紫雅賓館
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紫雅賓館
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中国の川といえば、大黄河である。しかし、この国の時代の流れはむしろ、常願寺川である。川幅が黄河で流れの速さが常願寺川と言った方がいいかもしれない。私が行った数年の間に、ポケベルが携帯に代わり、VCDがDVDに代わり、トロリーバスが地下鉄に代わった。タクシーしか走っていなかった道をマイカーが埋め尽くし、街にコンビニがあふれ、新幹線が走るようになった。やがて、これらのものもすぐに過去へと押し流されてゆくのだろう。今日見つけたものは、今日中に見ておかないと今後出会うことは無い。日本ではうわべだけの言葉になってしまった感のある、一期一会という言葉が、この国では非常に重みを増してくる。とにかく今日見られるものを見ておかなければと、次々に課せられる任務にもがきあがいた、涙の記録である。
2006年12月27日
北陸自動車道を上海とは逆の新潟方面へとひた走る。富山発上海便は料金が高く、時間帯もイマイチで、しかも日程が合わないので、今回はやむなく新潟発になってしまったのだ。新潟くらい余裕だと思っていたが、雨風が強く非常に神経を使い疲労する。こんな状況で飛ぶのだろうか。富山空港で上海便が結構あっさりと欠航するという事が頭をよぎる。新潟まで行って欠航ではいたたまれないと思いつつも、とりあえず行ってみるより仕方がない。ようやくたどり着いた空港は至って平穏だ。新潟空港では第四銀行の出張所があり、日本円を人民元に変えることができる。1,000元パックで、17,300円。当時のレートは1元=15.2円だから結構レートは悪い。まぁ浦東空港でも手数料は結構取られるし(250ドル以下は50元)、時間も掛かったりするので仕方ないと言えば仕方ない。日本国内で人民元が手に入るのは貴重な存在だし、日本語でやり取りができるし。でも、実は浦東空港には自動両替機なんてものが出現していたので、これを使うのがいいかもしれない。
新幹線があるせいか新潟空港は閑散としているので、手続きは楽である。結局定刻にあっけなく離陸する。中国東方航空の機内食は日本食であったが、上海航空の富山便よりもおいしいようである。飛行時間もあまり変わらない。少し早く浦東空港へ着陸した。
■ミッション1 浦東空港近くのホテルを発掘
まず最初に課せられる任務は、最終日のホテルを予約するということである。富山便ほどではないが、新潟便も朝が早い。市内に泊まると死ぬほど早起きをしなければならない。そこで、最終日は空港近くの宿を確保しておきたい。その宿がいい所なら、今後富山便を使うときにも便利である。実はもう大体見当はつけてある。錦江之星というホテルが近くにあるはずである。
ホテル案内のカウンターを求めて1Fへと降りると、あるある、ずらりとカウンターが並んでいる。花園飯店、ヒルトン、シャングリラ・・・錦江飯店!いや、これは別の高級ホテルだ。国内線側へ近づくにつれだんだんとホテルの格が下がってゆく。そして、いよいよ残り少なくなってきたあたりには汎用のカウンターがあり、藤岡琢也風のおっちゃんが笑顔で手招きしている。非常にブキミである。一応「錦江之星の予約はできるか?」と聞いてみると、「有!」と言い電話を掛ける。しかし、空きがないらしい。そこでパンフを出して、このホテルはどうだと言う。250元だが錦江之星より新しいらしい。蘭沁大酒店というホテルで、空港から6〜7分。しかも無料のシャトルバスで送迎をするという。パンフを見ると部屋の窓には素晴らしいオーシャンビューが広がっている。もしかして、これは大当たりなのでは?おっちゃんに泊まることを告げミッション完了。1月2日19:00にここに集合と言われる。
■ミッション2 交通カードをゲット
さて、次の任務は上海交通カードを入手することである。いわゆるPASMOの上海版であるが、上海のPASMOは地下鉄・バスだけでなく、タクシー、輪渡、リニアモーターカー、観光トンネルと、白タク以外はおよそ何でも乗れてしまう優れものだ。これさえあれば、バスの運賃箱の横で、5元札しかなかったために小銭を回収するような仕打ちを受けることも無くなるし、それに懲りて財布の中を1元玉でいっぱいにすることも無くなる訳だ。これは買うしかない。
リニアのカウンターで交通カードが有るか聞いてみる。しかし返ってきた答えは「没有!」交通カードは地下鉄のものだから、地下鉄の駅で買えと言う。まぁここは中国、驚いても仕方が無い。龍陽路で買おう。その代わり、航空券を見せて10元引きのチケットを買おう。リニアは片道50元。高いと言われ空いている。しかし、タクシーならお金も時間ももっと掛かるし、なんたって世界最速430km/時である。高いと言われるのは少々かわいそうな気もする。成田空港にこれがあったらもっと喜ばれているのではないかな。でも実は、騒音を考慮して、朝は300km運転。また省エネの為夜も300km運転になるらしい。少し開通を急ぎ過ぎたのかもしれない。
龍陽路でまた交通カードは有るかと聞いてみる。「没有!」。まぁ中国・・・。そして上海火車駅でようやく「有!」と言われミッション完了。係りの人は押金(デポジット)30元をこの外人が分かっているのか心配だったらしく、何度も念を押していた。
■ミッション3 鎮江行きの切符をゲット
上海火車駅でまず時刻表を手に入れ、明日の鎮江行きの列車をチェックする。すると「軟席切符売り場」というのが新しくできていた。明日は一応日本人らしく軟座を取ろうと思っていたので入ってみる。小さい穴があるだけの窓口ではなく、低いカウンターでPC画面を見せながら応対してくれるので、言葉が不慣れでも買いやすい。対応も親切だ。便利になったと思う。しかし、残念ながら第1希望の軟座は取れず、なんとか朝早い特快の硬座を確保。新空調硬座特快38元也。昔は硬座が取れず軟座を勧められたものだが、今は逆のようである。
旅の楽しみでもあり憂鬱でもあるのが、宿探しである。宿の当たり外れは旅の雲行きを大きく左右する。しかし今回はその心配が要らない。お気に入りの宿北角城大酒店があるからである。いつもの地鉄1号線へ。早速交通カードをかざしてみると、残高が表示され「お通りください」と出る。混んでいる切符の販売機に並ばなくてもいい。これは楽だ。通いなれた延長路の駅を出て、北角城へ向かう。しかしどうも風景が違う。見慣れたコンビニや牛肉面屋は店を閉め、巨大な建築物を作っている。大きなお茶の市場が付近へ移転するというニュースを聞いたことがあったが、どうもそれを作っているようだ。北角城もなくなっているのではないかと心配したが、これはあった。が、窓に明かりが乏しく様子がおかしい。フロントへ入っていくと、見慣れない親父が電話をしている。受話器を肩に挟んで椅子にふんぞり返ったまま、どうしたと聞くので、「今晩空きは有るか?」と言うと、「今年は無い」と言われる。フレンドリーなスタッフ達はどこへ。なんかがっかりした気分で途方に暮れる。
■ミッション4 駅近くの宿を見つける
思いがけず新たな任務を課せられてしまった。夜は遅くなり、腹は減るし荷物は重い。確か上海駅北広場には宿があったはずなので、とにかく上海駅行きのバスに乗り込む。北側から来るバスは北口へ着くと勝手に思っていたが、思いがけず表口に着いてしまった。先ほど上がってきた地下鉄の出口が目の前にあり、振り出しに戻ったような寂寥感に見舞われる。とりあえず近くの宿へ飛び込むが「外人は駄目だ」と断られる。今でも外人お断りはあるんだなぁと思う。そこへ客引き登場。結局あんたが頼りか。「安いよ。いい部屋だよ。すぐそこだよ。駅まで歩いて6〜7分だよ。でも、車の方が楽だから乗んなよ。」と車に載せられれば、駅はみるみる遠ざかってゆく。10分ほど走ってホテルの前に車が停まる。確かに駅の北広場まで末次がダッシュして6〜7分と言えなくもないなぁというような場所である。180元の部屋はふさがっているので200元の部屋しかないと言う。料金表にはもっと高い値段が書いてあったし、部屋を見てまぁそんなもんかと思ったし、他に当てもないのでここにする。紫雅賓館。
少し近所を探索してみる。夜でも活気があり、さまざまなジャンルの屋台が出ている。宿の下にも火鍋屋があり、多くの客で賑わっていたので入ってみる。小姐にオススメを聞いて鍋の具が決まってゆく。羊のしゃぶしゃぶとチンゲン菜、かにかまぼこ、猪脳・・・?!どうも豚の脳味噌らしい。いくってもんでしょう。そしてビールは・・・麒麟麦酒の服を着たお嬢さんがいたので、当然オススメは麒麟第一道麦汁となった。これは一番高級で10元である。そして、しばらくしてとんがり帽子の鍋が設置される。煙突の中には炭が入っていて、やがてスープが沸騰してくる。生姜やナツメなどの薬味をスープに投入。手元にはピーナッツのたれと、それ用の薬味が来る。豚の脳は白子のような濃厚な味わい。羊肉は分厚く切られ、臭みが無く大変においしい。やはり冬は火鍋に限る。
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交通カード
今回の旅で初めて、交通カードなるものを導入した。日本でもトカイではPASMOなる名前で普及していて、自動改札にかざすだけで地下鉄に乗れる優れものだ。一応富山でもPASSCAというのがあるのだが、乗れるのはライトレールだけなので、いまいち全能感が少ない。そこへくると上海のヤツはすごい。バス、地下鉄に加えて、タクシーや輪渡まで乗れてしまうので、その効力は警察手帳並みである。上海地下鉄の券売機は混んでいることが多いので、そこをショートカットできるのは爽快ですらある。チャージは街の至るところにあるコンビニでできるのも便利。しかも、タクシーに乗る時に「交通カードは使えるか?」と聞いておけば、白タクの踏み絵にもなる(ような気がする)。
カードには、ノーマルのタイプと記念カードのようなものがある。更には腕時計タイプのやつがあるらしい。それはちょっとテクノでサイバーなのでかなり欲しかったが残念ながら見つからなかった。
地下鉄で、直前に自動改札を通過した若いお嬢さんの残高がチラリと見えた。\692.00。日本円で1万円ほどになるが、地下鉄が3〜6元ほどで乗れることを考えると、5〜10万円ほど入っている感覚だと思う。まぁどうせ使うなら多く入れておけばいいのであるが、盗難紛失破損肥溜落下などのリスクを考えると、なかなか男前チャージである。ちなみにこの日本人は70元(約1,000円)のチキンチャージだ。