2005中国(万恒酒店)

 

 上海行きの飛行機に乗ったとたん一気に気が緩んだらしく、仕事や除雪の疲れが一気に噴出してきたらしい。浦東空港のベンチにぐったりとへたり込む。しかし、ここに住むわけにもいかないので、とにかく街へ行かねばならない。幸い、世界最速の特急列車が街へと連れて行ってくれる。

 混んでて待たされるかと思っていたが、意外と閑散としている。物珍しさで乗る時期は過ぎたのだろう。車体も頭も宙に浮いたまま、7分半は一瞬で過ぎた。

 龍陽路で地下鉄に乗り換える。輪渡で黄浦江を渡って、徒歩で賓館まで行く予定でいたが、体調が思わしくないので、地下鉄で河を渡り、タクシーで賓館へ行くことにした。しかし、これがなかなかつかまらない。歩道の端に立ち、車の来る方向を見やると、前にも、そのまた前にも、タクシーに手を振る人の姿が。そして彼らでさえ、車を捕まえられずに他の場所に移動し、また別の人がやってくる、そんな風景が繰り返されている。走っている車の半分以上がタクシーのような上海の街であるが、それのことごとくが、提灯を消して走っている。街は生誕節(クリスマス)にうかれていて、みんな街に繰り出しているらしい。

 
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 上海人を怨みはじめた頃、奇跡的に車が捕まる。向かうホテルは万恒酒店。日本語で読みにくいこのホテルは、日本から天下の楽天を使って予約したホテルであるが、もちろん「我想去万恒酒店!」と運転手に告げて行けるなどという甘い考えは持っていない。上海地図に印を付け、「我想去這里!!!」と叫ぶと、運転手はしばらく地図を眺めた後頼もしく頷き、上海のネオンが激しく流れ出した。

 運転手は素晴らしい(凄まじい)ドライビングテクニックで車をピンそばへ寄せた。しかし彼は空を仰いでこう言った。「没有!」こっちも地図を見ながら来たので、正確に到着していることは分かるのだが、確かにホテルはない。どうしようもないので、とりあえず礼を言って車を降りる。近くの商店で道を聞くと、それはあっちだとタクシーで降りたあたりを指す。しばらく歩くが見つからず、道を聞くとあっちだと、それはさっきタクシーを降りた・・・そこに掛かる看板を読むと「万口店」とまたしても日本語で読みにくい事が書いてある・・・。これのこと?!とりあえず入っていくと、カウンターらしきものがあったので聞いてみると、しばらくがさごそとしてから、あーあーあったあった、という風情で、受け付けてくれる。今回は、ホテルも予約してあるし、タクシーも使ってラクチンでホテルまで行けると思っていたのだが、やはり上海は甘くなかった。部屋に入るとそのままベッドへ倒れこんだ。

 
 
 

 次の日、そのままこの酒店に延長手続きをとってもよかったのだが、鎮江などにも行きたいと思っていたので、火車駅近くの宿を確保したかった。インターネットで見て、駅の裏にこぎれいでリーズナブルなホテルが数軒あるはずだった。公共汽車は駅の表口に着いたので、地下道を探して駅の裏に行かなければならないが、見つからない。雨は降る。体調は相変わらず良くない。軒下で少し休むと、すかさず客引きのおばさん登場。しかし、今日はもう面倒なことをする気力がない。早く線路をくぐって目的のホテルへ行きたい。おばさんに「もう泊まる所はある」と告げると、どこだと聞くので、地図を指してここだと言う。すると、「もっと安くていいところがある」とくる。「いくら?」「300元。」「高い。行く。」「まてまて、250元でいい。」結局いつものパターンである。150元で妥結したところで、寺尾聡のような男が運転するワゴン車に拉致られる。

 駅から近いと言った割には、駅が随分遠ざかってゆく。どこに連れ去られるのか。渡されたパンフレットの表紙に写っている素晴らしいホテルは本当にあるのだろうか。いろいろな事を諦めた頃、車は熱烈歓迎の横断幕をくぐった。北角城大酒店。パンフレットの写真を撮った頃からは、随分年月が経ったようだが、日本の古いビジネスホテルといった風情で、ちゃんとレストランもある。通された部屋は、小学校の教室位はありそうで、ベッドは硬いながらもキングサイズ。実は地図を見ると、地鉄の「延長路」駅に近く、意外と交通至便であることも分かった。結局中国の宿探しは、客引きに勝るものは無いようである。

 快客立の珍珠乳茶を飲みながら夕方の道端に佇めば、この街の何もかもがものすごい勢いで流れているのが分かる。落ち葉が渓流の渦に引っかかってくるくる回っているような心地よさ。やがて流れに引き込まれ、市場の中へと流れていく。

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カフェテリアなレストラン
 
 
ここからはオトナの時間

 夜は網口巴(インターネットカフェ)へ。床から青い光が放たれ、日本のものより随分サイバーである。紅い椅子と黒のDELLがずらりと並び、みんなゲームに熱中しているのだろうか。よく分からないなりに、渡されたカードに書いてある番号を入力すると、使えるようになった。しかし、友人にメールを打てば、それでやることはなくなる。仕方なく、どうせ一週間変わらない富山の天気予報を見てみたりしてみる。

 夕食は小口乞で、牛肉面と炒飯。炒飯は日本のものに近いものが来たが、隣のテーブルの高校生が食べているのは全面中国醤油でぎとぎとになったスペシャル炒飯である。おいちゃんに、「彼が食べているのはなんだ?」と訊くと「蛋炒飯だ」と言った。今度来たら必ずあれを頼もう。

 部屋に戻り風呂を入れようとするが、お湯が熱くならない。まぁ、これはよくある事である。クレームを申し上げると、「15分出してみてくれ」と言われる。15分出しっぱなしにするが、やはり水のままである。他人の国へ来て水の無駄遣いをするのも嫌だなぁと思いながら、もう一度クレームを申し上げると、見に来てくれた。結局、蛇口の赤と青の印がどうもこの部屋だけ逆になっているという話だった。中国旅行のコツは、こういう事を笑い飛ばせるかどうかに掛かっている。


旅のつぶやきコラム(9)

ネット予約

 今回の旅では、初めてホテルを予約した(初めてかい!)。しかもインターネット予約だ。楽天や、現地の日本向けサイトで予約ができる。通常価格より少し安くなるようだ。本当に予約されているのか、半信半疑だったが、意外にもちゃんと予約されていた。しかも、値段も合っていた(まぁ当たり前ではあるが)。混んでいる時期や、人気のあるホテルの場合はこれが安心で安いだろう。でも私はやはり客引きのおばちゃん贔屓である。交渉は旅の醍醐味だし、一番都合のいい場所の宿が取れるし、部屋を見てから決められるし。しかも大抵タクシーで連れて行ってくれたりしてラクチンだったりする。何よりも、スケジュールに拘束されないのがいい。いい条件の宿が見つかるまで、徹底的におばちゃんとやりあうのもよし。宿無しで途方に暮れて、犬死するくらい自由だ。まぁ、この国は宿に関してはなんとでもなるのがいいところだ。日本で、この感覚で考えていたら、かなりの確立で犬死である。


 

その先の中国へ