八重山探鳥行2008行
(2008年4月4日更新)


「八重山探鳥旅行」

日時: 2008年3月19日(水)〜26日(水)


当初、上野・大場両氏と川島(俊)氏とで企画していた与那国行きに、 西表・石垣が加わり、更に参加者は7名とふくれあがった。
特別な珍鳥は出なかったものの、オオノスリ、マミジロ&ムネアカタヒバリ、 ツメナガセキレイ、クロウタドリ、ギンムク、ホシムク、カラムクドリ、 ヤツガシラなどの渡り鳥や、カンムリワシ、ムラサキサギ、ズグロミゾゴイ、 リュウキュウコノハズクなどの地付きの鳥まで、88種あまりを観察し、 その多くを写真に収めることができた。
以下は上野氏の記録をもとに、参加者の写真を入れてまとめた。

日程 : 3月19日〜23日 与那国島
     3月23日〜25日 西表島
     3月25日〜26日 石垣島
天候 : 3月19日、23日 曇り時々小雨 強風  両日以外は好天
同行者: 小高、石川、井上、大場、高野、川島(俊二)

「与那国島」

3月19日(水)

5人が羽田から那覇乗継、40人乗りの双発プロペラ機で15:30に与那国空港に到着。風が強く、特に与那国への空路は小型機が風に流されるようだった。
レンタカーで先ず東崎に行くが、途中ホオジロハクセキレイは早速出たが、岬周辺は 強風で鳥影はなし。山影になる比川水田に廻りクサシギを観察。
午後到着の井上氏をピックアップし、祖納の町の中心地に近い田原川湿地で小鳥の塒入りを観察。ここも強風で鳥の姿が見られず、普通なら沢山いるはずのシロガシラさえ、 藪の中で騒ぐだけ。結局第1日目は20種を観察しただけで終了。

3月20日(木)

早朝改めて田原川湿地で塒から出る鳥を狙う。風も幾分治まりシロガシラ やセッカの声や姿が賑やか。この藪の中にはシベリアセンニュウなども居る筈だが 姿を見ないもののそれらしい声は聞こえる。
朝食後は久部良ミト(池)でカモ類、サギ類を観察。ムラサキサギが1羽ブッシュから 飛び出した。 久部良小・中学校の校庭で、20羽ほどのギンムクドリと、木の間越しにヤツガシラ を一瞬観察。
11時過ぎ、一日遅れで到着の大場氏が合流、7人全員が揃い、空港横の北牧場で観察。 オオチドリやツバメチドリを期待したが姿はなし。マミジロタヒバリ3羽とチョウ ゲンボウが1羽、あとは多数のツグミとイソヒヨドリだけだった。 与那国そばの昼食後、久部良港へ回ったところ、シロチドリとトウネンが数羽翼を 休めていた。
西崎(いりざき)の眺望を楽しみ、再度久部良小学校に寄ると遂に期待の1種 ヤツガシラを発見。最初は遠くから観察したが、最後は至近距離からの観察と 撮影になった。
ヤツガシラを十分観察できたので、次に満田原へ向かった。ここの 水田は幾分標高の高い山中にあり、かなり広大な場所を車で一周できる道路がある。 ここで遂にオオノスリが頭上を飛翔する姿を見ることが出来た。この個体は翼の羽根がかなり抜け落ちていて余り見た目が良くないが、それでも山の端から現れ悠々と舞っていた。
この後は比川田んぼ、Dr.コトーの撮影をした診療所のある比川浜と回った。 その後に一走りした森林公園ではサシバ、ツミ、オオタカなどのタカを観察できた。森林公園を一周した後に通った十二神では道路脇の田んぼにコチドリの小群が休んでいた。 夕暮れの遅い与那国でも午後6時半を過ぎると薄暗くなって来る。
小鳥の塒入りを見るべく田原川湿地のブッシュの前で待っていると、何と後方の与那国小・中学校近くの電線に多数のムクドリ類が止まっている。直ちに移動。すでに薄暗いのが難点だが、それでも多数のギンムクドリに混じって3羽のホシムクドリと1羽のカラムクドリが観察できた。(下の写真)
かくして第2日目は昨日とは一転、好天にも恵まれ53種と多種の鳥を記録でき、 夜の宴が盛り上がったのは言うまでもない。

3月21日(金)

早朝中学校の先のイベント広場に行く。ここは与那国名物の闘牛が行われる うである。車を降りるとホオジロのような囀りが。しかし姿を確認して ノゴマと判明。
与那国小・中学校の校内でクロウタドリを探したが不発。
昨晩のギンムクドリの大群は出発前の勢揃いをしており、その数約80羽と 判明した。
朝食後は昨日とは反対の東側に向かい、帆安、東崎(あがりざき)に行く。 東崎では10羽ほどのムネアカタヒバリを観察。ほとんどが冬羽だったが数羽 だけ赤くなりかかっている個体が混じっていた。
この日は久部良ミトでアカガシラサギが観察でき、またミサゴ、サシバ、ハヤブサ、チョウゲンボウなどのタカ類を何度か観察した。
昨日ヤツガシラを見た久部良小学校の裏手で今日は5〜6羽のギンムクドリが水溜りで水浴びをしており、車で近寄ったが逃げられなかったのでじっくりと観察・撮影が出来た。
夕方与那国測候所の裏の畑で20羽ほどのツメナガセキレイの群に出会った。夏羽の成鳥は見られず、若鳥と思われるものと、やや黄色味が出ているかと思われる個体が数羽混じっているだけだったのがやや残念。
この日の総種数は45種と前日よりやや減少。しかし、酒豪が揃っているので夜の宴は昨晩同様盛り上がった。

3月22日(土)

早朝探鳥は午前6時15分に宿を出てヤマシギ街道へ。しかし林道到着の6時半 には明るくなり始めており、2往復したがヤマシギの姿は見られなかった。代わりに一声だけだったがアカヒゲの囀りを聞くことが出来た。
止む無く何時ものように田原川湿地でブッシュからの鳥の飛び立ちを待つ。一番多いのがシロガシラで10羽単位ほどで飛び立って行く。チョウセンウグイスは「ホーホケチョ」と日本のウグイスとは少し違う声。これまでにも聞いたシベリアセンニュウの声が数度。姿は見えない。ムジセッカと思われる声と一瞬だけブッシュに潜る姿も観察。さらに湿地の奥からサンカノゴイらしき唸り声も聞える。それ以外にも何とも分からない鳥がブッシュの中を動き回る。第2日に出て以来姿を消したムラサキサギがブッシュの奥の方に居るのを小高さんが発見。
朝食後はいつもと同様のコースを丹念に訪ね回る。この日のハイライトは2羽のオオノスリと近距離から樹上に止まっていたサシバだろう。
この日も久部良小学校ではヤツガシラが採餌していた。また前日の場所にツメナガセキレイも来ていたが、初日以来遠くからでしか見られなかったジャワハッカがツメナガセキレイのポイントのすぐ近くで2羽出た。ジャワハッカは元々30羽ほどがある年から住み着いていたらしいが、今は2羽に減ってしまったらしい。
第2日目に川島氏が懇意にしている写真家の佐藤進氏に会いオオチドリが出たら教えてもらうことになっていたが、現れたとの連絡があったのは帰京後の31日であった。 またこの日の夕方写真家の真木氏も島に到着。しばし色々な話を伺う。

3月23日(日)

いよいよ与那国島の最終日。今日は朝から雨模様で風も強い。何と運転席のドアを開けた拍子に強風のためドアが開ききってしまい、蝶番のところで壊れてしまった。
昨日より15分早く宿を発ち、再度ヤマシギを狙う。天候のせいもあって到着した時の林道はまだ薄暗い。その中を車を超スローで走らせると時々ヘッドライトの光に驚いてヤマシギが飛び立つのが見える。最初の走行で4羽、2度目の走行で4羽を確認できた。 3回目は明るくなり1羽も見られなかった。
食後もいつものポイントの幾つかを回った後、11時45分与那国空港を発ち石垣空港へ。 強風だったが定刻に離陸することができた。

「西表島」

3月23日(日)

12時過ぎに石垣空港へ到着後TAXIで石垣港へ向かい、西表島へ。西表は上原港 の予定が、海の荒のためサンゴ礁の内側を走る大原航路のみが運行。大原から上原まで の約1時間は船会社の送迎バスでの移動となった。車内から与那国では観察できなかったハシブトガラス(亜種オサハシブトガラス)を見る。久し振りのカラスに安心した気分。
上原の‘やまねこレンタカー’で車を2台で借り先ず祖内の宿西表アイランドホテルまで荷物を運び、荷降ろし後1台に全員乗り探鳥に。
先ず自動車道の終点の白浜へ向かう。途中の田んぼで早速カンムリワシとムラサキサギを発見。
車を戻して西表島でも有数の探鳥ポイントの星立に腰を据える。 部落の中の神社の境内で再度、カンムリワシを見たが今度は成鳥。 そして同じ場所でリュウキュウズアカアオバトも2羽見ることが出来た。 その後星立ホテル脇の公園でヤツガシラを見つける。 この個体も採餌に夢中であまり怖がらずかなりの近さから観察できた。
そして夕刻、民家の裏庭のような狭い場所で採餌するズグロミゾゴイを石川君が発見。物陰の極めて分かりにくい場所で良く見つけたものだ。

3月24日(月)

西表島の第2日目の早朝探鳥は天候も回復する中、徒歩で星立へ。遂にクロウタドリを発見。茶褐色味の強いので♀と判定したが、後日写真を見て♂若との結論となった。 この日はズグロミゾゴイが沢山見られ、成鳥、若鳥を含め少なくとも5羽は観察できた。またリュウキュウサンショウクイ、リュウキュウキビタキの声やシジュウカラの姿も観察できた。また裏山でカンムリワシが交尾をするシーンを見ることが出来た。
朝食後は星砂の浜などの景勝地を見ながら大原港方向へ進む。住吉牧場でマミジロタヒバリ数羽を発見。
大原港で昼食後道路の終点の南風見田浜へ出る。キャンプ場のある景勝地だがここで浜辺の沖に2羽の黒いクロサギを観察。 一足先に帰京する川島氏を大原港に送り、戻る途中の潮の引いた後良川の岸辺でアオアシシギとチュウシャクシギを見る。
夕食では大場君がアルコールを遠慮してくれたので彼に運転を任せ、食後ヤエヤマホタルの見物に出かける。暗くなり始めた山中からはアオバズク、リュウキュウコノハズク、ヒクイナの声が聞えて来る。ホタルは旧道の頂上まで歩いてようやく数匹が光り始めたが、暗くなるに従い数が増え、帰路では多数が舞って非常に美しかった。試しに捕らえてみると長さが僅か5mmほどで米粒よりも小さかった。このサイズでよくあれだけの光を出せるものである。
宿に戻って懐中電灯を持ってズク探し。小高さん、石川君と3人で宿から10数メートルのところにある小さな公園の樹上で鳴いているリュウキュウコノハズクを探したが、姿を捉える前に飛んでしまった。もう一組の高野組は姿を見つけ、大場君が見事撮影に成功。 (左写真:左目が赤眼となったので修正)
この日は宴会無しの夜。

3月25日(火)

西表島最終日のこの日も好天。早朝探鳥はいつものとおり星立部落で開始。村の入口の湿地で2羽のリュウキュウヨシゴイが飛び立った。 朝食後は浦内川のボートで観光。ボート屋の兄さんの話では、ここで早朝にキンバト が見られることが多いとのこと。もう一日早くこの情報を持っていれば見ることが 出来たかも知れず残念だった。船内からの景色はアマゾン探検のようで面白かったが、 鳥は何も居なかった。
ツツジのようなセイシカという花が咲いており、恐竜が生息した中生代を思い起こさせる巨大なシダも生えていた。
浦内川に架かる橋の側の林の中で聞きなれない声を聞いたので待ち続けていると、現れたのはリュウキュウキビタキだった。内地の腹部全体が黄色いものと違って、喉元だけがやや黄色味を帯びる程度で、これがオレンジ色ならオジロビタキ♂と言いたくなる個体だった。まだ十分成熟していない若鳥なのかも知れない。
波も治まったので石垣島へは上原港から11時20分に出港。約40分の航海で石垣港に到着した。

「石垣島」

3月25日(日)

 先ずレンタカーを借り、昼食を往路で井上君が食べて美味しかったと言う‘八重山そばセット’を全員で注文。食後直ちに出発。ここでは小高さんと2人の小型車2台の運転で先ずノドグロツグミのポイントを下見し、続いて近くの新川川河口へ出る。
完全に潮が引いた干潟にはユリカモメが2羽とサギ類、イソヒヨドリ、ハクセキレイの他はコチドリだけだった。河口からアンパル湿地に向かう途中で通った上流の橋付近で下車し電線に止まるリュウキュウツバメ2羽を観察する。
アンパルも完全に沖合いまで干上がっており、シギ・チはシロチドリが数羽とアオアシシギが1羽見られただけだった。
これまで不思議に一度も見られなかったカワセミを井上氏が遂に発見。次にシマアジを期待して石垣ダムへ向かう。途中、もう見飽きた感のあるカンムリワシやチョウゲンボウが出る。
石垣ダムはバンナ森林公園の中に作られており、展望台と野鳥観察小屋があり、その両方から違った角度でほぼダム湖の全域が見えた。カモ類はカルガモ、コガモ、ハシビロガモ(最も多く約100羽)、ヒドリガモ、キンクロハジロなどが居たが目的のシマアジは見つからなかった。このほかの水鳥はカワウ、バン、オオバンなど。上空にはミサゴも飛んだ。
午後4時になったので、昨日一足早く石垣に寄った川島氏からは出なかったと聞いたノドグロツグミのポイントへ戻る。ゲートボール場とパークゴルフ場の隣接する場所と、付近の民家の空き地などを探したが、どうやら先週の金曜日(3/21)が最後の観察記録で、それ以後出ていないようだった。午後6時ごろ電線にムクドリの小群がとまった。♂2羽、♀3羽のカラムクドリだった。空き地に壊れ小舟が捨てられており、その中に溜まった水で羽繕いをしていた様子だった。
これを今日の最後に市内を通り抜けて宮良の宿に向かう。フジゲストハウスは以前神奈川支部の探鳥会で使ったそうで、当時は雑木林や藪に囲まれていた面白い環境でオオクイナが見られたとのことだったが、今は周囲のほとんどが宅地として開発されていた。それでも宿の裏にある僅かな藪の中にはまだオオクイナがいるとのオーナーの話。事実、この夜も7時過ぎに奥さんが声を聞いたという。明朝を期待して、10時過ぎに就寝。

3月26日(月)

八重山諸島大旅行の最終日の探鳥はフジゲストハウスの屋上からのオオクイナ探しからスタート。まだ暗い6時15分に屋上に上がり声を求める。ハシブトガラス、ヒヨドリ、シジュウカラ、イソヒヨドリなどが次々と鳴き始める中、外来種のコウライキジやクジャクの声まで聞えるが肝心のオオクイナは今日は声も立てない。
最後まで頑張る大場君を残し、宮良川の一つ先の小川でクロツラヘラサギが越冬していると聞き、これを見に行く。5羽が川の中州に居た。
食後は名蔵ダムへ行くが、静かな水面にはあまり水鳥の姿がない。ダムの周囲の森の中もゆっくりと回ったがキンバトが飛び立つことはなかった。
石垣ダムやバンナ森林公園、アンパルにも寄ったが昨日と同じ鳥が居るのみ。比較的面白かったのは新川川上流の蒲田原水田で、ここではクサシギ、タカブシギの群を観察。4時にノドグロツグミのポイントに戻り最後の期待を掛けたがセグロカモメ1st Winterを1羽見たのを最後にこの大旅行も終了。
石垣空港でレンタカーを返し、空路那覇経由で羽田に戻った。
 今回の旅では期待した鳥の一部が見られなかったものの、楽しい仲間との素晴らしい8日間だった。

与那国・西表・石垣島 観察リスト

2008年3月19日〜26日
(観察種) カイツブリ,カワウ,ウミウ,サンカノゴイ,リュウキュウヨシゴイ,ズグロミゾゴイ, アカガシラサギ,アマサギ,ダイサギ,チュウサギ,コサギ,クロサギ,アオサギ,ムラサキサギ,クロツラヘラサギ,カルガモ,コガモ,ヒドリガモ,オナガガモ,ハシビロガモ,キンクロハジロ,ミサゴ,オオタカ,ツミ,オオノスリ,カンムリワシ,ハヤブサ,チョウゲンボウ,ヒクイナ,シロハラクイナ,バン,オオバン,コチドリ,シロチドリ,ムナグロ,トウネン,アカアシシギ,アオアシシギ,クサシギ,タカブシギ,イソシギ,チュウシャクシギ,ヤマシギ,セイタカシギ,ユリカモメ,セグロカモメ,キジバト,ズアカアオバト,リュウキュウコノハズク, アオバズク,アマツバメ,カワセミ,ヤツガシラ,ツバメ,リュウキュウツバメ,ツメナガセキレイ,キセキレイ,ハクセキレイ,マミジロタヒバリ,ムネアカタヒバリ,リュウキュウサンショウクイ,シロガシラ,ヒヨドリ,シマアカモズ,アカヒゲ,ノゴマ,ジョウビタキノビタキ,イソヒヨドリ,クロウタドリ,アカハラ,シロハラ,ツグミ,ウグイス,チョウセンウグイス,シベリアセンニュウ,オオヨシキリ,ムジセッカ,セッカ,リュウキュウキビタキ,シジュウカラ,メジロ,スズメ,ギンムクドリ,カラムクドリ,ホシムクドリ,ジャワハッカ,オサハシブトガラス

(外来種)ドバト,コウライキジ,クジャク


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