『魔王ダンテ』レビュー その(5)

ストーリー・設定などもろもろは 公式サイト(http://www.mao-dante.com/)参照。

#13「終焉」 <2002.11/23(土)>

非常に「閉じた世界」で話が終わってしまったかなー。結局のところ、 「アダムとイブ」はもちろん誰もが予想していた通り、涼と沙織のコトでした。 その辺り、絵としてまとめることを完全に放棄したカタチで、サタンが ひじょーにながーい説明台詞で(そりゃもう、野沢那智さんが呼吸困難に 陥るんじゃないかと心配するくらい)一気に説明。

一応、作品から受け取った俺の読みは、こういうカンジ。

「神」とは戦いを楽しみ、宇宙を放浪するエネルギー生命体だった。 彼らは星を侵略しては、そこの生命体に自らの能力を吸収させ、 自分たちと対等に戦える進化をするまで、いたぶりながら育て上げる。 そして刃向かってきた時に、心底悦びを覚える。

だが、それを楽しんだ後は、遊びを終わらせ次の星に移動するため、 全てを虚無に変えるスイッチを用意している。積み木を壊し、 また積み上げるように。

そしてまた、戦いを嫌い、和解と愛を求めた涼と沙織は一つになり、 スイッチは発動した。即ち宇宙はゼロとなったのである。「その瞬間」 を見届けたサタンと共に。

粒子となり一旦広がり、再び収縮して点となり消えた世界。そして、 その後に映った、生まれたままの姿で手を繋ぎ歩いていく涼と沙織。 彼らにはもはや、闘うために体を覆っていた悪魔の姿も神の鎧もない。

それは、「世界」が消える刹那に見えた涼と沙織の夢か、あるいは サタンのそれ?それとも、神の思惑をついに「創られたもの」の 想いが凌駕した瞬間なのか?

なるほどーと深くうなずく…というか、改めて『デビルマン』を 『ダンテ』の枠で解釈するとこうなるという印象。今まで原作か らあれこれ想像していたファンの予想に近いものではあったでし ょう。涼と沙織の関係については。

あえて語らず絵で見せたラスト、コレはハッピーエンドと見るべ きなのかな?『聖魔伝』つーか『翼の人』つーか。しかし、兄妹しかいない「楽園」 は非常に閉じてしまった感じがして、手放しハッピー感はないけ ど、それは俺のシュミの問題なのかな。

むしろ涼が目覚めたら、 沙織も古代冴子も某国王女も羽根生えた女デーモン(名前覚えてない)も SX(メス)もニッコニコで「おーい」とばかりに駆けて来るなんつー、 『イヤハヤ南友』みたいなラストなら、おかしかったのに(>ギャグだよそりゃ)

それだけに、設定説明役に終始してしまったサタンの存在は、必 要だったのかなあ、と疑問符がついてしまう。同じ狂言回しでも、 詩的ナレーションと、ルシフェルのあざとさの二面攻撃にて処理 した辻先生の『聖魔伝』の方が、俺好みですな、こういうのは。

繰り返し名前を出している『聖魔伝』は、テレビ版『デビルマン』の脚本を 担当した辻真先が「桂真佐喜」名で原作・作画が石川賢という形で、 『デビルマン』のリベンジを選んだ作品。ロミオとジュリエットを 神と魔の世界で成立させるには…といったカンジで、最後は二人が戦う空間も 和解する空間も、戦いを知らなかった懐かしい空間も、そして彼らに 直接関係のない、他の人々の幸福も不幸も、全て、時間の 連続性の中で等価にて投げ出されているのみだ、という状況を絵にまとめていて 感動的だ。

そういう意味ではこの作品は、涼と沙織の関係性のみがクローズアップされた がゆえに、それ以外の世界をあっさり放棄したようにしか見えない。 それが、「閉じたカンジ」という感想の由来なのだが…。 シメ方としてはちょっと綺麗過ぎでしたな。

ちなみに最終回の絵の方は、『ダンテ』平均レベルにて。空間的広がりが 相変わらず少ない画面作りだったのは残念。思い返せばこの辺の 最終決戦の絵作りは、同じアニメでも『デビルマンレディー』の 方がうまかったよねー。

しかしなんだ、これは作画マンの力量云々問う以前に、アレやコレやイベント やら特典仕掛ける金と時間があったら、まず第一に作品のクオリティを上げる ように、枚数を倍以上掛け、スタッフをもう少し長い時間拘束できるだけの スケジュールを組む方法を選ぶのが 先なんじゃないか?…そう思えたなあ。同じ進藤満尾作画監督なのに、1話と それ以外のハナシじゃ思いきりレベル違ってたし。

撮影のバリエーションでもごまかし切れない枚数の絵じゃ、正直辛すぎますぜ。 脚本にしても、最後はどうにも「まとめるための」展開でしかなかった。 これも、上原正三氏が歳をとられたせいなのか、スケジュールが厳しくなったのか、 その辺りが判然としない。

…それにしても、「悪魔四天王」って結局なんだったんだ?


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