2005中国(北角城大酒店)
相変わらず体調が良くない。宿も気に入ったので、3日の延泊手続きをする。さあ、まずは薬を買いに行こう。実は、この場所病院も密集しているようで、薬局も多い。その一軒に入り、中国語とジェスチャーと筆談を交えて、のどの薬とトローチを頼んでみた。トローチは通じなかったが、のど飴のようなものは買えた。それと、薬剤師おすすめの、妖しげな瓶に入った薬を買った。これは、香港製の黒いどろりとした漢方薬で、後でテレビを見ていたら、あの真田弘之が映画の撮影で声が出なくなった時に飲んだと紹介されていた。
薬を入手して気が大きくなり、街に出かけることにした。実は豫園へは一度も行った事がなかった。上海で一番有名な観光地である。これはまずいと思い、行ってみる事にした。この宿は地鉄駅まで歩いて行けるので都合が良い。一気に街中まで連れて行ってくれる。駅を出るとユニクロの看板が目に入る。試しに入ってみると、品揃えから値段まで日本と全く同じという事に驚く。ここから公共汽車26路に乗り込む。最近減ってきた空調無し一元のバスから上海の街を眺める。地下鉄は便利だが、やはり公共汽車は面白い。バスは外灘に着いたのでここから豫園まで歩いてゆく。豫園までの通りは浅草の仲見世を中華風に味付けしたと考えればわかりやすい。観光地ではあるが、お土産はリーズナブルな値段で売られている。路地から建物に入ってゆくと、そこはラビリンス。衣料品、民芸品、電気製品ありとあらゆるものが、昔の秋葉原のように狭い空間を極度に有効利用して売られている。
豫園の中にフードコートがあったので入る。カフェテリア式なので、外人でも注文しやすい。そんな中になんとザリガニがあった。日本でも食糧難の時代に食べたという話だけは聞くが、評判はあまり芳しくない。でも中国人カップルなんかが食べていてちょっと気になる。まぁネタ的においしいというわけで、食してみる。食べるところはそれほど多くない。味は・・・強い塩と八角などで丁寧に味を消してあるので、ザリガニ本来の味というのはいまいちよくわからなかった。まぁ、このような味付けをするというのは、それほどおいしいものではないのかなとも思うが。
「ロレクス、センエン、ヤスイネ」と声を掛けてくる。こういう場合は、とてつもなく安い値段を提示するとすぐに去っていくものである。「タカイネ、5ゲンナラ、カウアルネ」ところが、予想外の展開になった。彼女は「好阿!」と言ったのだ。どうやら落札してしまったらしい。というわけで、生まれて初めてのロレックスは、秒針が印刷で1日10分ずつ遅れる気まぐれなヤツである。
夕方、外灘を散策す。記憶では欧風建築群がライトアップされ、幻想的な風景になるはずだったが、くすんだ風景のまま、あたりはどんどん暗くなってゆく。観光隧道なるものができていたので試しに入ってみる。黄浦江をスキーのゴンドラリフトのようなものに乗ってトンネルでくぐるのである。往復で40元と結構強気な料金設定である。トンネルだからそれほど面白いものではないが、ネオンを使った微妙なアトラクションで、少しでも気分を盛り上げようとしてくれている努力は理解できる。
地上へ這い上がると、上海のシンボルである東方明珠塔の近くに出る。これも、盛大にライトアップと思っていたが、やはりくすんでいる。おっちゃんが、寄ってきて東方明珠の立派なガラス細工を売りつけてくる。もって帰っても、扱いに困り途方に暮れる大きさである。断り続けるが、諦めない。冬は観光客も少なく、あまり売れていなさそうである。しかし、どうしても買わないとわかると、今度は次善の策として、高さ3センチ程のキーホルダーを出してきた。どうやって作るのか、ガラスの四角柱の中心に、東方明珠が立体的に彫られている。これなら扱いに困ることはないし、なかなか綺麗だ。しかし、この外人はこれでさえ、情け容赦なく値切ってくるのである。
|
||
|
||
|
||
|
||
|
夕食は羊の火鍋。テーブルに携帯コンロが置かれ、銀色の鍋が掛けられる。すでに食材は調理してあり、五感を刺激している。これを三得利ビールと共に頂く。やはり冬の夜は鍋に限る。
帰りの地鉄駅で声を掛けてくる人があった。色の黒いサングラスの男で、ちょっと身構えるが、我らが北角城大酒店の運転手寺尾聡氏だった。1,800万人と言われるこの都市、意外と知り合いに会ったりしてしまうから不思議である。携帯が無いと絶対にめぐり逢えない日本の地方都市とは何かが違う。