Chapter Fifty

第50話


前回の話は目標が高すぎたようで力及ばずの感があった。今回はどんなときにウェーブレット解析が使えそうなのか考えてみる。

ちょうどよい生データはないかとWebで探していて見つけたのは鹿児島大学教育学部の気温連続測定・自動送信システム「CatRace」(http://www-rk.edu.kagoshima-u.ac.jp/catrace/)です。

このホームページから鹿児島大学教育学部の戸外の気温データをいただいてきました。このデータは30分おきの測定で1ヶ月ごとにファイルにまとめられているので、1日が48点、1ヶ月で1488点の貴重なデータだ。初めは気象庁の外郭団体のCD-ROMを注文しようかとも考えたがこのサイトを見つけたのでやめました。試しに、96年、97年、98年の12月のデータをグラフにしてみた。温かな所なんですね。寒い地方でも誰かやってくれると面白いんですがね。
(上から96.12、97.12、98.12)

だいたい1日の中で5から10℃の温度差があるけれど、たまにどこが1日なのかわからないほど変化が少ない日もある。大きな気温のうねりを取り去ってみよう。97年のデータでは次のようになる。

実際のデータ数が少ないのでの前後に適当なダミーデータをつけてこのVIに渡している。Fiddle Levelの表示を見れば分かるように1日の変化を見るために4段階、5段階の係数を主に使っている。1日の温度変化幅が時々小さくなっていることが容易に見て取れる。また、1段階、2段階の成分をゼロにしていることから、2時間程度の間の細かな気温変化はスムージングされている。

上のグラフから除去された低解像度の部分と、高解像度のい部分はFiddle Levelを変更して確認することができる。

ここで行った解像度帯域毎のデータ解析は、もちろん気温以外の身近な現象にも応用できそうだ。ウェーブレット解析では無限に続く信号を想定していない分だけFFTよりも融通が利きそうな気がする。

上の例ではドベシの4次のウェーブレットを使ったが、Haarウェーブレットではどうなるだろうか?

全体的な波形は似ているが、ジャギーが目立つのが大きな違いといえるだろうか。

今回は鹿児島大学教育学部の気温データを材料にWevelet.VIの動作を見てきた。実際に使ってみるとデータ数が適当でない時には分解レベルが制限されるので、このVIの中で必要に応じてダミーデータの追加を行うように改良したほうが良いと思った。

次回は、もう少し別の例を探してみよう。

See you!


Nigel Yamaguchi

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