森田瞳のひとりごと

「さくら」

雨があがって青空が見えた
満開の桜並木をひとり歩く

立ち止まり桜を見上げる
春の明るい空色に淡い紅色が映えていた
毎年の事なのにその美しさに圧倒される

気が付くとわたしの瞳は涙を浮かべていた

なぜ?

もう一度見上げる

そして気付く
わたしはあの人を思いだしていたのだ

桜の花はあの人の肌の色
空はあの人の瞳の色
何年経っても決して忘れられない記憶

今、目の前の風景があの人への想いをわたしに思い出させたのだ

しばらくその場に留まり
あの人への想いを空に託す

そしてわたしは真っ直ぐ前を向いてふたたび歩き出した



<<もどる||TOP||