わんど2000/8月


福野駅写真
現代ニッポンの典型的な田園風景か?/長良川鉄道福野駅(2000/08/13)



TKAルート

 突然に3日間の夏休みがとれそうになったので、急遽いろいろな予約をとり、2泊3日で以前から一度は行きたかったTKAルート(立山黒部アルペンルート)に行ってきました。若いときなら「いきあたりばったり」ででかけもしましたが、さすがにこの歳になりますと「体力」「気力」に自信なく、なじみのツアーコンダクター氏が休暇中なのにもかかわらず仕事をさせ、出発前夜に交通機関と宿の予約を確保してもらうというワガママさ。

 ルートそのもののお話など、これは行ったものだけが楽しかった、見て美しかっただけのもの。そのような紀行文を読んでいただいてもおもしろくもなんともないでしょうから、いつものようにちょっとひねった「TKAルート」のレポートとしたいと思います。景色には申し分なし。今後訪ねられるさいの計画たてるのにご参考になればということで…。

 大阪に住まっていてTKAルートを考えるとき、どうしても右回り、つまり富山から立山に入って松本に抜けるという固定観念があるのは私だけなのでしょうか。しかしよく考えてみますと、大阪と北陸の間はJRの特急の便はとてもいいのに反して、信州と大阪の間はかなり不便です。ですから、往路に信州ルートとして、帰路を北陸回りにしたほうが自由度が高くなります。また、首都圏からですとこれが逆になりまして、信州までは便利だけど、越中と東京の間は本数が少なくなります(あるいは新幹線乗り換えで面倒になります)。

立山駅停車中の電鉄富山行各停(2000/08/24)  富山地方鉄道立山駅前で営業していた「自家用車回送業」のかたとの雑談で、今年の夏は松本から入る人が50%増なのに、富山から入る人が20%増に過ぎないらしいということで、なぜ松本からの人が増えたのかよく分からないとおっしゃっていました。回送業のかたにとっては、双方がほぼ同じ数だととても効率的なのだろうとは想像できますが。

 この自家用車回送業、自家用車では通り抜けできないTKAルートにマイカーできた人のために、立山駅前と長野県側の扇沢駅前(または大町温泉)の間、日本海沿いへぐるりと回って車を回送しておくというお商売。乗用車で約3万円くらいでしょうか。私はもちろん電車で行ってましたのでお世話になる必要はありませんが、立山駅前でヒマがあったのでかの業者さんと仲良くなってお話を聞いたというわけです。

 ま、4〜5名で旅行していれば、計算すれば電車より安くつくかもしれませんが、私のように2人だと現地までの高速代やガソリン代、運転のしんどさを考えたうえでの3万円はもったいないと思った次第。特急で景色を見ながらビールを飲む余裕をやはり選びます。

続く(2000/08/25)
go top go end

 旅行代理店などが主催する格安系ツアーでのTKAルートの行程では、たいていはTKAルートをまんなかにして、信州側に上高地美ヶ原、富山側は宇奈月温泉とトロッコ列車(黒部峡谷鉄道)を組み込んだものになっています。もちろんわざわざ北アルプスまで行くわけだし、行くからにはいろいろなところを見て歩きたいのは人情ではありますが、でも「骨休め」のつもりで行った旅行でいつもにも増して時間に追われるようなことには私はなりたくありません。

 そりゃあ貸切バスで次から次へと待ち時間なしに運ばれるのが効率よくていいと思うかたもおられるでしょう。そういうかたはどんどんツアーで回られればいいと思います。たしかにゲップが出そうなくらいいろいろ見て回れるのは間違いありません。

 しかしま、私は遊びの旅では時間にじゅうぶん余裕を持って、しばしば「どうして時間を潰そうか」というような行程で回ります。というわけで、今回も一日目は安曇野に昼前に着いて、そこでどうするかは現地を見てから決め、早い時間に宿に入ってゆっくり温泉を味わい、二日目はすこし早立ちしてまるまるTKAルートにあてる、三日目はとりあえず予定をいれず宿でゆっくりして、これまた現地で考える、そして帰路は午後早い特急に乗って、夕刻には大阪に戻り、夕食はゆっくりと自宅か近くの店でとる、という計画にしました。

 要するに、3日間使ってまんなかの1日だけが目的ということになるわけですが、はじめからそのつもりでおれば、目的地以外の場所がすこしくらい期待はずれでも(けっこうそういうことが多くはありますまいか)、それなりに割り切った「いい旅」だったという印象が残るのではないかと、勝手に考えていたりするわけです。

 しかしながら、信州側のTKAルートの入り口である大糸線方面への直通季節臨時特急「しなの5号」白馬行を名古屋で捕まえるには、新大阪を7時すぎに出る「ひかり」に乗らねばならず、しばしば感じる新大阪までの距離感にまた出発前から悩むことになります。

続く(2000/08/26)
go top go end

〔新大阪→穂高〕

 新大阪に午前7時ごろに着くための公共交通機関のうち、あたりまえのことながら鉄道関係にはまったく問題はありません。新大阪への鉄道アプローチのうち、JR在来線も大阪市営地下鉄阪急電車も、すべてどんどん走っています。問題は自宅から最寄の鉄道駅までの交通、要するに路線バスなのです。

 私の住まいのすぐ近くのバス停から北大阪急行(地下鉄と直通している)千里中央駅までのバスは6時19分が始発です。このバス停から千里中央までだいたい30分、道路事情によっては前後5分くらいのズレがあります。千里中央での乗り換えに5分、千里中央から新大阪までが乗車時間にして約25分、というわけで、このバスでは午前7時に新大阪には着けません。別のルートのバスはもっと時間が遅いうえ、電車に乗る時間が長いので問題外です。よって、どうしても前夜にタクシーの迎えを予約しておかなくてはならないことになります。出かける前からの大出費。比較的交通の便のよい私のところ(*1)でもこの状態ですから、大阪近郊の多くの住宅地からはもっとたいへんだと思います。


    (*1)大阪空港へなど、路線バスで 210円約25分ですから、国内線に乗
    るときはたいていゆっくりとできます。梅田にでるにも50分ほど。

 とはいえ、年に何回もない旅行のためだけに喧騒とした都心部に住む気もありませんが、お仕事で早い新幹線をしばしば利用しなければならないかたなどはけっこうストレスだろうと思いました。

 で、タクシーだとけっこう早く着きすぎて、新大阪で朝ご飯。7時前後に開店する食事ができる店が改札の内外にいくつもありますが、私たちが気にいってるのは改札の中の一軒。禁煙席が指定してあり、味噌汁がまともなダシで作られており、米もそこそこうまい。改札外の某店はインスタントの味噌汁かと思える定食でけっこう高いので二度と入りません。

 気分では駅弁と缶ビールを車内でとも思いますが、平日の朝の上り新幹線でビールを飲むのはちょっと気がひけます。それに名古屋までだとあまりゆっくりはできません。ビールの楽しみは中央線までおあずけとします。

続く(2000/08/28)
go top go end

 中央西線の特急「しなの」に使われている 381系という車両は、曲線の多い線区をできるだけ早く走るように工夫された「振子電車」の草分けです。鉄道の曲線では、その曲がり具合に応じて遠心力を減らすために路盤を内側に傾けてあります(「カント」といいます)。カントを大きくとればそれだけ早く走れますが、逆に遅い列車は内側に傾きすぎます。そこで、曲線部分で車体そのものが内側に傾くような構造にされたのが振子電車で、このおかげで山間部のカーブの多い線区で所要時間が大幅に短縮されました。

大糸線普通電車4226Mレ松本行(穂高2000/08/23)
 ところが、この車両に乗りますと、カーブのたびに普通以上に左右にゆすられることになりますので、乗り物に弱い人が「酔う」ことで有名です。私のパートナーも中津川から木曾福島あたりの本格的な山線になったあたりでダウンしていました。しかし私は揺れには相当に強いので、ふわふわとビールの酔いも伴ったいい気持ちでゆられ、外の景色を楽しんでおりました。

 最近デビューしている新型の振子車両は、コンピュータ制御でうまくゆれをコントロールしているとのことで、乗り心地はかなりよくなっているようです(たしかに昨年乗ったJR北海道の「スーパー北斗」は快適でした)。

 それにしても名古屋から松本まで2時間あまり。旧型車両を使っている季節特急なのですこし遅いのですが、それにしても早くなったものです。

 松本からの大糸線は私にとって初めての乗車。旧信濃鉄道ということで、私鉄が造った路線に独特な駅の多さと線形の微妙な特徴は鉄分の多い者にしか分からないかもしれません。特急ながらごとごとと走りも変わった11時18分、最初の目的地である「穂高駅」に到着したのでした。ガイドブックでレンタカーの印がある駅なので、空いていれば車を借りようというもくろみは、駅前に出てみごとにはぐらかされたのでした。

続く(2000/08/29)
go top go end

 昨年らいしばしば行っている北海道でも感じていることですが、かなり有名な観光地のアプローチになるところであっても、JRの駅や駅前のさびれかたが尋常ではありません。安曇野や大王わさび園などの入口である穂高駅も例外ではありませんでした。

「夢」の水車 私のようにしこしこと特急券を買って、路線バスくらいあるだろうとタカをくくってでかけてくるノーテンキな観光客なんて、最近ではほとんどいないのでしょう。自家用車でササッと走り回るか、貸切バスで段取りよく効率的にポイントをみてまわるかという観光がほとんどなのでしょう。つまり「駅」を使う人がほとんどいない。だからバスもない。足はタクシーを使いなはれ、ということらしくて、穂高駅前にはタクシーが数台と、レンタサイクル、わさび園まで1回乗車 100円の30分に1本の巡回バス。食事もまともなところがありませぬ。真夏の炎天下、自転車は私たち熟年にはちょっとつらいということで、とりあえず巡回バスで大王わさび園へと向かいました。

山岳美術館 黒澤明監督の「夢」のロケ地になった水車小屋(右写真)が見たいということでこの有名スポットに行ってみたのですが、ま、やはり「有名スポット」でした。おそらく二度とくることはないでしょう。

 で、巡回バスで駅に戻って、こんどは山沿いにある美術館などのほうに行くのに、私たちはめったに旅先でも使わないタクシーを利用。で、これがまた商売っ気露骨で、展望のいいところに行きましょうとか、歩き回るには距離があるから貸切して回りますとか、途中ではタクシーはこないから自分をまた呼んでくれとか、かなり気分を害してしまいました。適当にあしらって山岳美術館(左写真)前で下車。

 炎天下の自転車を嫌ったのに、それからの数時間は紫外線の強いアルプス山麓、おそらく冬のスキーシーズンにはそれなりに賑わうのだろうけど、真夏の今は自家用車の観光客すらほとんどいない車道を、とぼとぼと歩いてジャンセン美術館やガラス工房などを見て回ったのでありました。そして今夜の宿は地図でみるとかなり山の中。とても歩いていけない距離がありそう。さてタクシーを捕まえられるのかと、暑さと歩き疲れで無口になりつつ勘をたよりに広大な駐車場をさまようのでした。

 教訓、やっぱり車社会だ。

続く(2000/08/30)
go top go end

 しかし、なかなか黒部まで到達しませんね :-)。

 唐突に「アイマックス・シアター」なるマルチスクリーン映画館(かな、見ていないのでよく分かりません)というものがあり、まるで砂漠でたどりついたオアシスのようなあんばいでその駐車場に空車のタクシーを見つけました。

 はじめのタクシーの運転手さんは「こんな田舎ですから出先で空車なんてありませんよ。私を無線で呼んでくださいね」と言ってましたが、ま、話半分と思いつつも、これだけフリーの観光客がいないとさもありなんと不安になりかけていたので、空車を見つけたときはほんとに嬉しかったのです。

 そしてそこからホテルまでの距離は、やはりとても歩いていけるようなものではありませんでした。着いたホテルは予想以上にいいリゾートホテル。ちょっと早く着きすぎたかと思いつつチェックインしたものの、ゆっくりと温泉に入って静かで涼しい林間の風を浴びながら飲むビールは最高でありました(けっきょくやっぱりここでもビールだったりしますが…)。

 早朝の迎車から、夕刻の偶然の空車まで、タクシーで始まってタクシーで終わったほんとに長い一日でした。そしてまた明日はまたタクシーを呼んでいただかねば穂高駅まで出られないのであった ^^;

「わんど2000/9月」に続く(2000/08/31)
go top go end

長良川はちょっと落ち着いたか

 週末にちょっとヒマができましたので、気分転換もかねてひさしぶりに長良川方面に行ってきました。ちょうどお盆の帰省ラッシュにかかりそうだったのが心配でしたが、いまはインターネットでのJH(日本道路公団)の詳細な渋滞予想などがあって、時間帯をうまく選べばそれほどひどい目に会わずにすみます(じっさいこの渋滞予想はかなり正確だったように思います。たいしたもんだ)。

 そして12日には東海北陸自動車道の開通して間もない白鳥から荘川までを走ってきました。旧国道(158 号線)経由で荘川まではかなり時間がかかったのですが、さすがに高速ですと早い。長良川の汚れの原因のひとつだった高速道路の工事に対するちょっとした怒りも忘れて便利さ快適さに酔ってしまいました。人間って勝手なもんです。

 荘川ICから国道をひるがの高原に戻り、定番の「分水嶺公園」に立ち寄ったあと、最近では本家の郡上八幡より徹夜踊りが盛況だという白鳥町をちょと覗いてふたたび高速道路を南下し郡上に戻りました。ひるがのから大日岳周辺のスキー場開発も一段落しているようですし、高速道路は中部縦貫自動車道も含めて長良川流域での工事が終わっており、郡上で見る長良川の汚れは見た目だけは一時ほどひどいものではなくなっているように思えました。

長良川での鮎釣り
長良川中流域での鮎釣り(2000/8/12)

 サクラマスが激減し、最下流ではシジミがほとんどとれなくなっているということで、あとは河口堰を開いたままにすれば、ひょっとしたらもう少し昔の清流に戻るのかもしれないなあと非現実的なことを考えつつ、お盆初日の深夜に帰阪したのでありました。

(2000/08/13)
go top go end

タイヤ

 私は普段は車に乗っていないのですが、パートナーが使っている車のタイヤがかなり磨り減ってきました。この週末にパートナーの実家にひさしぶりで行く予定をしていて、高速道路の走行にちょっと不安を感じました。ドイツのメーカーのタイヤで、長持ちすることに定評はありますが、さすがにもう4万キロも走っています。昨日の昼休みを利用して近所の自動車用品量販店で新しいタイヤを入れてもらいました。

 車から遠ざかっていたので、いまタイヤがどのくらいの値段なのか知らなかったのですが、195R60/14 というサイズのものはだいたい1本1万円ちょっとというところでした。ただ、このサイズは「おとなしいセダン」用のものはあまりなくて、見るからに走り屋が好みそうなアグレッシブなパターンの溝のものがほとんどです。わが家の車はけっしてスポーツ系ではなく、ワゴンだからということで太いタイヤを履いているだけなので、おとなしい系銘柄の選択枝がほとんどありません。けっきょく国産品より千円ほど高いフランス製のものにしました。ま、このメーカーのものもかつて私が乗っていたシトロエンでなじみのものではあります。

 それにしてもいつも思うことなのですが、ギリギリまで使いこんだタイヤを新品に交換すると、まるで別の車に乗っているような乗り心地と静かさになります。毎日すこしずつ消耗していくタイヤの消耗の具合は実感できず、知らず知らずにどんどん弱っていっているわけです。人間の身体も同じことで、急な病気のときはそれと分かるものの、劣化老化についてはじわじわと進行していくわけで、ふと気がつくととっても体力は低下していたというような具合になっているはず。というようなことに考えが及ぶこと自体が歳をとった証拠なんでしょうが。

 身体はタイヤのように新しくするわけにはいきませんしね。

(2000/08/09)
go top





ページの先頭へ
「わんど2000」の目次へ
湾処屋摂霞亭へ
湾処屋のホームページへ