Chapter Fifty-one

第51話


今回も都合の良いデータを見つけることができた。探してきた所は防災科学技術研究所 地震・火山防災研究室のKyoshin Net (K-NET)(http://www.k-net.bosai.go.jp/)だ。ここには全国1,000ヶ所に設置された加速度型ディジタル強震計による豊富なデータが蓄積されている。この中から98年9月3日の岩手山南西の地震(M6.1)を見てみよう。

岩手山は南部片富士とも呼ばれ、東側のなだらかな曲線と西側のごつごつした稜線をもつ美しい山です。朝に夕に岩手山をながめて暮らしている盛岡の人にとっては、眺めるたびに自然にせすじを伸ばしてくれる精神的バックボーンになっています。火山活動が活発化してライブカメラ(http://www-cg.cis.iwate-u.ac.jp/live_camera.html)が設置されたので世界中からいつでも見ることができます。

観測地点毎の加速度は下の表にまとめたが、おおむね震源から離れるにしたがって最大化速度は小さくなっている。加速度は北南方向、東西方向、上下方向の3成分で測定される。サンプリングは100Hzで行われている。

生データを概観してみよう。

まず、最大の加速度を記録した大志田では他の観測点に比べて短い時間に強い地震波が集中している。(上から北南方向、東西方向、上下方向)

一方、西根町では加速度が細かいパルス状に発生していて、その時間が長いようだ。

大志田の北南方向のデータ(下の絵の上のグラフ)をWavelet解析で第1成分だけ取り出してみると中央のグラフになる。残りの成分は一番下のグラフだが、意外に素直な波形になっている。

一方、西根町では同様なパルスは見られるがより広い時間で分布している。残りの成分は大志田に比べて複雑になっている。

盛岡では細かなパルス状の加速度はさほど目立っていない。

釜石では、記録開始が13秒遅れているので、同時刻で比較する場合は1300データずらす必要がある。盛岡でのデータとの大きな違いは信号が二段階に別れていることである。

盛岡と釜石の比較を低解像度側で行うと、振幅の時間変化がわかりやすい。

地震計の生データを初めて観察したが、震源地付近では細かなパルス状の振動が見られるなど面白いことが多かった。学校で習ったP波やS波の速度差によるものなのか、距離を隔てると波形が変化していく様子も見ることができた。地震波の解析はWavelet発祥につながる現象なのでなじみやすいのかもしれない。3方向の加速度データを曲座標でとらえると伝搬の方向や振動の性質などが分かりやすいと思い検討したが今回はまとまらなかった。

今回でWavelet解析は終了となります。次のアイデアを考えないと、、、、

See you!


Nigel Yamaguchi

戻る