『魔王ダンテ』レビュー その(1)

ストーリー・設定などもろもろは 公式サイト(http://www.mao-dante.com/)参照。

#1「悪夢」 <2002.8/31(土)>

アニメ『魔王ダンテ』スタート! …スタート…スタート…スタート…

イントロはご存知のところから…と思いきや、夢の中のみ。山岳部 の設定は消えたようす。オープニングとエンディングに兄妹の秘密 に関して伏線バッチリ張られてますな。文芸的には期待できるが、 演出&作画に関しては今後大いに不安が残るところでしょう。

ちなみにサブタイトル「悪夢」の示す通り、今回は原作にもある 古代のイメージの夢。原始人たちを容赦なく襲い、喰い殺す悪魔 たちの姿を夢に見る涼。その悪魔の顔が涼に…という重要な伏線。

その夢を中心に、涼の引きこもりがちな性格、周りの生活が、緩やかに 描かれている。が、時折差し込まれる悪魔たち、謎の紋章がソレを徐々に 変えて行く…といった演出。退屈な日常が少しずつ「ズレて」いくさま を捉えようという上原正三らしさみたいなものはかいま見える。

問題は絵のクオリティ。『デビルマンレディ』 にも関わっておられた小林利充さん。キャラ表は悪くなかったが…

1話からあの作画は、チト辛くないすか…?作画監督は進藤満尾氏。 おなつかしや〜。『花の子ルンルン』『キャンディ・キャンディ』の キャラデザインした人ですよ。あまりアクションもののイメージがないが。 原画レベルでも、「コップを持つ」みたいな ところに細やかさがない絵。この後、「化ける」のかどうかを期待 したいところですが、うーむ。

主人公・宇津木涼というキャラは、永井豪的というよりも、やや石 ノ森カラーが入ったインナーに悩む人ですが、それを誤解されてな いことを祈るのみでしょうか。

以上は今後次第なのでアレですが、オープニングの歌はダサすぎ(怒)。

http://www.mao-dante.com/ (公式ページ)によれば…
・え?小林利充さんてもしかして描かないの?
・え?コレ基本的には「妹萌え」アニメなの?
・え?ルパンSPやってる人がこんなにいるの?
…などなど楽しい情報満載だぜ!

▼今回のアニメに関しては、上原正三脚本に手を変え品を変え現れている 「異端者の視点」みたいなものが投影されることを望んでたりします。

本人は意識して「異端」になるわけじゃないんだけど、結果として社会に 膜一枚隔てたところから接触せざるを得ない哀しい視点です。

例えば
『怪奇大作戦・24年目の復讐』の水棲人間・木村
『帰りマン・怪獣使いと少年』の少年・佐久間良
『ウルトラセブン・300年間の復讐』のトーク星人
『ゲッターロボ・悲劇のゲッターQ』のゴーラ
みたいに、絶対に「こちら側」と交われないゆえに哀しい存在。

▼英さんから、「文芸的に期待、作画演出ともに不満」は同意見との 書き込み。
(以下元発言より引用)
オリジナル版「魔王ダンテ」が為しえなかった『人と悪魔との狭間』での苦悩が 色濃く出てきそうな雰囲気がしますものでね。
あのOPの最後の絵で、メドッサと沙織が等分に出ており、ダンテ=涼を メドッサが引き込むか沙織が抱き込むのかという興味、
つまるところダンテ=涼は神になるのか悪魔の道を選び取るのかという暗示が 見てとれたというのは、今の段階では深読みに過ぎるかもしれませんが。

そんな苦悩の果てに魔王の道を選んだとしたならば、
その時こそ宇津木涼は真の悪魔王になれるのだろうな、というのが私のオタクな思い込みでっす。

▼で、かいまさん、あっ晴れさんからもツッコミ。まあ、この「AT-X 著名作家シリーズ」はそれ以前も、そういう体たらくだし…みたいな。 スケジュールも典型的なマキマキで余裕がない「らしい」とのこと。

▼タレコミを素直に信じるワケではないにしろ、そういう空気は伝わってくる ような画面ではあるな。中間に立つ業者が多すぎて、現場の動脈硬化及び 制作予算が回っていないてな典型でないことを祈る…と言っておこう。

#2「儀式」 <2002.9/6(土)>

第1話が、宇津木涼の見える範囲での視点で夢と現実を行き来 させて、少しずつ身に迫る「世界がずれていく」ような感覚を 表現していたのに対し、今回は短いシークエンスをポンポン、 とほおりこんで、テンポのいいシナリオ構成。

上原脚本では、『宇宙刑事シャイダー』の「幻のショータイム」 って話がこういう感じで楽しかったな。ああポー様。

宇津木涼が妹の危機を予知して動き回り、キチガイ扱いされる なんて展開も、お得意ですなあ。しかし21世紀の現在、覗かれ て「きゃあああ」なんつって体操服の着替えをしていた女子、 という図が見られるとは(笑)

サタニスト・ベール教授がイタリアはミラノの教会(なぜロー マやバチカンじゃないのか…?)やエジプトに突如出現し、ラ スプーチンもかくやの神出鬼没ぶり。それをまた謎のジェット ヘリがバルカンでボコったりと中々ステキな展開です。やはり しっかり上原さんはWTCの航空機ジャックをご自分の中に入れて おられる。

絵に関しては…いまだ脚本の要求に追いついてない、の感強し。 しかし前回に比べると、個々のカットが短いので、やや気にな らないというところか。…とはいえ、脚本の指示を淡々と右から 左へ絵にしている、といった印象。枚数制限にぴしっと合わせ てるみたいな生真面目さばかりが気になる…。

永井豪マンガのダイナミズムを焼き付けるのなら、もっとアング ルやパースなどの工夫が欲しいというところ。キャラが動く方向に デッサンが狂うくらいの勢いは欲しいですね。絵によってはホント、 間抜けに見えます。それと、「見せずに見せる」方法をもうちょっ と研究して欲しいなあ。ニワトリ裂くところとか。

次回予告は、絵が全く1、2話と違うカンジだぞ。ダンテ登場?

#3「復活」 <2002.9/13(土)>

さかなさかなさかな〜さかながしゃべると〜おやじおやじおやじ〜 おやじがでてくる〜♪(水族館シーンを見て)

絵と演出は、このレベルを最低限キープしてもらいたいものです。 でないと、金払ってまで見る価値は、今一歩足りないままになり ますな。公式サイトで影の描き込みが多いカットは今回のもので したー。

絵柄については、あのメリハリの効いた線はそう嫌いじゃ ない(つーか、キャラデザインの小林利充さんが本来ああいう線だし)ので、もう 少しくどささえ落ちれば、よりOK。 …しかし下着描き込みパンツ丸見えの妹萌えカットはどうなのよ。

1話のレビューで「山岳部設定消えた?」と書きましたが、生きて いましたです、すいません。原作では「説明不要!早く山を砕き、 岩を蹴散らす大怪獣描きたいでガスよー」とばかりに飛ばされてい た(ても通じないワケではなかったが)経緯を補完。ベール教授が ダンテの指令を受けて、山岳部部長に無理矢理、涼を連れ出させる …のあとにお馴染みの展開。

しかし許せないのが、涼が行方不明になる山の描写。消えたとこ ろこそ断崖絶壁だが、その周辺は1960年代の若者たちがピクニック しそうな森と草むら。高原植物が生えている様子を例え図鑑にせよ 見たコトがないのか、美術担当者は。次の回もそのまま(怒)

前回、サタニストに襲われたコトを受けて、沙織に刑事が張り付い ている一方、宇津木康介率いる組織の会議に国防関係者らしき人物 がいるなど、「神の軍団」側にも厚みを持たせています。で、その 組織の研究施設?に培養液か何かに漬けられた影。あれやっぱり、 あいつなんだろうな、神に尻尾振った。

で、涼くんダンテ助けます。アーサー王子のように剣を抜くという 仕掛けはどうかなーと思わないでもないですが、この剣、後につな がるのかな?で、涼くん襲われました、喰われました。この辺り、 変な自粛しないでうまく原作のコマ絵を生かしてて割と満足。

最後の沙織の「兄は生きています!」云々、ちょっと尺調整間違い かな?セリフ一杯一杯だし。「ヒマラヤ」とかいう具体的なセリフ 落ちても良かったかも。

次回予告の絵を見ると、やや不安にならないでもないですが…ダン テ街で大暴れの模様。「怪獣映画」してないと怒るぞ。

▼「Club AT-X」#7
9月7日(土)7:00〜
9月8日(日)16:00〜(再放送)
9月14日(土)7:00〜(再放送)
「やってやるぜ」兄さんと誰だか女性声優の司会番組にて『魔王ダ ンテ』紹介。段取りバリバリで魂の入らない女性レポーターの前振 りや、製作発表記者会見のレポや、豪ちゃんインタビュー。もう少 し踏み込んで欲しいところだけど、『ダンテ』に関してはもう結構 語られているから致し方ないところか。

英さんの見解。(当BBSより抄録)
絵に関しては、決して上手いとは思えんかったです。

主線がやたらめったら太いせいで、そのためセルの色調が全体にどんより暗く汚く 感じられるし、また、細長い目を好んで描く人特有に見られる、 「大きな瞳描けません」状態が見てとれまして。 目を見開いた涼や、沙織などドヘタだよなと感じた次第。

あと、メドッサのアップの時の影のつけ方もどこか間違えているとしか思えず、 なんともババくさい顔になってましたなぁ。

・・・と、根本的には大っ嫌いな絵柄だったのですが、ダンテの描写に限っては この汚く荒々しいタッチが逆にぴったりと当てはまっていたというのがなんとも 複雑な気持ちにさせられますわな。悪魔の描写に限っては、これを見てしまうと もう第1話のダンテがチャチく見えてしまうくらいで。

ベール教授が山岳部のキャプテンを操る必要があったのか疑問。 涼のことを悪魔の眷属であることに気づいていたなら、仲間意識から涼を生贄に するような真似はしないのではないかという気もするし、そもそも涼に テレポーテーション能力があることがわかっていなかったのであれば、 誘い出しても無意味のように思われ。 一応、涼は自分の力でヒマラヤへ飛んでいるわけだし。

あるいはそこは、「山には魔物が棲んでいる」という古来の言い伝えのように、 高山には神の意識が通りづらくて、それだけダイレクトに魔王ダンテのテレパシーが 涼に届きやすかったとするべきところか。

あとは、指導的立場にいるベール教授すらが涼の正体にそれまで気づかなかった ということは、第1話に涼の前に現れた悪魔たちというのは、もしかしてメドッサの 配下の悪魔で、メドッサの意を受けていたのかもと思うものです。 仮にそれがゼノンの仕業であれば、とっとと殺していそうなものかな、と。

>培養液か何かに漬けられた影
私はコレは「アダムとイブ」ではないかと思う。 脳細胞が破壊されているとか、他の脳を移植しなければ、と言っているところ なんかから、神代の時代の兵器であるところのアダムとイブの肉体を、 現代の神の使徒たちが科学的に甦らせようとしている描写に見えました。


ストーリー・設定などもろもろは 公式サイト(http://www.mao-dante.com/)参照。

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