいました。
その後、30分ほどは、また上昇気流が止まってしまったのか、タカの姿は 途絶えましたが、薄日が差して風が吹き始めると共に、松本寄りの谷から ハチクマやサシバが舞いあがってきて、サシバ中心の30羽くらいのタカ 柱や、ハチクマだけの十数羽の小さなタカ柱が見られました。
この時期はここもまだサシバには時季的には早いため、ハチクマが中心で 白っぽい個体など色彩変異が多いこともよく分かりました。でも最初の時 と違い、谷沿いに野麦峠に向かって、比較的低いところを滑空しながら通 りすぎるので、頭上間近に観察というわけにはいきませんでした。
でも、途絶えたなと思うと再び舞い上がり始めたりで、ノスリやホシガラ スなども飛び、そこから離れるのは後ろ髪を引かれる思いでした。 おかげで現地出発が2時頃になってしまい、中央高速の渋滞に巻き込まれ 帰宅は大分遅くなってしまいました。
この白樺峠(上高地・乗鞍高原スーパー林道の途中、野麦峠の北)のタカ が伊良湖岬まで南下するのか、それとも岐阜の金華山あたりから西に向か ってしまうのかはまだよく分かっていないようですが、来週に再び白樺峠 と、その2週間後の上野先輩達との伊良湖岬と続く、今年のタカ見の幸先 としてはなかなかのものでした。
以上、ご参考までに。
白樺峠のタカ見の広場
タカの渡りの季節です(その2) 2002.9.23
先日レポートをお送りした上高地と白樺峠に、一週間後の9月20日夜から 22日まで再び野鳥の会の探鳥会として行ってきました。
上高地では今回はオシドリの数が少なく、キバシリの姿も見られなかったもの の、まだメボソムシクイの囀りやサメビタキの姿が残る中、秋の深まりを感じ る景色を眺めながら歩いてきました。
白樺峠は、先週の天気があまりにも良かったため、18〜20日の3日間に、 約6000羽のタカが渡ってしまったそうで、21,22はその残り物という感じ でしたが、それでも30〜50羽のタカ柱が何度か見られ、中には頭上比較的 低いところを飛びすぎるものも居て、楽しめました。
今回は種類はサシバが中心で、ハチクマ、ツミ、ノスリなどが混じりました。
ところで先日、白樺峠のタカの渡りの記事を皆さんに送ったところ、白樺峠へ の行き方などを教えてくれとのメールを何通かいただきました。
白樺峠のタカの渡りは
「信州のタカの渡り」の頁
が参考になります。
また、全国のタカの渡りのHPへは
「タカの渡り全国ネットワーク」の頁
からリンクできます(白樺峠等の観察速報も)
白樺峠の場合、近くで塒はとらないようで、松本平で夜を過ごしたタカ達が、 上昇気流が出たのを見計らって飛び出すようです。
タカ柱は5kmあまり離れた奈川渡ダムのあたりで発生する上昇気流を捕らえて できることが多く、峠で見ている我々の頬に当たる風がやや強くなったなと感 じると、舞いあがるタカの姿が多く見られるようになります。
ですから、あまり朝早くはダメで、10時過ぎから夕方のほうが観察に向いてい ます。そこで我々は上高地で早朝探鳥をしてから白樺峠へ回るという方法をと りました。(上高地から車で1時間半あまりです)
それだけに、天気が悪いと全く飛ばないことが多く、伊良湖岬のように塒の森 が近くにあるので悪天候でも時々はサシバが飛ぶということはありません。
また、伊良湖岬のように海に飛び出すのではなく、陸続きなので夕方でも適当 な場所で休めるから、遅い時間でも見られるのでしょう。
時季は9月20日前後が毎年のピークになるようで、伊良湖岬の10月初旬よ り10日から2週間早いようです。
種類はサシバばかりでなく、ハチクマの数が多く、ツミやノスリも混じります。 天気次第ですので、やはり1泊したほうが良いでしょう。
宿は、麓の奈川村営の「レフレイン奈川」を野鳥の会では利用していますが、 シーズン中はこうした団体で満員でしょうし、奈川村がタカの渡り調査に協力 的なので利用しているという面もあります。
奈川温泉にある他の宿や、上高地乗鞍スーパー林道の反対側の乗鞍高原にある ペンションなどに泊まってもいいと思います。
白樺峠には駐車場所が比較的多くあり、トイレもあります。そこから標高差に して100m以上山道を登ったところに、シラカバやダケカンバを切り払って(も ったいない気もしますが)作った鷹見の広場というのがあり、そこで松本方面 を見下ろしながら観察します。
今回はここに200人以上が並んで、観察していました。
ついでに、タカの渡りのもうひとつの目玉に、朝鮮半島から九州の西海岸を通り、 南西諸島を南下するアカハラダカがいます。
この観察には、長崎支部が長年観察を続けている、佐世保市郊外の烏帽子岳が、 頂上付近まで車で登れるので便利です。時季は9月10日前後です。
以前私が行ったときは雨でほとんど飛ばず、外れでした。
アカハラダカは前に韓国に出張で行ったときに水田を囲む丘陵の上を飛んでいる のを見て繁殖環境を知りましたが、その後宮古島で渡り途中の雄を見た程度で、 数千羽の渡りは長崎支部の方達にビデオで見せていただきました。
長崎支部は支部長の鴨川さんのお人柄によるのか、皆さん大変親切で、電話で問 い合わせただけでわざわざ宿まで来てくれたりで、恐縮してしまいました。
ここでは、ハチクマも多く通過しますが、アカハラダカが北から南に渡るのに対 し、ハチクマは西に向かって飛んで行きます。恐らく五島列島から東シナ海に出 て中国大陸に渡るのでしょう。
アカハラダカは南西諸島を南下しますが、サシバより半月以上早いので、エサの 取り合い等は起きないようです。
春先の与那国島には大きなバッタが沢山居ますが、サシバやチョウゲンボウがせ っせと食べています。こうした大型昆虫などが彼らの渡りのエネルギー源となっ ているのでしょう。
我々の学生時代はこうしたタカの渡りというのはほとんど知られておらず、せい ぜい九州の佐多岬で秋にサシバが渡って行くのが見られるそうだという程度のも のでした。ましてアカハラダカが国内で毎年見られるとは全く情報がありません でした。
今では、バードウォッチャーの数も増えて、前日の渡りの様子がインターネット で見られるという時代となりました。まさに隔世の感ですね。 10月号のバーダー誌に、「飛んでるタカを見分けよう」の特集記事と、我々42年 卒の同期旅行会で来年行く予定のロタ島の鳥の写真、そして私のHPにも載せた 中央アジアに生息するハクセキレイの亜種(メンガタハクセキレイと名付けられ たようです)が石垣島で記録された記事などが出ています。
日本で初記録、メンガタハクセキレイの頁
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伊良湖岬の灯台下で頭上を通過するタカを見上げる
2002.10.5. 上野尚博氏撮影
タカの渡りの季節です(その3) 2002.10.7.
9月に2週続けて白樺峠で観察したのに続き、今回は上野先輩に誘われての 伊良湖岬でのタカ見です。
10月4日の夜、小高車と上野車とで東名・富士川SAで合流。参加者は
上野尚博、上野晶博、小高祥宏、真柳元、奥村安隆 、高野凱夫
の6名。
5日はタカ12種を始めとして、70種類を1日で観察できました。タカは
サシバ、ハチクマ、トビ、ミサゴ、チョウゲンボウ、オオタカ、ハイタカ、 ツミ、ノスリ、ハヤブサ、チゴハヤブサ、チュウヒ。
このうち伊良湖岬では見られなかったのは、渥美半島の付け根近くの汐川付 近の水田の上を飛び回っていたチュウヒのみです。
未明に到着した時は既に、伊良湖岬の恋路が浜の広い駐車場はほぼ満車状態。 明るくなるのを待ちかねたように、それらの車から人々が、三脚が、そして スコープや望遠レンズが吐き出されてきました。
しかしすっかり明るくなっても、ハチクマが1羽、しばらく経ってサシバが 1羽と、パラパラと渡るだけ。
遠くの木の枝にとまるオオタカの若鳥を見たりしながら時間をすごします。 台風21号の通過以来3日も好天が続いたので、あるいは主力は渡ってしまっ たのだろうかとちょっと心配になってきました。
やがて太陽の位置が高くなると数は増えてきたものの、モヤのかかった高空 を次々と通過するだけなので、真上に来ないと姿が捕捉できず、今回もタカ 柱まではいかないかと、途中で灯台の方に移動しました。
例によって灯台付近からはヒヨドリの群れが次々に海に飛び出します。いつ ものハヤブサは明け方に飛びまわっていただけでどこかに行ってしまったも のか、襲われることもなく、それでも海面スレスレまで舞い降りては一路西 を目指して飛んで行きます。
いつも思うのですが、こうした群れ飛ぶ鳥がぶつかったり、ニアミスであわ てたりして失速して海面に落ちてしまうようなことが無いのが不思議です。
空飛ぶ小型ロボットが出来たとしても、こんな巧妙な制御を行うことは人間 にはまず不可能でしょう。
一方で高空を1羽づつハチクマが、また数羽が連れ立って行くのはサシバ。
そしてアサギマダラも優雅に舞いながら次々に海に飛び出していきます。
チゴハヤブサも飛んだそうですが、近くにいたノビタキやセッカなどの小鳥 に気を取られていた人たちは見損ない、ちょっと物足りなさを感じながら恋 路が浜へ戻ります。
一時的に途絶えたなと思っても、しばらく経つと頭上はるか高空を、サシバ やハチクマが滑空と羽ばたきを繰り返しながら渡るという状況が続きます。 海岸で観察していた大学生のグループはこの時点で600羽くらいが渡った と言っていましたが、高空を豆のように飛ぶサシバなどは我々にはとても捕 らえきれません。
11時頃になってサシバを中心にハチクマやツミの混じった約40羽のタカ柱 が、伊良湖ビューホテルの近くに立ったのがこの日の最も大きなタカ柱だっ たようです。この群れは我々の頭上でもう一度回ってから、西を目指しまし たが、こちらのほうのタカ柱は真下からしかも太陽がバックの観察でした。
タカの数は勿論サシバが最も多いのですが、ハチクマの数も多く、それも風 切羽の先が黒い幼鳥の比率が高いのが伊良湖岬の特徴のようです。
白樺峠ではハチクマは成鳥の比率が高く、多くのハチクマは風切羽が2〜3 枚抜けていて子育ての大変さを感じさせましたが、幼鳥の場合は皆きれいに 風切羽が揃っています。
初めての長旅に出るこれらの幼鳥たちのうち、来春どの程度の数のタカが日 本に戻って来れるのでしょうか。これだけの数のハチクマが日本で繁殖して いるとは、普段夏山で出会うハチクマの少なさからみて信じられない思いも しますが、ひとつには帰って来られる数が少ないために、沢山育てた結果な のかもしれません。
ハチクマは五島列島から東シナ海を中国方面に約1万羽が渡るそうですが、 ここで遭難する危険性も高いような気がします。昔の遣唐使船や鑑真和上の 苦難の旅を思わせる話ですが。
(ハチクマは長崎県本土北部から五島列島の最西南部の大瀬崎から南西方向 への海上を渡ることが明らかになっています。大瀬崎では1997年に1万3千羽 以上が確認されました:
日本野 鳥の会長崎県支部HP
より)
5日の午後と、翌6日の午前中は伊良湖岬から離れて汐川付近をまわって、 シギやチドリを探しましたが、最初に紹介したチュウヒや、その近くにいた 6羽のケリ、そして干潟にいた銀杏羽に換わったばかりのオシドリのほかは、 オグロシギ、ソリハシシギなど比較的普通に見られる種類ばかりで、特記す べき種はいませんでした。
それでも1日目に70種、2日間で75種観察できたというのはタカの種類 の多さによるものでしょう。シジュウカラやメダイチドリのような普通種が 入っていないのに、です。
泊った民宿近くでも朝、稜線の上を岬方面に向かうハチクマやサシバ、そし てヒヨドリの群れが見られました。
最後に、あの小さな体で大きな渡りをするアサギマダラを調べている人たち のHPを紹介しておきます。
「アサギマダラを調べる会」のHP
ここの、再捕獲情報は一見に値します。
これで、私の今年のタカの渡りの報告は終わりです。多分。
杭にとまるミサゴ。
大きな魚を掴むためか、さすがに大きな足。
10月5日、汐川で。