2005中国(金門大酒店)

 

 いつものように、朝の街を徘徊する。道沿いには朝市が並ぶ。写真を撮ると「写真撮られちゃったよ、はっはっは・・・」とおばちゃんに笑われる。野菜も肉も魚もホールでの販売が基本なのでわかりやすい。この売り方なら危険部位の混入などという問題も無い。食べるかどうかは自分で判断できる。上海蟹も道端で網に包まれて売られているので、一番反骨精神むき出しのヤツを選ぶことができる。それにしても、髪を切る人、ビリヤードをやる人、溶接をする人と、この街の歩道は非常に多目的なスペースである。

 交差点に人だかりができている。車が接触したらしい。車の屋根の上はリングとなり(わざわざ上がるところがエンターティナーである)、物見高い上海人達で観客席は膨れ上がる一方である。両者譲らないファイティングスピリットのぶつかり合いは亀田より面白い。

今日のわんこ
 
ファイト!
歩道…それはコインランドリー
歩道…それはビューティーサロン
歩道…それはプールバー
ペプシのカップには「突破渇望」と書いてある
スポトコーヒー?なにかが微妙に違う
表紙に目あり
 
※注.食べられません
 
あられもない姿に
レジ袋削減にご協力を
 
まっすぐ未来を見据えるつぶらな瞳が印象的な彼ら。だがここは食品市場。
それ、どうやって使うのだろう
喰えないから仕方なく飼われている気がする。ここは食品市場。
刀は置いて、戦士の休息。
 
 
中国、そこは喰うか喰われるかの仁義無き世界。
 
最大積載量 「積めるだけ」

 夜は大鍋。いや犬鍋。近所の小さな食堂の前にベニヤで看板が出ていたので、入ってみる。しばらくすると、やはり携帯コンロと調理済みの鍋が出てくる。上海はこのやり方が多いらしい。さっき写真に撮った痩せた犬が頭をよぎるが、食欲には勝てずに完食。

 襄陽服飾市場へ行ってみる。屋台に近い店が所狭しと並び、人と商品がひしめき合っている。贋ブランド品も多く売られているので、外人も多く、盛んに物陰から「ロレクス」「グチ」という声が掛かる。それがうれしくもあり、ちょっとうるさくもあるので、ちょっと実験をしてみる。眉間にしわを寄せ、巨人が負けた時のおとっつあんのような不機嫌モードでうろうろしてみる。すると、見事に声が掛からないのである。やはり観光の浮ついた気分は随分と顔に表れてしまうようであり、それを彼らプロは見逃さないようなのである。

 特に買うものは無かったが、靴がくたびれているのが気になっていた。溝がすり減り、よくすべるようになっていた。靴を売る店を覗いてみる。デザインのいいブーツがあったので、試しに値段を聞いてみる。300元だと言う。「高い!」帰ろうとすると、袖を引っ張り、「こっちなら安い、240元でいい。」「100元なら買う」「馬鹿言っちゃいけない。ここにティンバーランドって書いてあるだろう」「いらん。帰る。」上着の裾を引っ張り、「200元でいい。もってけ泥棒!」「120元でいいだろう」「あほか。そんな値段で、買えるわけが無いだろう。お前のそのボロイ靴を見てみろ。こっちの方がずっといい。」なかなか痛いところを突いてくる。結局3回目に帰ろうとしたのをパンツのゴムを引っ張って呼び戻され、150元で交渉が成立した。200元を渡すと「なんだよ、あるんじゃねぇかよ・・・。」と苦笑いしながら、お釣りをくれた。その靴は、わざわざ海外ブランドの名前を付けなくても十分に売れる靴のような気がした。確かに、靴底が若干薄く、頼りない感じはあるが、これは技術力というよりも、コストの問題だろう。むしろ、さすが上海シューズで、得体の知れない汚物が落ちている上海の裏路地でも全く滑らず威力を発揮し、富山の雪にも強い。この旅の後しばらくして、贋ブランド品に対する海外からの圧力をかわすために、この市場は一夜にして消失した。しかし、そうまでしなくても品質が向上していけば、贋ブランドはいらなくなるのではないかと思うのだが。さて、しばらくは古い靴を抱えて歩いていたがやはり面倒になってきて、これまで数々の旅を共にしてきた靴を、外灘のごみ箱へ寄贈した。

 夜になると外灘は幻想的にライトアップされる・・・はずだが、今日もなんか暗いままである。しかし、しばらく散歩してふと見ると、見事なライトアップの外灘に変わっている。暗くなったらビルごとに電気を点けているわけではなく、時間になると同時にライトアップされるシステムらしい。そして、また時間になると情け容赦なく消されてしまう。

 夕食に念願の上海蟹を食す。丸ごと出てくるので食べ方がわからない。仕方なく、素手で日本の蟹の要領で解体していく。もちろん無口で。足も食べられるが、細身であまり身は多くないので、濃厚な味噌をメインに食べる蟹である。もちろん無口で。

活気溢れる服飾市場。この半年後忽然と姿を消す。
フライドチキン屋ではない
 
 
 
 

 次の日は水郷古鎮朱家角へ行くことにする。上海体育館からバスが出ているとのことだが、その体育館が巨大すぎて、途方に暮れる。体育館と言われるとどうしても町民体育館を想像してしまうので、縮尺が狂い地図を読み間違えてしまうのだ。なんとか、バスターミナルにたどり着き、狭いながらも観光バスと呼んで差し支えないようなバスで1時間程走ると朱家角へ到着す。

上海はこれの為に行くようなものだ
 
 
 
 
 
歩道…それは勉強部屋
歩道…それは猫の通り道でもある
いつもの部屋の5日分

 この水郷は上海から近いし、割と地味なのでお勧めかもしれない。最終バスの時間が迫っていて、あまりゆっくりできなかったが、もう少しゆるい気持ちで散策したいものである。さて、その最終バスであるが、乗り込もうとすると追い出された。どうやら満席ということらしい。最終バスに乗車拒否って・・・。まぁ、ここは中国。これくらいの事で驚いてはいけない。上に政策があれば、下に対策のある国である。観光バスが無ければ、路線バスがあるさ。と、ここで今日の宿がある人民広場行きのバスが、すぐ見つかってしまうのも中国ならではである。しかし、人民広場は例によって巨大な上、バスは広場より随分遠い所に到着した。で、結局宿まではタクシーを使う羽目に。このあたりも中国ならでは。

 しかし、運ちゃんに宿の名前を告げるだけで行けるというのは便利である。そう、今夜は最終日ということで、上海オールドホテルの一つ、金門大酒店を予約してあるのである。部屋に入ると、さすがにいつもの大酒店とは格の違いを感じる。風呂のお湯が透明だし、NHKが入るし、インターネットはできるし。元を取るために使いまくり、写真を撮りまくり、踊りまくりたいところだが、今日は早々に就寝しなければならない。上海発の小松便は朝が早いのである。ところが、翌朝は見事に寝坊した。リニアがなかったら間に合わなかったかもしれない。しかも、値段で諦めた富山便は雪の為欠航。よくまあ無事に帰ってきたものだと思う。