とダイナミックプロROOM
とダイナミックプロの部屋


こういう本がある。

『仕事-発見シリーズ 漫画家』(実業之日本社・1990.10.20発行)

様々なプロフェッショナルが、自らの仕事の履歴や仕事上のテクニック、心構えを 語るという職業読本なワケだが、「漫画家」として豪ちゃんがラインナップされて いる。豪ちゃん自ら筆を執っているだけに、1990年当時の状況が分かる上、習作原 稿も収録されており、資料として一級。

…なのだが、この中に記された「ダイナミックプロ」に関する一節に焦点を当てたい。

要約すると、
「徒弟制度が嫌いで、会社組織にした」
「数人のマンガ家がいれば、一人がダメでも誰かが残って引っ張れる」
「所属マンガ家同士で一緒に成長したかったので、個人名は使わなかった」


結果的にはその「理想」はうまく行かなかった、と締められている。しかし単純に 年月を経た現在一ファンから見るならば、「永井豪」に匹敵するようなマンガ家が そうそう出てくるはずもなく、ジャンルが細分化したマンガ界で「ダイナミックカ ラー」とでも言うべき「石川賢」「風忍」といった才能がいるだけでも十分だとは 思うんだけども。

さて「永井豪とダイナミックプロ」の作品歴をたどると、時にスタッフクレジット された作品に出会う。豪ちゃんの理想と必ずしも同じとは言えないが、プロ作家集 団として普段は別の作品を描いている所属作家が、コラボレーションしながら一つ の作品を作ろうと試みた軌跡なのだろう。

『マジンガーZ』『ゲッターロボ』などのアニメ連動ロボット企画作品は、永井豪 ・石川賢・桜多吾作・よしかわ進・風忍・田村浩一・むらまつり誠・高梨順一とい ったマンガ家とともに、永井博(永井泰宇・高円寺博)・永井隆・菊池忠昭(団龍 彦)がブレイン・ストーミングをしながら意見を戦わせて製作された背景が有名だ。

これは推測でしかないが、少なくとも1970年代の「永井豪とダイナミックプロ」作 品は、そういった互いの持てる能力を一つの作品にまとめ上げる作業が行われたの ではないだろうか。ビジュアルのみの場合もあったろうし、文芸的・テーマ的な面 に及んだ場合もあったろう。映画の監督のように最終的に方向をつけ、まとめ上げ たのが永井豪だったと考えられる。(何しろ出来たものは「豪ちゃん作品」としか 言いようがない…ので「あの作品は誰が代筆した」とかいったヨタ話につきあうつ もりはないぞ)

結果的に牽引役となった豪ちゃんは、他の牽引役が出なかったり、必ずしもいい出 会いばかりでなかった分プロダクションシステムへの失望感が大きいようだが、フ ァンの側からすれば「豪ちゃんが何をどう選びまとめ上げたのか」という視点を楽 しめるのだから、正直なところ申し訳ないが楽しんでいるというのが本音だったり。


ダイナミックプロ作家・共作レビュー

作品(1)『無頼・ザ・キッド』…「永井豪・ダイナミックプロ」作品
作品(2)『あばしり一家・外伝』…「石川賢・岩沢友高・風忍」と…

ダイナミックプロ作家・単独レビュー

作家(1)むらまつり誠のページ…ダイナミックご出身、時代劇の男。

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