デビルマンバリエーション小説版

原作者・永井豪とともに企画のブレーンであった、
実兄・永井泰宇(高円寺博)によるノベライズ版


(小説1)ソノラマ文庫「真デビルマン」全4巻 1981〜82年


1巻/1981.5.30発行 2巻/1981.8.31発行 3巻/1981.12.30発行 4巻/1982.3.31発行

この『真デビルマン』は、豪ちゃんの実兄・永井泰宇氏の実質的な小説 デビュー作だ。泰宇氏は「永井博」「高円寺博」名義にてテレビアニメ の企画や設定、あるいは原作者・ブレーンとして辣腕を振るっていた。 それは『デビルマン』でもそうで、テレビアニメ版のデーモン族の地球 各方面の幹部であるとかヒエラルキーの設定などはほぼ彼の手になるだ ろうコトが、この 文献などで分かる。

そういう言わば、もう一人の原作者とも言うべき人間の執筆になるのが この小説版だ。それだけにマンガの方にある設定の不備やプロットの 矛盾などに折り合いをつけながら、好き嫌いはさておき、原作の肝を外 さない設定変更やエピソード追加、キャラクターの掘り下げを行なって いる。

詳細はもちろん一読を薦めるが、大まかな変更点・追加点を挙げておこう。 重ねて言うが、細かい違いはココでは書き出さない。

(1)明の家族について
原作では消息不明な明の両親だが、ココでは飛鳥了の父とともに デーモンの研究をしている学者として、礼次郎・須弥子の 名前が与えられる。物語冒頭でデーモンに乗っ取られた礼次郎が須弥子 を殺害しようとしながらヒマラヤで行方不明になる描写があり、 明のデーモンと戦う動機に深みを与えている。 また、須弥子の命を本当に奪ったのがジンメンで、原作のサッちゃんの 役回りが与えられている。

加えて、不動夫妻の研究助手として山野という男が設定されており、 実はこの男が右手がトマホーク上に変身するのみの非力なデビルマン として登場。牧村家の最期に美樹とタレちゃんを守るべく活躍、暴徒 によって殺害される。

(2)神の描写
黙示録をベースにしながら、サタンの無意識の覚醒や神の軍団の姿、 人間・デーモン・デビルマンの戦いの外にある意思を描き込んでいる。

(3)デーモンの描写
明が合体する前に、世界各国で起こる奇怪なデーモンが絡む事件の 描写が入って、今の世界が崩れ始めている様子が物語の進行とともに 明らかにされるよう配慮されている。その中で、合体前の明も美樹と ともにヒトを喰らうデーモンと遭遇している。

また、デーモン世界の描写も加えられる。シレーヌがアモンへ愛を 感じていたという設定が追加。それに伴い、太古に彼女の妹・イフェメラを タコデーモンのスカルパとアモンが奪い合う一章が設けられてもいる。

なお、魔王ゼノンがルシフェルとディーテという双頭の悪魔となって いるが、役割としてはそう変わらない。

(4)デビルマンたちの描写
山野の存在や、明に憧れるキーヨ(原作のミーコ)らを通して、 原作にない合体後の能力の発現に差があることを描写している。 しかし、重要なのは短いとはいえ原作では大胆に飛ばしている 牧村家崩壊後の明率いるデビルマン軍団の行動が、多少なりとも されているところが興味深い。

それによると、明は局面によってはデーモンすら越える残虐さを 人類に対して発揮。例えば無差別に誘拐してきた人間と捉えたデー モンを無理矢理に合体させて、デビルマン化したものを軍団員に 仕立て上げるといった行動をしたらしい。デーモンの攻撃とともに 人類滅亡へ手を貸したかのような勢いである。

(5)明と美樹
原作では、「お似合い」のカタチで登場し、それとなく状況とともに 親密さを出していく二人。一方小説は文字による描写というコトで、 明目線で語られる時に美樹の平手ぶりや、どういう表情でどういう肉体 を持ち、どの部分を明が注目しているかが、手に取るように分かる。 コレ、案外原作マンガでは記号的であるが故に、もう一つ読者によっては ピンと来ないところもあるだろう。泰宇氏の執拗なタッチが、想像力を 刺激すること請け合い。「スゴイスゴイマゴイヒゴイ」はないけれど。


後にソノラマ文庫の装丁変えで出た背表紙の別バージョン。
この次の装丁変えでは出ず、(21)電撃文庫版へ引き継がれる。


(小説3)電撃文庫「デビルマン THE NOVEL」全4巻 1999年


1巻/1999.5.25発行 2巻/1999.6.25発行 3巻/1999.7.25発行 4巻/1999.8.25発行


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