2004年カンボジア(シンガポール)

 

 アンコールワット―――。世界遺産に指定されてから、いろいろなところで写真なんかも見られるようになったが、その隣に必ず不思議な形の木が写っている。背が高く細く、てっぺんには耳掻きの綿毛のようなものが付いている。こいつが両サイドに2本ずつ上がっているので、まるで昔のデパートの大売出しでアドバルーンが上がっているような、ちょっと楽しい気分になってしまう。ああいう形の木は日本では無いので、どうなっているのかが、気になる木なのである。見たことも無い木ですから。

 あれを見に行く―――。相変わらず、旅の理由付けがテキトーである。もちろん周りには、「世界遺産アンコールワットを見学し、社会的見聞を広めるとともに、世界の平和について考える・・・」と説明してあることは、言うまでも無い。

 アンコールワットのある、シェムリアップへは直行便は無く、シンガポールで乗り換えとなる。そこは旅人に酷評されている。物価が高い。何でも罰金が取られる。人が冷たい。マーライオンが小さいetc。行ってみたいではないか。見てみたいではないか。日程の関係で、運良く行きはここで一泊となった。

 

 

 

 

 

 シンガポールは、意外と言ってはなんだけど、結構面白そうな街だった。旅人で文句を言う人は恐らく、この国を近隣のアジアと一緒に考えてしまうからだろう。その周りと違う個性を面白いと感じられるかどうかで、この国の印象は変わってくるだろう。

 空調の効いたチャンギ空港から一歩外へ出ると、熱帯の空気に包まれる。暑く湿度が高いのに、不思議と不快感がまるでない、今まで触ったことの無い空気だった。街を歩くと、実にラクチンで違和感が無い。恐らく、中国系の人が多いことと外人が多いので、人々の好奇の目が無いせいだろう。これは、アジアに慣れた人には物足りなく映るかもしれない。

 クリスマスの後ということもあり、街の飾りつけは派手である。このあたりは、洗練されつつもチャイナの血を感じる。少しくたびれたショッピングセンターに入ってみる。恐らくかつては屋台だったであろう店たちがこのビルの中にずらりと軒を連ねる。食堂では、東南アジアと中国、それにイスラムのエッセンスが少しずつ混ざったような料理を出し、どれも激しくうまい。もっと食べたいし、世界三大がっかり名所と言われるマーライオンも拝んでおきたいところだが、今回はただの乗継であり、先に進まなくてはならない。

 


その先のカンボジアへ