出  国 

 

 2007年12月30日

 今回は珍しく富山発の飛行機である。年末年始のこの時期だから航空券は当然死ぬほど高い。太貴了!ただ、家から近いし駐車場が無料なので、ラクはラクである。本屋へ立ち読みに行くような感覚で、空港の駐車場に車を入れる。この日は中国も日本も丁度この冬一番の寒波がやって来ている。従って北京の予報は当然のごとく氷点下で、しかも1週間ずっと晴れである。そして富山は今日から雪マークが続く。中国では恐らく傘はいらないが、駐車場から空港建物のわずかの間だけ傘が必要である。これがなんとももどかしい。

 国際空港では通常、旅行会社のカウンターを探す→チェックインカウンターを探す→出国審査場を探す→自分の飛行機の搭乗口を探す、という風にオリエンテーリング張りのスタンプラリーが待っているわけだが、ここの空港は全部一つづつなので迷いようが無い。ラクだがなんか物足りない。脱衣所で靴下を脱ぎ忘れて浴室に入ってしまったような、なんとも言えない違和感を覚える。

 それと一つ心配の種がある。天候である。寒波は丁度今日から来ているので、朝から雨が降っている。雨は夜更け過ぎにならなくても、昼くらいから雪へと変わるだろう。フライトは12:20。多少揺れる事は覚悟せねばなるまい。それよりむしろ、寒気が長く居座った場合に、帰りの飛行機が無事降りるのかが心配である。サラリーマンたるもの、帰国の次の日は当然出勤である。解決策は?ま、そうなった時はそうなってから考えよう。・・・というのは、非常に甘い考えであった事を、後ほど知る事になる。

 手続きは全く滞りなく進んだ。そして、そろそろ搭乗かなという頃にアナウンス。なんと上海からの飛行機が、着陸できずに上空を旋回しているというのだ。富山空港は川原に滑走路があるちょっと変わった空港だ。そして、近くに高速道路や高圧電線が通っていて、設備が整備しにくく着陸が難しいらしい。その為欠航が多いといううわさは聞いている。実際以前小松便で帰ってきた時、こちらは無事着陸したが、富山便は欠航だったという。しかし、「まさか自分の飛行機は欠航しないだろう」という、根拠の無い自信はある。

 この便を利用し慣れている風情のビジネスマンが、「あぁ、こうなるともう駄目ながやちゃ。」と携帯であちこち連絡しはじめている。でも、外の天候はそれ程悪い感じでもない。それにアシアナ航空が直前にソウルへ飛び立っている。乙女心と北陸の天気は変わりやすいのである。しばらく旋回しているうちに晴れ間も出て、機長は鮮やかにランディングを決めるだろう。

 そこへ再びアナウンス。「お、着陸したか?」と思うも、なんと着陸を断念し関西空港へ向かったという。関西空港から再び富山を目指すかどうかは未定だという。ちょっと雲行きが怪しくなってきた(まぁかれこれずっと怪しいのであるが)。搭乗客の多くは読売ツアーで、添乗員からますの寿しおにぎりを配られている。そういえば今は昼時である。普段旅行中は余り間食をしないので食料を携帯する習慣は無い。ここは自販機と免税店しかなく、お土産物を買って食べるのもなんだし。などと思っているうちに免税店は店を閉め、「到着便着陸後に開店します」と貼り紙が貼られてしまった。そもそも出入国の時はあまり余計なものを持たないようにしているので、日本円は預け入れ荷物の中だ。つまりまぁ、元しかない。当然機内食とビールを当てにしているので、ご丁寧にも朝食は抜いてある。しかし、こんな時おばちゃんたちは四次元ポケットから歌舞伎揚げやチーズおかきなどを次々に取り出して食べているのはさすがだ。サバイバル能力の差は思わぬところで浮き彫りとなる。

 やがて、その免税店のシャッターが開き始めた。そしてアナウンス。「お、帰ってきたか!」しかしそれは、欠航を伝えるアナウンスであった。



その先の中国へ